山の麓の砦
山の麓、盗賊団のアジト。
アジトとは言うものの、そこは過去に王国が戦時に砦として使用し、終戦と共に放棄された要塞だ。
山を背に砦を築き、砦から円形に、高く、厚い城壁を築き、その上に監視塔を築き、門は砦正面の一ヶ所のみ。
中央は広く、なにもない。
門を破っても城壁の上から弓や魔法、銃で撃たれる。
そんな場所だ。
その砦の中、元は宴を行うためだった広間に玉座よろしく置いたソファに腰を掛ける男が一人。
その男に部下の男が近づいた。
「ボスゥ、いつまであのエルフ置いとくんすか?
もう俺達で遊んじゃってもいいじゃないんすか?」
下衆な笑みを浮かべるその男。
その男の言葉に不機嫌そうにボスと呼ばれた男はにらみを効かせる。
「バカが、せっかくの上物に傷でも付けてみろ、奴隷商に売り渡す値段が馬鹿みたいに下がっっちまうだろうが。
それともなにか? お前の命程度でその下がった金額分賄えるってのか?」
「そりゃあ無理っすけど。
あのエルフ、ろくに飯も食わねえからやつれてきてるし、売値なんてつくんすか?」
「生娘はそれってだけで高値で売れるんだよ、つべこべ言わずに次の獲物でも見つけてこいや!」
拳を振り上げ、体躯の大きな男は下っ端に言うと、近くの酒の入ったジョッキに振り上げた拳を降り下ろし粉々に砕いて見せた。
「は、はいすみません!」
言うやいなや駆け出す下っ端。
その様子に舌打ちすると男は近くにいた他の部下に代えの酒を用意させる。
「酒持ってくるついでにエルフの様子を見てこい、まあ変化なんぞありゃあしねえだろうがな。」