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猫と狼と魔法使い  作者: リズ
第三章
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盗賊団討伐戦Ⅲ

リンネは杖を魔力でもって引き寄せたが、それを手に取らず、地面に刺すと腰の剣を抜いた。


その様子に憤ったのは言うまでもなく盗賊団の頭目の男。

額に浮かんだ青筋、血走った目、はっきりと怒っているというのが見て取れた。


「なめやがってクソガキがあ!!」


声を上げ切りかかるのかと思ったが、盗賊団の頭目は剣を振り上げただけで、リンネに迫るでもなく、そのまま動きを止めた。


「何やってんだテメエらあ!! 撃て! 一斉射だろうが!!」


そういう手筈だった、昔この砦で使われていた戦法よろしく、侵入者は中央で一気に仕留める。

城壁上に待機している手下が放つ筈の矢、弾丸、魔術、それらが待てど暮らせど降ってこない。


想定していなかった緊急事態に、空を仰ぐように城壁を見上げる頭目の男。

しかし、男が見たのは手下の姿ではなく、こちらをゴミでも見るかのように見下す銀髪犬耳の女性と、壁の縁に座り、観戦よろしくどこから持ってきたのか、カップで何やらお茶をしている様子の黒髪猫耳メイドの姿。


「なんだお前ら三人かよ、ふざけんな、たった三人でこの要塞が!!」


「うるさいですよ、それよりも質問します。

なんで——」


距離にして数メートル程度、目を離していたとはいえ、人が近づく気配に気づかないはずはない。

しかし、頭目が視線を戻した時、さっきまで離れていたところで剣を抜いていた少年がいつの間にか自分の目前に迫り、剣を振り下ろそうとしていた。


「なんで、エルフの村を襲ったんです?」


口調すら乱さず、振り下ろしたリンネの剣がその剣を防ごうとした頭目の剣を持つ指を切り落とす。


「が、あ、あああ!指が、俺の指があ!!」


手を抱え、うずくまる頭目の男。

その様子に、リンネは剣を鞘に納める。


「殺すだけ殺しておいて、自分は指がなくなったくらいで泣き言ですか……ふざけんなよ」


丁寧、というよりは平静を装っていたリンネの言葉からその丁寧さがなくなった。

敵地に赴いてからというもの、無表情に近かったリンネの眉間に皺が寄る。


「ざっと見ただけではあるけど、兵、戦法、武器、これだけあればそこそこのギルドも造れたはず。

何が楽しくて盗賊なんかやってんだ。

まあ今回は弱い人、村を襲って金品奪って楽に金稼ぎ、ついでに奴隷商にでも売るつもりで村の娘をさらったってとこですか」


「そ、その通りさ。

ギルド? は、くっ糞くらえだ、楽して何が悪い」


頭目の視線が、自分の目の前にある剣を見つめる。


「自分らが楽しけりゃ他なんか……どうだっていいだろうがよ!!」


そして、無事な方の手でそれを拾うと、無防備なリンネに向けて突き立てようと腕を伸ばした。


「その結果、お前は一人の魔法使いの逆鱗に触れた」


リンネがした動作は右足のつま先を少しあげ、下し、軽く地面を蹴っただけ。

その動作が後方に刺さっている杖を起動させ、魔術を発動させる。


盗賊団の頭目が伸ばした剣はリンネの鼻先で止まった。

最初に討伐した盗賊たちの剣、手斧、メイス。

地面に転がっていた武器が宙を舞い、一斉に頭目を襲ったのだ。


無数の武器に、刺され、切られ、打たれ。

しかし、リンネはそれらすべて心臓や頭部、いわゆる急所を外してみせた。


「楽には殺さない、自分の行いを悔やみながら……死んでください」


宙に残していた剣数本、それで、盗賊の頭目の手足を刺し穿ち、地面に縫いとめる。


「……化け物、め」


「大して変わりませんよ、僕とアンタわ」


杖を呼び、掴み、頭目の男に目もくれず、リンネは砦内部へと向かう。

その様子を見ていた城壁の上のリーゼロッテもルティアも、合流のため城壁上から砦の内部へと向かうのだった。

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