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ハルケケと友達屋

作者: 笹丘かもめ

ハルケケはもともと友達が少ないほうでしたが、さいきんになって一人もいなくなってしまいました。

というのも、だれひとりとしてハルケケと話をしていて楽しくなかったからです。


ハルケケは、じぶんがせかいでいちばんただしいと思っていました。

実際、ハルケケの言うことがぜんぶまちがっているということはなかったのですが、卵のからをとがった方からわるか、尖っていないところからわるかとか、そういうどっちでもいいことも、ハルケケはじぶんのやることがいちばんただしいとおしつけるので、友達はだんだんハルケケのことがうっとうしくなったのでした。

ハルケケはじぶんがまちがっていると言われるのもとても嫌いでしたから、友達がいなくなったことにも、じぶんはなにも悪くないと、ひどくはらを立てていました。



ある日、ハルケケのところに、変なやつがやってきました。

「やあ、君がハルケケだね」

「君は誰だい」

「僕は友達屋さ。君が友達がほしいなら、僕が友達になろう」


友達屋はにこにこしながら続けました。

「どんな友達がおのぞみだい?

 君が好きなときにいつでも遊んでくれる友達かい?

 君のことが大好きな友達かい?

 君を認めてくれる友達かい?

 君を尊敬してくれる友達かい?

 君が正しいと盲信してくれる友達かい?

 ぜんぶぜんぶ君の思い通りになる友達がいいかい?」

「ぜんぶだ、ぜんぶがいい」

ハルケケは、ちょうどこんな友達を望んでいたのでした。

友達屋はにこにこわらいました。

「ハハハ、よくばりだねえ」


友達屋はポケットから紙とペンをとりだしました。

「さあさ、ここにちょいちょいと丸をつけて、ここに君の名前を書いたら、それでもう僕は君の友達さ」

ハルケケはサインをして、それで友達屋はハルケケの友達になりました。


それからハルケケと友達は、まいにちまいにち一緒に遊びました。

ハルケケのもとの友達が遊んでくれなかったような朝早くから夕方遅くまで、ずっと一緒に遊びました。

ケームをすればいつもハルケケが勝ちましたし、かけっこでもいつもハルケケが勝ちました。

友達はハルケケの言うことは何でも聞きました。

ハルケケが誕生日プレゼントがほしいといった時も、にこにこしながら、おのぞみのプレゼントを持って現れるのでした。

ハルケケが悪戯をしてお母さんに叱られた時も、友達は一生懸命、ハルケケはわるくないと励ましてくれるのでした。

友達は、ハルケケに何も望んでいるそぶりはなかったので、ハルケケは気をよくして友達にどんどん望み続けました。

友達はにこにこ笑っていました。



ある日、ハルケケは思いました。そして、友達にこうもちかけました。

「ねえ友達、僕のもとの友達も、僕ときみの友だちにしてやろうと思うんだけど、どうだい」

友達は笑いました。

「だめだよ、だって君の友達は僕のお客様じゃないからね」

ハルケケはおどろいて言いました。

「君は僕の友達じゃないか、あんなに君『と』一緒に遊んだのに」


「僕『で』散々好き勝手遊んでおいて何様のつもりだい?」

友達は、にいっと歯をむいて笑いました。

「そろそろ頃合いだと思っていた頃さ、お支払いをお願いしよう」

ハルケケはブルブル震えだしました。

「お支払いって」


「はじめに言っただろう? 僕は友達屋さ。

 君のお望みどおりの友達を演じてやったんだ、もうちょっと感謝されてしかるべきだと思うんだがねえ。

 さて、ご勘定だ。

 基本料、オーダメード友達設定『ぜんぶ』、休日出勤給、時間超過料金、お誕生日料金は1回分プレゼント料別途、お慰めが6回、鬼ごっこが53回、かくれんぼが33回、その他ゲーム157回」


ハルケケは真っ青になりました。

「ま、まってくれ、僕はそんなにお金を沢山もっていないよ」

友達屋は笑いました。

「心配要らないよ、だって、おだいはね」



ぱくり。


「君だからさ」




ハルケケをすっかり食べおえると、友達屋はハルケケのもとの友達のところへ走っていきました。

友達屋はにっこりしていいました。

「ぼくも君たちの友達にしてくれないかな。むろん、おだいはいらないよ」

ハルケケのもとの友達は、変なことをいうね、と言って笑いました。

友達屋は、そのとおりだね、と言って笑いました。


そして、みんなでなかよくあそびました。

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