魔法の勉強Ⅱ
爽やかに吹く風が木漏れ日を揺らし、枝葉の擦れる音が、小川のせせらぎとオーケストラを奏で、目を閉じ、浅い眠りに身を任せるラウラに心地の良い時間を与えていた。
あれからどれくらい時間が経ったのか、リンネからは全く声が掛からない。
心配になった訳ではない。
「どれ、少し様子でもみようか」と、眠りから覚醒し、目を開けるラウラ。
魔力の感覚を覚えても、それを操るにはまだまだ時間が必要だ。
今日の所はマナを体内で練る事が出来るようになれば上等。
そう思っていたラウラだったが、その考えはラウラの目の前の光景が裏切った。
「あ、先生、見てください。
水と火、二つ同時に出せるようになりましたよ」
目を丸くするラウラとうってかわって、リンネはにっこりと微笑んで手のひらの上に作り出した手のひら程の大きさの火球と水球を目の前で交差させたり、回転させたりして弄んで見せた。
「こいつは驚いた、私も生きて長いが、一日とかからずにここまでマナを操れるようになるなんてねえ。
確かにそう言うことが出来る、初めから出来たって奴の事は聞いたことがあるし、才能がある奴も大勢見てきたが。
長生きはしてみるもんだねえ」
マナを練るどころか、放出、形質変化、属性付与まで。
読んだ魔導書の知識を使っただけ、と、事はそう簡単ではない。
国々の主要都市にある魔術の教育機関。
そこでの適性検査を経て、試験に合格し、やっと魔法を覚える為にたどり着く第一段階のマナ操作。
適正があろうともその第一段階をクリア出来ずに落第する者がいると言うのに、リンネはそれらを軽くこなして見せたのだ。
「先生、魔法って凄いですね」
目の前で踊る火球と水球を操るリンネは嬉しそうに言った。
その光景にラウラにも笑みが浮かんでいた。