お見舞いに行こうⅡ
「よし、とりあえず完成ですね」
描いていたエリスの絵を完成させ、色は塗っていないが、満足げに頷くとリンネはキャンバスを回転させ、エリスに見せた。
「わあ、リンネ君絵を描くの上手だね。
画家さんみたい。」
見せてもらった似顔絵を見てエリスの頬が緩む。
嬉しさと、モデルをした恥ずかしさが混在していて自然と笑みがこぼれた訳だ。
「お見舞いに持って行く物が思い浮かばなかったんで、迷惑じゃなければ貰ってやって下さい」
「迷惑なんてとんでもないです、ありがとうございます、嬉しい。
でも、あの、前から聞きたかったんですけど、なんで私にここまでしてくださるんですか?」
エリスとリンネは赤の他人、依頼を受けて助けに来てくれたのは分かる。
しかし、本来ならそれで終了だ、後の事は基本的にギルドが救出された者が社会復帰出来るようになるまで面倒を見る。
実際、あの泣き叫んだ夜の次の朝、病室で目覚めたエリスが最初に医者からされたのがその話しだった。
しかし、リンネとリーゼロッテ、ルティアはほぼ毎日病室を訪れてくれていた。
赤の他人である自分に、まるで家族にそうするかのように。
「そうですねえ、何故かと聞かれれば同情なんでしょうねえ。
僕も10歳の時両親が事故で死んで、一人になりましたから、エリスさんの気持ちは痛いほど分かるんですよ」
「リンネ君もご両親が……」
「その後、ろくに支度もせずに一人で街を出ましてね、森で迷って狼に追われて。
死の間際に師匠に助けられたんですよ」
アレから5年経つのか、とリンネは病室の窓から見える空を見上げる。
澄み渡る青空、今日は特によく晴れて、空がいつもより高く見えた。
「まあ、旅の件は無理にとは言いませんから。
でもそうですね、出会ったのは何かの縁でしょうし、せめて退院するまではお節介をやかせて下さい」
その後しばらく、森での生活の昔話をしていたリンネ達。
日が傾いてきたこともあって、リンネ達は病室を後にし、宿泊している宿へと帰るために帰路についた。
酒場や食事処から肉や魚の焼ける匂いが漂ってきて、食欲をそそる。
まだまだ人通りの多い市場の通り。
リンネを先頭に、ルティアとリーゼロッテが並んで進む。
「マスター、随分エリスさんに御執心ですね……まさか惚れましたか?」
「なん……だと、リンネ本当!? エリスちゃんの事好きに――」
「うーん、そりゃあ嫌いじゃないよ? 綺麗な顔だし、髪もキラキラしてて綺麗だと思うし、話し方から伝わってくる人柄も可愛らしいし、まあ確かに好きではあるよね。
二人と一緒で」
「……マスターって天然タラシですよね」
「リンネ! そういうのは良くない!!」
「えぇー、なんで僕怒られてるの?」