その1
ある日、俺は隣の街を友達とぶらついていた。
「なぁ、ヒカルどこ行く?」
友達のひとり佐々木 昂が聞いてくる。
「いいよ、昂が決めたところで。」
「お前もかよ。」
昂はこの五人グループのリーダー格でどうやら他の三人にも同じ答えを返されたらしい。
「えー、じゃあもうカラオケでよくない?」
そう答えたのは小田 なつみ。これが100人中99人が振り返る程の美人…………らしい。
ちなみに俺は振り返らないひとりに入る。
……興味無いしね。
「あ、いいね!いこいこ!」
そう騒ぎ出したのは小柄なかわいい女の子………と言ったら禁句の、伊藤 達也。正真正銘の男だ。修学旅行の時に確認した。
「………。ヒカルがいくなら。」
最後のひとり一条 透はいつもボーッとしていてあまり喋らない。カツアゲされていたのを救ってからなんかなつかれてる。
て言うか、いつも思うけどこのグループ美形多く無いか?昂も普通にかっこいいし透も前髪上げろといってから結構かっこいいし。
他の二人も存在感半端ないし。
ちなみに、俺はいたって普通だ。
ほらまた通行人が振り返ってる。
「お前ら本当モテるよな。」
ボソッとつぶやくと。
「「「「は?なにいってんの!?(学校1のモテ男が)」」」」
珍しく透まではもっている。みんな自覚ないのかな。
その時目の前を女の子が走って行った。
「おかーさん!!」
道の反対側にいたお母さんらしき女性はその少女に気付き悲鳴を上げた。
少女は道路に飛び出しその少女に迫るトラック。
驚いたことに一番最初に反応したのは透だった。
それを見て自分の体も勝手に動いた。
透が少女を抱き上げ走ろうとする。
ダメだ間に合わない。俺は道路に飛び出し二人を勢い良く突き飛ばした。
直後、横からの強い力に吹き飛ばされ痛みを感じる間も無く俺、高野 光は死んだ。
☆☆☆☆☆☆☆
目が覚めると真っ白な部屋の中にいた。身体を起こそうとしたが何故か動けない。
「やあやあ、君が高野 "ヒカル"君かい?」
何処からか声が聞こえてきた。って言うかなんで名前知ってるんだ?いや、間違ってるんだけどな。光って書いてコウって読むんだよ。
「え!コウだったのごめんね!」
てか、だれだよ。ここ何処だよ?俺、死んだんじゃないのかよ?
「うん。死んだよ。だからこれから転生するの。でこれから行く世界で頼みたいことがあるんだけど、それは、向こうに着いてからで。『ステータス』って念じればスマホ的なものが出てくるからそのメールで確認してね。んじゃよろしく!」
そして俺はその部屋から消えた。
☆☆☆☆☆☆☆
「………………。」
今何が起こったんだ。
今俺は何処か深い森の中に仰向けになって倒れてた。
何故か俺の真上だけぽっかりと穴が空いて空が見える。
いや、そんなことよりも。これってあれだよな。何か使命を任されて転生させられたんだよな。たぶん。
あの声に名乗ってすらもらえなかったぞ。
しばらく、いきなりのことに固まっているとピコンと頭の中で何かがなる音がした。
ステータス?
何処からともなく長方形の見覚えのあるものが出てきた。
同じく見覚えのあるロック画面。
まるっきりスマホじゃん。
ロックを外そうと手を伸ばした。
………あれ?手はどこだ?
ここで初めて身体を起こした……いや、起こそうとした。
とりあえず自分がどういう状態なのか目線だけ向ける。
まず目に入ったのはモッフモフの白くて長い毛。ウサギのように長い足。細くて長い尻尾。先っぽには筆の形に毛が生えている。
人間じゃ無いし。
それからまた10分ほど固まってから、尻尾を使ってなんとか起き上がった。
今片足を上げたらこけそうなので尻尾でロック画面をスライドする。
ほんの少しのアプリが入ったホーム画面が現れる。
ステータス、メール、電話、ステータスカメラの四つがあった。
その中のメールの左上に赤いバッチがあって2と表示している。
メールを押すと『神様』と書かれたものと『スキル』と書かれたものがあった。
とりあえず神様を押してみる。
『いやー。ごめんね!せっかちすぎて名乗るのを忘れていたよ。僕は神様!よろしく!で、君に頼みたい事が出来たらその都度メールするから。いまは、異世界ライフを楽しんでね!………あと、死なないように頑張って!それじゃ!』
今度はスキルを押してみる。
『スキル、固化を手に入れました。固化は何かを固くすることができます。』
スキル固化?なんで………ああ、固まってたからか。
ホームに戻って今度はステータスを押してみる。
名前:ヒカル
種族:パフィン
レベル:1
HP:10
MP:12
スピード:3
力:1
防御:1
器用:0
運:0
知識:125
スキル
『発光』『固化』
なんかすごい弱い気がするのは気のせいかな。
器用と運なんて0だし。