リンネとラウラ
夜も更け、ラウラに今日はもう寝るように言われたリンネはあてがわれたソファーで眠りについた。
久々に暖かい寝床で、直ぐに眠りにつくリンネ。
そんなリンネにラウラは毛布をかけるとリンネの頭を優しく撫で、側を離れた。
†ー†ー†ー†
次の日、リンネはラウラに起こされて目を覚ます。
久しく呼ばれなかった自分の名前をリンネは妙に懐かしく感じた。
「おはようございます、ラウラさん」
「ん、おはよう。 おいで、朝食にしよう」
促されるまま食卓に導かれたリンネは、ラウラが椅子に座るのを待って、その対面に座った。
用意されていたのはこの森で取れた物だろうか、キノコと木の実のスープと、スライスされたパンだった。
「頂きます」
そう言って、木で作られたスプーンを握り、リンネはスープを口に運ぶ。
久々の温かい食事は実に美味に感じられた。
食事の間、二人の間に会話はなかった、美味しそうにスープを啜るリンネと、それを微笑んで見詰めるラウラ。
リンネの様子に、出した食事が口に合うかなど聞く必要など無いとラウラは判断したのだろう。
そして双方が食事を終えたところでラウラが本題に入ろうと口を開いた。
「リンネ君、これからどうするんだい?」
ラウラの言葉に、リンネは一瞬目を伏せたが、直ぐにラウラを見直すと質問に応えるべく口を開く。
「故郷からここまで歩いてる時に色々考えてました、他所の街で働きながら暮らそうかとか、いっそのこと死んでしまおうか、とか……」
「それはいけないねえ、死んでしまって向こうでご両親に会えても、きっと二人は喜んでなんてくれないだろうさね」
ラウラの言葉にリンネは分かっていますと言うように深く頷いた。
「僕もそう思いました、今は死のうとは思いません」
「じゃあどうするね?」
「昔、お父さんは行商人として各地を渡り歩いたと聞いたことがあります、その足跡を辿ってみようと思います」
ラウラはリンネに笑顔を向けた、会った当初の暗い顔が言葉を重ねる度に少しずつ明るく晴れていく。
この子は本当は明るい子で優しい。
それが交わす言葉越しに伝わってきていた。
しかしラウラは危惧していた、歳の割には確かにしっかりしているが、リンネはまだ幼い。
この子の父が行商人だったというなら、旅は長くなる、この度のように森に迷いこむ事もあるだろう。
そうなればこの子は獣のエサになるだけだ。
ここで会ったのは何かの縁かもしれない。
そう思ったからか、ラウラはある提案をリンネに持ち掛けた。
「君はまだ幼い、道中危険に晒される事もあるだろう、どうだい? しばらく、いや、時間は掛かるかもしれないけど、私のもとで修行してみないかい?」