設定集2【歴史資料:魔道産業革命と「筋肉の世紀」の終焉】
――後世の歴史家による手記より抜粋――
かつて「叡智の賢者」あるいは「肉体の彫刻家」と呼ばれた男、レイがもたらした理論は、皮録にも世界を未曾有の動乱へと導いた。
それまで個人の資質や精霊の加護に依存していた魔法が「筋機能理論」によって規格化されたことで、国家は効率的な「マナ出力装置」としての兵士を量産し始めた。いわゆる、魔道産業革命による国家総力戦体制の幕開けである。
諸国は競うようにバルク(質量)を求め、戦線は拡大の一途を辿った。しかし、この狂乱は長くは続かなかった。
肥大化しすぎた軍備は、国家という有機体の生命維持コストを遥かに超越したのである。
歴史家は当時の情勢をこう形容する。
「――それはあたかも、膨れ上がりすぎた筋肉が、深刻な栄養不足によって自らを食いつぶす**『オートファジー(自食作用)』**を起こすが如き光景であった」と。
国々が自壊し、破壊の連動が停止に追い込まれたとき、人々は再びレイが残した原典へと立ち返ることになる。
そこには、殺戮の道具としての筋力ではなく、個の尊厳と生命の美しさを謳歌するための「真理」が記されていた。
その後、荒廃した世界で最初に開催された「平和の祭典」において、かつての敵兵たちが互いの肉体を讃え合い、ポーズを交わした記録が残っている。
これこそが、長い冬を越えた人類が経験した最大の**「超回復」**であり、現代へと続く平和の起始点となったのである。




