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3話 ゴトーさん御神体になる

「ほう。すると、おめぇさんはアマーシア様を信奉していた一族が残した遺物だと?」


「左様でございます」


「そういった一族がいたとは聞いたことがあるがな……」


 ありのまま、(ワタクシ)のペットがアマーシアです。と伝えるのは容易いですが、

 危機管理上、愚策と言えるでしょう。

 そこで道すがらイエムが語ってくれた、

 『かつて存在した、アマーシア教団』を名乗ることにいたしました。

 イエムには先ほどのことは二人の秘密、と言ってあります。

 万が一真実が明るみに出たとしても、子供の戯言と言われるのがオチでしょう。


「まぁ何にしても、うちの息子が連れてきちまったもんだ。悪いようにはしないさ」


「感謝いたいます」


 親父殿は気さくな方でした。

 聞くところによれば、親父殿は人では無く、『オーガ』と呼ばれる種族だそうです。

 踏み込んだことを聞くのは躊躇われたので、何故この村に住んでいるのかは不明ですが、

 イエムは実子と仰っていました。

 父はオーガ、母は人間だそうです。母親は早くに他界し、男手ひとつで育てているとのこと。


「あいつは、母親を知らないからな、俺みたいな粗暴な男にならなければいいが……」


 そのイエムと言えば、正座をさせられていました。

 どうも、いち早く村に戻った子供たちが話を広めたらしく、

 村中に今回のことは知れ渡っていたようです。


「大丈夫ですよ。純真な良い子に育っています」


「そういってもらえるとありがたい」


 話が一通り済み、親父殿は、村の衆に謝まってくる、とイエムと共に家を出ていきました。


 一人残された私は、家を見回します。

 ふむ、木造平屋建て。鉄釘は使用されているので、鋳造の技術はあるようですね……

 この大きさで、石造りでは無いということは、木材が豊富にある、もしくは質のいい石材の産出地が近くにない、粘土質の地層がこの地方には存在しない、といったところでしょうか……


 文明から言えば動力機関の普及には至っていないようです。

 電力も無く、竈を使用。窓にガラスは無く、簾を使用して気密を取っているようです。

 

「……それにしても、のどかですね」


 窓の外から差し込む陽光が煌めいています。

 体表面にソーラーパネルを展開し、太陽光を浴びることにしました。

 かつての惑星は、塵と雷雲に遮られ、このように遮蔽物無く、太陽光を浴びることなどできませんでした。

 そうして、親父殿とイエムが帰ってくるまで2万年ぶりの日光浴を楽しんでおりました。


   ◇◇◇◇◇



 その日の夜。

 私は無理を言って、外に出してもらいまいた。

 親父殿は訝しげな顔をしていましたが、私が眠る必要が無いことを伝えると、

「じゃあ畑の見張りでもしててくれや」

 と家に戻っていきました。

 そういった、細かいことを気にしないところは非常に助かります。


「そろそろですかね……」


 空は満点の星空が広がっていました。

 その配列は2万年たった現在でも、過去のものと変わり無く、宇宙の雄大さを教えてくれます。


「クゥーン」


 気付くとタチロウが横に座っていました。


「どうしたのですか?」


「クゥウーン」


 タチロウは身を寄せてきます。

 群れと離れ、寂しいのでしょう。


「いいですよ。付き合いましょう。ですから舐めるのは勘弁です」

 タチロウは舌を出したまま、固まります。

 中々主人に似て、いたずら好きのようですね。


 そうして、タチロウをあやしていると、空を一条の星が流れていきました。

 流星のように流れるのでは無く、軌道線上をなぞるように流れる星……


「……箱舟はまだ浮かんでいるようですね」


 我らが、母船(マザーシップ)『ルーニー』。


 2万年もの間宙に浮かんだ箱舟が、一条の煌めきを残し、地平線に消えていきます。

 どうやら確かめなければならないことが、一つ増えてしまったようですね……


 翌朝。

 親父殿は私を連れて村長の家へと向かっておりました。


「悪いな、つい口が滑っちまってよ」


「いえ、重要なことですから、早ければ早いほど良いです」


 今、私は荷車に乗せられています。

 移動方法が無いと言った私に親父殿がこれならと乗せていただきました。


 やがて見えてきたのは、二階建ての家屋。そのあたりにのみ、複数の家が密集して建っています。

 どうやら、村の中心部のようですね。


「おう、早いなデリー」


 家の横にある井戸で水を汲んでいた男性が、こちらに気付いたようです。

 ふむ、やはり普通の人間のようですね。

 その声を聞いて、女衆や子供たちが出てきました。

 聞くところによれば、全て村長さんの身内だそうです。

 ちなみにデリーというのは、親父殿の名前です。

 姓は無いそうで、デリーとイエムの親子、というように呼ばれているようですね。


 私は招かれるままに村長殿のお宅に失礼いたしました。

 

「あなたが、ゴトーさんですか」


「お初にお目にかかります」


 今更ですが、この村の人々は私が言葉を話すことに違和感が無いようですね……

 そういった存在が身近にいるということでしょうか。

 村長殿は初老の男性でした。まだまだ現役と言った風体で、小麦色に焼けた肌が光っています。


「さて、村としては、あなたに逗留していただくことに何の問題も無いのですが……」


 結論から言えば、私は親父殿の家においていただくことになりました。

 私には補給が必要無く、食い扶持が増えるわけではありません。

 しかし、ただそこにいるというわけにもいかないのは確かです。

 そこで……


「教育、ですか?」


「はい、子供たちが家の仕事を手伝う合間にささやかな学校を開きたいと思いまして」


「学校ですか……果たして村の子供にとって必要なのでしょうか」


 村長さんは渋っていました。まぁ村人に生まれ、街に行くことも無いような人々には重要性が分からないかもしれません。


「学は人を助けます。例えば耕作地の作付面積を割出し、本来であったら役人の懐に入る余剰生産分を紙に書きとめることができます。また、蒸留技術によって清潔な水を手に入れることができます。ですが、これらは確かな知識と経験がなければ、浸透していくことは無いでしょう。ですから、そのお手伝いをさせていただきたいのです」


「……なるほど、そこまで仰られるならば、ところで、それは、我々も聞いてもよいものですか?」


「ええ、勿論。老若男女問わず歓迎いたします」


 次の日から、私の学校が始まりました。

 学校といっても、小さな机と椅子をいくつか用意してもらっただけのものです。

 出席者は村長さんとその身内、それとイエム。

 イエムは嫌がっていましたが、誰かが私をここまで連れてきてくれないと移動もままなりません。

 そこでイエムには強制的に参加してもらいました。

 

 さて、早速大きな問題が発生いたしました。手足が無いため、筆記することができないのです。

 そこで私は大きな木版を立てていただき、そこに投影する形で授業を始めました。

 どうやら、文字に関しては、当初の予定通り統一規格が使われており、不自由無く伝えることができます。まずは文字の概念から教え、簡単な数学、そしてサイエンスをお教えするつもりです。


「先生、質問!」


 そう言ったのはイエムでした。予想に反して中々いい食いつきを見せています。


「その、足し算てのは、何に役立つの?」


「いい質問です、イエム君」


 私は水桶を投影いたします。


「いいですか、例えば君が今日中に井戸から桶30杯分の水を汲むように言われたとします」


「うへぇ、そんなの朝のうちじゃ終わらないよ……」


「そうですね、ですから昼も同じように水を汲まなければなりません」


「うわ、面倒くさい」


「ここで問題になるのが朝に何杯、昼に何杯汲むかということです」


「朝出来るだけ汲んで、昼は残りじゃダメなの?」


「確かにそれでも成り立ちますが、物事には段取りと呼ばれるものがあります」


「段取り? 親父がよく言ってるやつだ」


「はい、一日中水汲みばかりしているわけにはいかないでしょう。つまり朝にこれだけ汲んで、これだけの時間がかかったので、昼はこの時間で終わる。そういった『計算』が必要になってくるのです」


「うーん、なんとなく分かったような、分からないような……ところで先生、時間て何?」


「そうですね、これも先に教えましょうか……」


 かつて、計ったこの惑星の自転周期から、正確な時計を作ることもできます。

 さほど、母星と変わらないのでそのまま24時間周期を使っています。


 始めて三日ほどは代わり映えのしないメンバーでしたが、ちらほらと子供たちが増えてきました。

 何せ村一番の悪ガキが授業を受けているのです。

 興味を引かれるのも無理はないでしょう。

 私には仕事がありませんので時間を選ばず教えることができます。

 やがて、噂を聞きつけた大人たちが、仕事終わりに親父殿の家に押しかけてくるようになりました。

 これが連日続くのは勘弁と、村長にお願いして私の家を作っていただきました。


「ふむ、快適ですね」


 家と言っても、屋根のある小さな小屋です。

 いえ、どちらかといえば、祠でしょうか。

 授業を受けた大人たちが何故かお供え物を置いていくのです。


「完全に村の守り神扱いですね……」

 そのうち、赤い前掛けをかけられるのでしょうか……



  ◇◇◇◇◇




 2月が立ちました。

 ここまでの過程で重要なことがいくつか判明いたしました。

 村長さんによればこの国の名は、アルベルト。典型的な王権国家のようですね。

 そして、この世界にはステータスが存在するということ。


「はて? ステータス?」


「ご存じありませんか?」


 そう言うと、村長さんは一枚の銅板を持ってきました。


「あまり、他人に見せるものではないのですが、ゴトー様にでしたら」


 差し出された銅板にはいくつかの文字列が記載されています。

-----------------------------------


 種族:人間      名称:カルク


 称号:―         位:村長



 筋力  D-E

 

 防御力   D-E


 俊敏度 C-G


 知識  E-G


 努力値  D


 運 23


 スキル一覧

 村長Lv2 算術LV1 読解LV1 農耕Lv3

 火魔法Lv1 風魔法Lv1

 身体強化Lv1

-----------------------------------


「これは?」


「ステータスプレート、と呼ばれるものです」


「大体の意味は分かるのですが、このD-Eというのは?」


「その時の体調によって左右される値のことです」


「なるほど、これは誰か目利きできるものがこの板を発行しているのですか?」


「いえ、ある魔道具に手を当てると、数値が出てきまして、それを書き写してもらっているだけです」


 なんとも不思議なものです。数値が変わったと思ったら街の神殿に行って発行してもらうのだそうです。


「何を持って定義されているのか、気になりますね……」


「なんでも神様が魂を計っているのだそうですよ」


「神ですか……ところでこの努力値というのは?」


「それはですね、人には潜在能力が有り、努力によってそれを引き出すと言われていまして、その潜在能力をどこまで引き出したかの値です。お恥ずかしいことに私はD止まりなのですが……」


「なるほど……」


 なんでも、この値が低い人はあまり尊敬されることは無いとか……

 子供は10の歳になると初めてこのプレートを貰うのだとか。


「イエムも持っているのですか?」


「うん。僕は今年もらったんだ」


 横で話を聞いていたイエムに聞くと、懐から銅板を取り出しました。


------------------------------------

 種族:鬼人     名称:イエム


 称号:-       位:鬼の子



 筋力  D-E

 

 防御力 D-E


 俊敏度 B-C


 知識  C-F


 努力値 F


 運 151


 スキル一覧

 

 農耕Lv1 調教Lv3 狩猟Lv1

 火魔法Lv2 氷魔法Lv3 風魔法Lv2

 鬼人化 Lv1 身体強化Lv2

 魔鬼Lv1

-----------------------------------


「これは……」


「えへへー凄いでしょう」


「イエムは村の有望株ですよ。4行目のスキルはユニーク欄で先天的に獲得できるものです」


 どうやらイエムはチートだったようです。

 



 


 



※イエムのチート発覚、そして忘れ去られるタチロウの運命やいかに!?

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