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猫と狼と魔法使い  作者: リズ
第三章
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いざ、ギルド

待合所への道中、いつからか、すれ違う人や道端で話をしている人達がリンネ達を見ていることに気付く。

あのビラの情報が行き渡り始めたということだ。

それに加えて、ルティアのメイド服は一目でそれと分かる。


「おい、あの3人じゃないのか?」


などと、声が聞こえてくるのも仕方ない。


そうこうしているうちに、リーゼロッテが足を止めた。


「リンネ、あの建物がそうですよ」


たどり着いたのは広い円形の広場。

真ん中に噴水があり、広々としたその場所は、馬車同士がすれ違ってもぶつかったりすることがないほどに広い。

道が放物線に続いていることから、この広場が街の中央に位置していることも伺えた。


その広場の外周にその建物はあった。

周りの石造りの家々よりも立派で、木造のレリーフの彫られた両開きの扉が目を引く。

ギルドを示す、ドラゴンをモチーフにした刺繍が入った旗を掲げたその建物の前に、3人は歩を進めた。


扉を押し開け、中に入る。

中も綺麗な物だ、木のテーブルがいくつも並べられ、そこで冒険者風の若者達が食事や、なにやら相談事をしているが、ゴミなどは落ちていない。

給仕の女性達はせわしなく料理を運んだりしていて、まるで繁盛期のレストランのようだ。


「おおー、賑わってますねえ」


目をキラキラ輝かせ、辺りを見渡すリンネ。

ルティアも表情こそ無表情だが、どこかそわそわしていた。

そんな二人を差し置いて、リーゼロッテは目の合った給仕に軽く手を振って呼び止める。


「すまない、この二人をギルドに加入させたいんだ」


「かしこまりました。

加入登録ですね、では奥にお進みください、あちらのカウンターで手続きを行います」


「というわけで、行きますよ二人共」


「ああ、うん分かった」


リーゼロッテに連れられ、二人は奥のカウンターへ。

そこには眼鏡を掛け、給仕とは違い、どこかスーツを連想させる胸元の開いた洋服を来た女性が座って待っていた。


「いらっしゃいませ、初めての方ですね。

あと、そちらはリーゼロッテさん、お久しぶりですう」


物腰の柔らかい、優しそうな女性が、予想を裏切ることなく優しそうな声でそう言って微笑む。

それに対して、リンネもルティアもペコリと会釈するのだった。


「久しぶりだなミレーナ、元気そうだな、相変わらず繁盛してるみたいだし」


「リーゼロッテさんは少しお痩せになりましたか? 元気そうですが、無理はいけませんよ? あ、そう言えば号外に映ってたあの3人って――」


「話は後にしよう、今はこの二人の登録を頼む」


リーゼロッテが一歩下がってそう言い、リーゼロッテがミレーナと呼んだ女性は改めて二人を見て微笑んだ。


「申し訳ありませんでした、それでは登録を進めさせていただきますね。

リーゼロッテさんの紹介、という事でよろしいんでしょうか?」


そうなの? と言わんばかりに後ろにいるリーゼロッテに振り返るリンネにリーゼロッテは頷いて返して見せ、それをカウンター越しに見ていたミレーナは微笑んで「分かりました」と言って、取り出した紙に何やら書き込み始めた。


「リーゼロッテさんの紹介と言うことでしたら、リーゼロッテさんが所属しているギルド『狼の牙』への加入を希望されますか?」


「ああ、いえそう言うわけでは――」


「では、新設と言うことになりますが――」


ここまで言って、再びミレーナはリンネを見た。

この世界のギルドはまず大元にギルド運営本部があり、そこから枝分かれするように無数のギルドが存在している。


言うなれば親会社と子会社のような関係と言える。

子会社とはいえ、1つの会社を作るのだ、まずマスターになる人物を見定めるのは何ら間違いはない。

ましてやリンネは子供。


そうなると「今おいくつですか?」と言うミレーナの質問はもっともになる。


「先日15になりました、けど」


「15歳ですか、やはりまずは何処かに所属して経験を積んでからのほうが――」


ミレーナの言葉に「まあ待ってくれ」と割り込んだのはリーゼロッテ。

彼女はリンネの肩と、ルティアの頭に手をポンと置くとさらに続けた。


「確かにこのリンネはまだ若い、だが実力は確かだ、なにせ私は彼に勝てた試しがない。

それと、こっちのちっこいのはさっきミレーナが言い掛けただろう? 号外にあった強盗団制圧の立役者だ」


自分の負け話をなぜか誇らしげに話すリーゼロッテ。

そんなリーゼロッテの様子にミレーナは目を点にしていた。


「この街以外でも依頼を数多くこなしている、狼の牙の切り込み隊長、リーゼロッテと言えば王国の騎士にも相当する実力者ですよ? そのリーゼロッテさんが勝てないって」


「本当ですよ、ここ数ヵ月、修行の合間に何十回もマスターとリーゼロッテ様は模擬戦をしておいででしたが、マスターの全勝でした」


驚いていたミレーナに答えたのはルティアだった。

まるで自分の事のように誇らしげに話すルティアの姿はまわりからみても可愛らしかったことだろう。


「……見たことのない家紋ですが、記章も持ってますし資格あり、と見るべきなんでしょうか。

それに、強盗団を壊滅させた戦力も保有してますし…………え、強盗団の壊滅の号外に映ってたメイド服のファイターって、この子、なんですか?」


ファイター、職業の1つである。

近接戦闘に特化した、本来体躯の良い大男や、女性でも技を磨いた拳法家が就く最前線で戦う、そんな役割を担う職業の1つ。


「ああ、そうさ。

ちなみに彼女はリンネの使い魔だ」


「戦闘特化の上級使い魔ってことですか!?」


「戦闘特化とは失礼な、これでも炊事洗濯食事、まあ家事全般いけますよ」


思わず立ち上がって声をあげたミレーナ。

そんな彼女の声に反応したのか、テーブルに座っていた他の冒険者の若者達が一斉にリンネ達の方を向いた。


「し、失礼しました。

取り乱してしまいました。

ま、まだなんだか信じられませんが、新設は許可します

滞在型のギルドとしての形をとるか、旅団型のキャラバン、どちらにします?」


「あ、それはキャラバンでお願いします。

旅しながら色々したいので」


「分かりました、ではキャラバンの名称をご記入ください」


差し出された紙とペン。

それを受け取ってリンネは振り返る。


ルティアと目を会わせ、お互いに首をかしげ、リーゼロッテと目を会わせればお互いに苦笑する。

「思い付かないや」などと言いながらも、リンネは紙に文字を走らせ、それをミレーナに返した。


「猫と狼と魔法使い、ですね。

承りました、では、しばらくお待ちください」


そう言ってミレーナは立ち上がると、席を離れ、カウンターの裏にある部屋へ入っていった。


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