別れと出会いⅤ
あれからどれくらい歩いただろうか。
安定した気候で旅をするには持ってこいのこの季節、花は咲き乱れ、野鳥の鳴き声も遠くから聞こえてくる。
夜も暖かくなってきた、野宿するにも幸いな季節な訳だ。
しかしそんな時、リンネはある問題に気付いた。
食料が底をついたのだ。
水は近くを流れる川の水を汲む事ができたが、食料は町に行くか、森に入って探すしかない。
リンネが選んだのは後者だった。
一番近い町は今のまま歩けば2日は掛かる。
しかし、森ならすぐそこだ、小さくだが深い緑色が山際に広がっているのが見えている。
ただ、深い森だ、迷えば野垂れ死にするかもしれないし、獣に襲われるかもしれない。
「死んだって悲しむ人はいないよね」
少年は、あるいは己の死を望んでいたのかもしれない。
次の町との位置取りが正反対の森に少年は歩を進めた。
今まで歩いていた草原から森に向かう。
地図とコンパスを鞄にしまい、リンネは代わりに持ち出して来ていたダガーを取り出し、それをケースごとズボンに括りつける。
そしてまたしばらく歩くのだ。
†ー†ー†ー†
太陽が傾き、沈み始める頃、リンネはようやく森に到着した。
「食べれる木の実があるといいな」
森は背の高い木々に覆われ、薄暗かった。
奥へと進んでいき、リンネは木の実や木の根元に生えるキノコを探した。
そこでリンネは自らの失態に気付いた。
「この森は……」
リンネの居る森の木が全て実のならない針葉樹が乱立する森なのだ。
辺りはもう薄暗い、動くのは危険だ。
遠くから遠吠えが聞こえた、間違いなく狼だろう。
リンネは空腹を我慢し、今日の寝床を探すことにした。
今思えばこの時草原まで引き返していれば良かったのかもしれない。
森を夜の闇が覆っていく。
リンネは大きな木を背にして腰を下ろした。
枯れ葉と落ちていた木の枝を集め、火打ち石を叩き火を起こした。
暖を取り、獣を避けるためだ。
「おなか、空いたな」
火の暖かさでウトウトしはじめた頃、またもや狼の遠吠えが聞こえた、先程より近づいているように感じられる。
そんな時だ"カサカサ"と、複数の何かが枯れ葉を踏むような音がリンネの耳に入った。




