別れと出会いⅢ
翌日、天気はまだ回復せず。
雨は止んだが空はまだ厚い雲に覆われていた。
リンネは黒い服、喪服を身に付け町の外れにある小高い丘、共同墓地にたたずんでいた。
中身のない棺桶が埋められ、両親の名が刻まれた十字架がたてられる。
しかし、リンネには実感が湧かない、遺体の無い空の棺桶。その上に佇む十字架を見てどうやって両親の死を実感すればいいのか。
集まった町の人達から哀れみの目で見られる事のほうがリンネにはよっぽど嫌だった。
「まだ幼いというのに」
「親類もいないんだってねえ」
リンネは走った、母に似た銀の髪をなびかせて、父に似た紅い瞳に涙を溜めて。
(嘘だ母さんが死んだなんて、父さんが死んだなんて)
丘を駆け、町に向かい、住み慣れた家に向かう。
家に帰ればいつもの毎日が待ってる、これは悪い夢だ。
自分にそう言い聞かせてリンネは走った。
家の前まできたリンネは、勢い良く木製のドアを開けた。
夢なら覚めてくれる、ドアを開ければいつも優しかった父や母がいつものように抱き締めてくれる。
そう信じてドアを開けたのだ。
しかし、家の中は朝と何ら変わりなかった。
明かりの灯っていない薄暗い部屋がそれを物語っていた。
「ーーっくう」
リンネはそこで初めて涙を流し、声をあげて泣いた。
襲ってくるのは両親の死という現実と孤独感。
そして何よりも両親と過ごしてきた思い出が、今のリンネには一番辛かった。