表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と狼と魔法使い  作者: リズ
第三章
40/47

砦の中へ

「凄まじい、と言うのはああいうのを指すのかしらね」


リンネの戦いを見ていたリーゼロッテが、砦へ向かう城壁の上、独り言のようにつぶやいた。

踵を返し、歩き始めると、剣に滴る血を剣を振ることによって払い、鞘に納める。


全身血まみれではあったが、怪我をしたわけではない。

その全てが、切り伏せた盗賊たちの返り血だ。


「息切れせずこちらを制圧したリゼさんも大概では?」


そう言ったのは、リーゼロッテに合流したルティアだ。


「それはお互い様でしょ」


肩をすくめ、苦笑するリーゼロッテ。

返り血で自慢の銀髪まで一部赤黒く染まってしまったリーゼロッテと違い、徒手のみで盗賊達の頭蓋を砕き、内臓を破裂させ、体を穿ってみせたルティアは、手だけにベットリと付着した血をハンカチで拭いながら、リーゼロッテの言葉に対してドヤ顔で返して見せた。


「しかし、怒らせると容赦ないのね、リンネは」


「まあ、それもお互い様では?」


「……そうね」


もと来た道を肩越しに振り返り、リーゼロッテの見た光景の中に、生きている者はいない。

血の海に沈む盗賊たちの姿、しかしその光景に、込み上げてくるような罪悪感や、高揚感、そんなものは一切ない。


親兄弟達と幾たびもこなした任務、依頼。

その中にももちろん”こういう物”があった。

リーゼロッテにしてみれば、久方ぶりの殺しの仕事が終わったというだけのことだ。

ただ、リンネにあてられたか、仕事中は割と冷静な方ではあるが、今回はリーゼロッテも激情にかられ剣を振るった。

その事にだけ関して言えば。


「私もまだまだね」


との事だ。

リーゼロッテが向き直ると、横にいたルティアがタオルを差し出してくる。

それでとりあえずは頭髪に付着した血を拭うが、完全には拭いきれない。


「はあ、早く湯浴みでもしたいなあ、臭いもキツイわ」


血のりで傷んだ髪を引っ張りながらそういうと「じゃあ早くマスターと合流しましょう」とルティアはニコッと笑うのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ