盗賊団討伐戦
「おいお嬢ちゃん、いい加減飯食わねえと死んじまうぜえ」
砦の地下、捕まえたエルフの様子を見に来た男が話しかけたが、鉄格子の向こうにいるエルフの少女は反応を示さなかった。
ボロボロのベッドの上で足を抱えて顔を伏せるエルフの少女。
服もボロを着せられ、鎖付きの手枷足枷をされ囚人のような扱いだ。
艶やかで美しかったであろう金髪でさえ傷んでしまっている。
伸びた前髪で目元も隠れてしまっていた。
「っち、早く売れちまえよな。
お前の飯だってタダじゃねえんだぞ」
男の理不尽な言葉に少女は怒る事もせず、少女は待った。
待ったのは助けではない、自分が飢えで死ぬ、その時をだ。
「あんまり手間かけさせると、口に残飯ぶち込むぞ!」
そう言って鉄格子を蹴り飛ばしその場を去る男。
エルフの少女はそれにすら反応は見せなかったが、涙だけは頬を伝った。
男が去り、再び静寂が訪れる地下。
その地下を揺れが襲ったのは、少女が睡魔に襲われ目を閉じて眠りについた頃だった。
異変に気付いたのは壁の上で見張りの男が酒を飲み始めた夕暮れ時。
一人のローブを纏った少年が森から現れ、杖をかざしたのを景色を眺めようとした男が見つけた瞬間。
正門のすぐ横から左右にそれぞれ、城壁の見張り用通路まで伸びる足場が音を立てて形成された。
その足場を二つの影が駆け上がってくるのを見て男が声を上げる。
「て、敵だ! 敵が来たぞ!!」
その声に一緒に酒を飲もうとしていた仲間数名が慌てて立ち上がり、警鐘に一番近かった男がそれを鳴らした。
と、その時もう一度下を除いた男は再びローブを纏った少年が杖をかざすのを見た。
その少年の紅い目がこちらを覗くのも一緒に。
「紅い目、ま、魔族がなんでここに!」
後ずさる見張りの男。
その横目に気配を感じ振り向くと、白髪の女剣士が剣を横一線に自分の首目がけて薙ぎ払うのを見た、それが男の見た最後の光景だった。