出席簿
高校の先生をしている俺は、常に生徒の出席簿を持ち歩いている。
ここ出席簿は、教師からみて極めて重要なものである。
なにせ、個人データーそのもこがここに集約されているのだ。
これをなくす事は、なんらかの処分があっても、文句は言えないというレベルのものである。
しかし、その出席簿がどこかへ行ってしまった。
問題なのは、俺が受け持っているところ以外のクラスの出席簿も、みんななくなったことだ。
どこに行ったのか、捜索が始まった。
まずは、それぞれの教室から探すことにした。
教卓、黒板、日直の机、他にも思い当るところは片っ端からみていったが、どこにもなかった。
他の先生のクラスへ行っても、教室のどこにも見当たらないという。
いよいよ焦り出した俺たちは、職員室へ戻り、机の周りや中を探し出す。
その途中、俺はなぜか机の一番横長の引き出しの中から、出席簿が出てきた。
ホッとしているのもつかの間、一人だけ、見つからなかった。
どうしようかと話し合っていると、学年主任が俺たちの様子がおかしいと気づいたようで、少し近寄って話しかけてきた。
俺が今の状況を説明すると、笑いながら教えてくれた。
どうやら、ここの校長は、最初にこうやって簡単ないたずらをして、それぞれの結束を高めさせるそうだ。
そういって、笑って主任は行ってしまった。
俺たちは、思いつくところを次々と調べた。
すると、なぜか給湯室のガスの元栓のところに置かれていた。
全部見つかってよかったと思っているところに、校長が通った。
俺たちは、校長、隠したかどうかを聞くと、はぐらかすばかりだった。
そして、それから、出席簿をなくしたことも、忘れたこともない。