第1章 第1話 マイバラードの始まり
後ろに流れてゆく景色に流れる銀色の髪。
私はそれを手ではらいながら...
「いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!?」
全速力で逃げていく...
回想 ~数十分前~
私は、近くの図書館にお菓子作り用の本を借りに行った。
その帰り道、何気なく立ち寄った公園の隅の方で光る『生き物』を見つけた。
しかも、その光る生き物はふわふわと浮きながら、公園の中心にある、大きな桜の木の下へと吸い寄せられるように飛んでいくのだ。
...いやいや、ありえないわよね。
きっと疲れてるんだわ、生き物が光って飛ぶなんて、ねぇ。
苦笑しながら離れようとするも、足が動かない。
..........ん?
必死に動かすも、動く様子がない。
は⁉どうなってるのよ⁉
しかも、とりつかれたように桜の木の下へと移動していく。
な、何?なんで⁉
あ、足が...勝手に、動いていく‼
「い、嫌‼どうして⁉」
反対の方向に進もうとしても、足が自分のものではないかのように意思に従わない。
...仕方ないわね...一度行ってみるしかなさだし...
足が進む方向に、嫌々ながらも従い行ってみると...
木の幹に人一人通れるぐらいの穴が、ぽっかりと空いていた。
「あ、穴?これに入れってことかしら...足もやっぱり動かないし...入ってみるしかなさそうね...」
ため息をつきながら、なかに入ってみると...
「わぁ...」
そこは小さな部屋になっていた。
一人用の小さな木のテーブルとイス。
小さな木のシングルベットに、小さいながらも使い勝手のよさそうなキッチン。
それと隅の方に階段がついていた。
ここは、何だろう。誰か住んでいるのかな?
そんな事を考えていると
ギギギギギ...
後ろの方から重い音が響いてきた。
それは、通ってきた穴が塞がっていく音だった。
「っ...閉じ込められる⁉」
穴を潜ろうとするが、すでに手遅れ。
穴は無情にも塞がってしまった。
後には木の壁が立ちふさがるばかりで、何をしても、元の穴が開く気配はない。
私は、焦り·不安ばかりが募ってゆく心を押し殺して、必死に考えを巡らす。
「落ち着け...落ち着いて考えるのよ。
通ってきた所はもうダメね、これじゃあ。
他の...他の出入口を探さないと...」
自分自身に言い聞かせるように言うと、私は立ち上がって部屋を調べ始めた。
五分後...
「一階は特に目立ったものはなさそうね。
外に出るための扉も暗くて見つからないし...
二階に行ってみようかしら?」
そう思った私は、さっそく二階に上がるための階段を上った。
やがて見えてきた通路を通ると、三つのドアを見つけた。
それぞれ、「バスルーム」「書斎」「物置」とプレートが掛かっていた。
その奥には階段があり、さらに上へと進めるようだった。
まだ上へいけるのね...
少し面倒に思いつつも、さらに階段を上る。
少し上ったところで、微かに風を感じた。
さらに上ると光も見えてきた。
もしかしたら、外に出られる...‼
淡い期待を抱きつつ、階段を上りきるとドアがあった。
ドアを開けてみると...
上から桜の花びらが舞い落ちてきた。
そこは桜の木の一番上だった。
天井は桜の花と葉で自然にできており、床は太く大きな桜の木の枝でできていた。
いままで見てきた部屋の中で一番広く、中央にテーブルとイスが置いてある。
幾重にもおり重なった枝の隙間からは外がみえて、窓のようになっている。
ここで紅茶を飲みながら三時のおやつを食べたら、とても美味しいだろうな~。
そんなことを呑気に考えながら外を見ると...
この辺り一帯は森のようだった。
私がいる桜の木は森の中でも大きく、遠くの景色までよく見える。
まっすぐ西の方を見ると、町があった。
奥のほうには大きなお城も見えるが、安定のスルースキルを使い何も見えていなかったかのように東の方を見る。
東には海が見えた。
微かに潮の香りもする。
とりあえず、ここを出たら町に行ってみよう。
そんな事を思いつつ、再び一階へ。
すると、さっきは暗くて見えなかった扉が見えた。
ドアノブにはちいさな銀色のカギがぶらさがっていた。
おそらくここのカギだろうと予想しながら、外に出るために扉を開ける。
ガチャリ
扉を閉めて戸締まりをしてから前に向き直ると、左右に道があり右へ行くと町·左に行くと海と看板がたっている。
まるで、『私が迷わないように』という風に。
不思議に思いながら、右へと進む。
歩き始めた時...
「あれ、町に行くんですか?アリス」
まだ変声期に差し掛かっていない少年の声が聞こえた。
少し驚きながら顔をあげると...
白い兎耳の生えている男の子が立っていた。
変態コスプレ男が現れた!どうする?
①スルーする
②話し掛ける
③抱きつく
...抱きつくって何⁉それじゃあ私が変態じゃない‼
うん、スルーしよう。変態コスプレ男はスルーだ。
私は足を反対の方向に向ける。
そしてそのまま歩き始めた。
「アリス?どこに行くんですかー?アリスー?」
後ろから追ってくるその声にイラつきながら足を速める。
「アリス!アリスってば。ねぇアリs「私は、アリスじゃなくてジゼル‼」
叫んだ瞬間、はっと我にかえる。
あぁぁぁ、答えちゃった⁉
あんな変態コスプレ男なんかに!
慌てる私を余所に男の子はにっこり笑って言った。
「よかった~。言葉が通じてないのかと思って焦りました~。ところで、そっちは行き止まりですよ?」
逃げようと思って脇道に入ったのが裏目にでたか。
思わず舌打ちしそうになるのを寸でのところで抑え、『仕方なく』私は向き合って、『仕方なく』会話する。
「はぁ...私はジゼル。あなたは?」
「嫌そうですね...(苦笑)僕はセロンです。役は白兎。」
「当たり前よ。いきなり現れた上にストーカーまがいの事をされたら、誰だって嫌だわ。で、白兎とか役って何?美味しいもの?」
「い、いえ...美味しくはないです。」
私が冗談で言った言葉に男の子...セロンは青ざめる。
「ま、それはおいといて...」
「結局おいておくなら、最初から言わないでください!」
「うるさいわね、白兎。いちいち気にしてるとハゲるわよ」
「何ですか、ハゲるって⁉やめt「うるさい」...はい」
拗ねるセロンを余所に、私は次々と質問をする。
「あなたがいってた役って何?」
「そうですね...(←立ち直った)役というものは、それぞれの役を請け負った『役持ち』たちがこの国の重要人物である、ということを示している、いわば証のようなものです。そして、ジゼル。あなたは、アリスという役を請け負った役持ちです。」
「私が...役持ち...?それって、私がこの世界に来たこととなにか関係があるの?」
「はい。アリスは、この国のあらゆるものの『誕生』を司ります。」
「誕生...?」
「はい。アリスであるあなたが願えば、どんなものでも「形」を持ちながら生まれてきます。」
私が、願えば...?って、それって、いわゆるチートだよね?
アリスがヤバい人だったら、危なくない?
いいのか、それで...
そう思ったが、つっこむのはやめておいた。
それよりも気になることがあったからだ。
「ねぇ、私は...帰れるの?」
そう聞くと、セロンはゆっくり首を横にふった。
「...あなたがこちらの世界に来たときは、この国の誕生祭がとりおこなわれていて、ちょうど太陽に月が重なる時だったんです。その時願い事が一つだけ叶います。それ以外方法がないんですが...次にその現象がおこるのは一万年後で...」
当然、その時に私は生きていない。
生きているはずがない。
ショックだった。自分でもわかるほど顔の血の気が失せていくのが分かったし、唇は震えていた。
泣きたかったが、泣いてもどうしようもないのは分かっていたから必死になって言葉を紡いだ。
「な、なら私、生活に必要なもの買わなくちゃ...」
「あの...私も精一杯手助けします。なので...無理はしないでくださいね?」
不思議と、その言葉が心にストンと響いて。
強張っていた顔がほぐれていった。
「...ありがとう。」
その時、私はこの世界に来て初めて、心から笑えた。
第一話終わりです!
実は、今日が誕生日なのですが、誕生日に小説投稿ww
悲しいw
でも、ちゃんと祝ってもらいました!家族に。
さて、そんな私の初めての小説、楽しんで頂けましたでしょうか?
文章のレベルは、初心者なので多目に見てください...
次も、見ていただけると幸いです!あとあと、感想も...