表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と狼と魔法使い  作者: リズ
第一章
4/47

別れと出会いⅣ

葬儀の次の日、メリルの町からリンネの姿が消えた。

最初に気付いたのは従業員の男だった。


リンネの事を気掛かりに思った男が家を訪れたのだが、その時には既に姿は無かったそうだ。



リンネは明朝、まだ日も昇っていない時間に町を発っていた。

行く宛など無い。

ただこの町に、両親との楽しい思い出しかないこの町に居るのが嫌だった。


持てるだけの水と食料を革の鞄に詰め、家に置いていたローブを見にまとってリンネはただ歩いた。

少しでも早く、少しでも遠くに、そんな事を考えていたのかもしれない。


しかし子供の足だ、そう早くは歩けない。

道端に突き出た岩に座りパンをかじる。

一口食べただけだったが、リンネは口を止めた。

どうしても美味しいと感じることが出来なかった。

一昨日食べた、美味しいと感じたパンと同じものなのにだ。


食欲もわかず、ただ呆然とリンネは空を見上げた。

昨日の曇天が嘘のような晴天だ。

美しい空模様に流れる雲が輝く太陽を隠す。


リンネはしばらく呆然としていたが、それを合図にするように腰を上げ、再び歩き始めた。

家に居るとき、どうしようかと考えていた、店を継ごうかとも思った。


親戚は居ないが良くしてくれる人なら居るだろう。

自立出来るようになるまで世話になろうかとも考えた。

しかしどれもダメだとリンネは思った。

あの町に居る以上幼くして両親を失った可哀想な奴。

そういう目で見られるのが一目瞭然だった。

リンネはそれを良しとしなかった、ちっぽけなプライドだったのかもしれない、しかし哀れみの目で見られれば両親の事を思い出してしまう。

それが嫌だから、リンネは町を出たのだろう。



「さようなら皆さん、さようなら大好きな町……さようなら父さん、母さん」


小さく見える町に向かってそう呟くと リンネは町に背を向けて歩きだした、振り返る必要はない、手を振ってくれる人はもういないのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ