初任務Ⅱ
「ど、どうしたんだ?」
「依頼票を見ただけなんですが、マスター内容に怒っちゃって」
一枚の依頼票を手に二人に合流しようとしたリーゼロッテが、リンネとすれ違い、そのあとを追ってきたルティアに聞いた。
ルティアに比べれば長いとも言えないが、それでも数ヵ月、いや、そろそろリンネと知り合って半年か。
その間、リンネが何かに対して怒りの感情を露にしているのを見たことがなかった。
リーゼロッテは依頼票を掲示板に戻し、早足でリンネを追う。
「どうした、リンネ。
らしくないじゃないか」
「ああ、そうだね」
リーゼロッテの言葉にも生返事でリンネは待合所の出入口へと向かう。
先程までリンネ達を睨んでいた冒険者数名が再び、自分達のテーブルの近くを通ったリンネを睨んだが、リンネの形相に冷や汗を流し目をそらして下を向いてしまった。
「街を出て依頼主に会う。
エルフの村が襲われて、壊滅状態らしい」
それだけ言ってリンネは依頼票を異層空間にしまい、待合所を出て、噴水の近くに立てられている道標を確認すると、来た方向とは逆の街の出入口へと向かう。
「これは僕が個人的な感情で受けたことだ、二人は別に着いてこなくても良いよ」
口調こそいつも通りだが、その端々にやはり怒りの感情が垣間見えた。
「私はマスターの使い魔です、マスターがどこに行こうともお仕えします」
「私もだ、仲間だからな」
「そう、ごめんね」
ローブのフードを被りながらリンネは二人にそう言った。
リンネの背を眺め、どう声を掛けたものかとルティアもリーゼロッテも悩むのだが、結局二人共街を出るまで何も言えないままだった。