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追放された騎士団団長の花屋日誌  作者:


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19/20

想いを伝える日

【約束の日】


 その日、俺は朝から緊張していた。


「ガレスさん、落ち着いてくださいよ」

 アレンが、笑いながら言った。


「……落ち着いている」

「全然落ち着いてないじゃないですか。さっきから同じ花の水やりを三回もしてますよ」

「……そうか」


 俺は、苦笑した。


 夕方、エレナと会う約束をしている。

 場所は——俺の故郷。

 母の墓の近くの、花に囲まれた丘。


「ガレスさん、これ」


 アレンが、赤いバラを差し出した。


「昨日、選んでたやつですよね。綺麗に包んでおきました」

「……ありがとう」


 俺は、赤いバラを受け取った。

 花言葉は『愛』『あなたを愛しています』。

 この花と共に、想いを伝える。


◆◆◆


【故郷へ】


 午後、俺は花屋の前でエレナを待っていた。


 約束の時間ちょうどに、エレナが現れた。

 彼女は、白いワンピースを着ていた。


「お待たせしました、ガレスさん」

「いや、今来たところだ」


 俺は、用意していた馬車を指差した。


「少し遠いが、行きたい場所がある」

「はい」


 エレナは、微笑んで頷いた。

 二人は、馬車に乗り込んだ。


 王都から一時間ほどの、小さな村。

 俺が生まれ育った場所。

 母が眠る場所。


 馬車の中、エレナは窓の外を見ていた。


「ガレスさんの故郷なんですね」

「ああ」


 俺は、静かに答えた。


「母が、眠っている場所だ」


 エレナは、優しい目で俺を見た。


「……会いたいです。お母様に」

「ああ」


 俺は、頷いた。


「紹介したい」


◆◆◆


【母の墓】


 村に着くと、俺とエレナは母の墓を訪れた。


「母さん」


 俺は、墓前に花を供えた。

 エレナも、持ってきた白い花を供えた。


「紹介する。エレナだ」


 俺は、静かに言った。


「大切な人だ」


 エレナは、深く頭を下げた。


「初めまして。エレナと申します」

「……」

「ガレスさんを、いつも見守っていてくださって、ありがとうございます」


 エレナの言葉に、風が優しく吹いた。


「今日、この方に想いを伝える」


 俺は、母の墓に手を合わせた。


「見守っていてくれ」


 風が、また優しく吹いた。

 まるで、母が応えてくれたように。


◆◆◆


【花の丘】


 母の墓から少し歩いた丘へ、二人で向かった。


 そこは、色とりどりの花が咲く場所だった。

 母が、生前よく手入れをしていた場所。

 今は、村人たちが大切に守っている。


 勿忘草、ラベンダー、白いスミレ。

 そして——母が最も愛した、白い芍薬。


「綺麗……」


 エレナが、周りの花を見渡した。


「ここは……」

「母が、愛した場所だ」


 俺は、静かに言った。


 夕日が、ゆっくりと沈み始める。

 花に囲まれた丘。

 母の想い出が詰まった場所。


 ここで——

 俺は、想いを伝える。


◆◆◆


【告白】


 俺は、エレナの前に立った。

 心臓が、大きく跳ねる。


「エレナさん」

「はい」

「……話したいことがある」


 俺は、赤いバラを差し出した。


「これを、受け取ってほしい」


 エレナは、驚いたように赤いバラを見た。


「赤いバラ……」

「花言葉は『愛』『あなたを愛しています』」


 俺は、真っ直ぐにエレナを見た。


「エレナさん、俺は——」


 深く息を吸う。


 そして——


「あなたが、好きだ」


 エレナの目が、大きく見開かれた。


「初めて店に来た時から、ずっと——」


 俺は、続けた。


「あなたと話す時間が、楽しかった」

「あなたの笑顔を見ると、心が温かくなった」

「あなたがいない日は、寂しかった」


 俺の言葉は、淡々としていた。

 だが、真っ直ぐだった。


「戦場に行く時、あなたがくれた勿忘草が、俺を支えた」

「帰ってきた時、あなたが待っていてくれて、嬉しかった」


 俺は、膝をついた。


 騎士が王に忠誠を誓うように。


「エレナさん、俺はあなたに誓う」


 俺は、彼女を見上げた。


「あなたを守る」

「あなたと共にいる」

「あなたを、幸せにする」


 夕日が、二人を照らしていた。


「だから——」


 俺は、赤いバラを差し出した。


「俺と、一緒にいてほしい」


 静寂。

 風だけが、優しく吹いていた。


 エレナは——

 涙を流していた。



「……ガレスさん」


 エレナは、涙を拭いた。


「私も、ずっと——」


 彼女は、懐から一輪の花を取り出した。


 白い芍薬。


「この花を、渡したかったんです」


 エレナは、微笑んだ。


「花言葉は『恥じらい』『はにかみ』。そして——『幸せな結婚』」

「……!」

「私、ガレスさんのことが好きです」


 エレナは、真っ直ぐに俺を見た。


「初めて会った時から、ずっと」

「エレナさん……」

「ガレスさんの優しさが、好きです」

「花を愛する心が、好きです」

「淡々としているけど、誰よりも人を想う姿が、好きです」


 エレナは、白い芍薬を俺に差し出した。


「だから、私からも誓います」


 彼女の目は、涙で濡れていたが——強かった。


「ガレスさんを支えます」

「ガレスさんと共にいます」

「ガレスさんと、幸せになります」


 そして——


 彼女は、微笑んだ。


「一緒にいてください、ガレスさん」


 俺は、立ち上がった。


 そして——

 エレナを、抱きしめた。


「……ありがとう」


 俺の声は、震えていた。


「ありがとう、エレナ」


 エレナも、俺を抱きしめ返した。


「こちらこそ、ありがとうございます」


 二人は、しばらくそのまま抱き合っていた。


 夕日が、二人を優しく包んでいた。


 花に囲まれた丘で。


 母が愛した場所で。


 俺たちは、想いを伝え合った。


◆◆◆


 しばらくして、二人は並んで座った。

 夕日を見ながら。


「ガレスさん」

「ん?」

「これから、どうします?」


 エレナが、少し恥ずかしそうに聞いた。


「……結婚したい」


 俺は、素直に答えた。


「そして、一緒に花屋を営みたい」

「……!」

「お前が望むなら、だが」


 エレナは、嬉しそうに微笑んだ。


「はい。喜んで」


 彼女は、俺の手を握った。


「一緒に、花屋を」

「一緒に、人生を」


 俺も、彼女の手を握り返した。


「ああ」


 二人は、夕日を見つめた。


 赤いバラと白い芍薬。


 愛と幸せな結婚。


 二つの花が、二人の未来を祝福していた。


◆◆◆


【帰り道】


 村を出る前に、もう一度母の墓に手を合わせた。

 エレナも、隣で。


「母さん、俺は幸せになる」


 俺は、静かに言った。


「この人と」


 エレナは、俺の手を握った。


「お母様、見守っていてください」


 エレナが、優しく言った。


「私たち、二人で頑張ります」


 風が、優しく吹いた。

 母の祝福のように。


「行こうか」


 俺は、エレナの手を握り返した。


「はい」


 二人は、手を繋いで王都へ向かった。

 新しい未来へ。

 共に歩む人生へ。


◆◆◆


【日誌】


 今日、エレナに想いを伝えた。

 母が愛した、花の丘で。


 俺の想い。

 エレナの想い。

 二つの想いが、一つになった。


 エレナは、白い芍薬をくれた。


 『幸せな結婚』


 その花言葉の通り——


 俺たちは、幸せになる。

 一緒に。


 これから、二人で花屋を営む。

 共に笑い、共に生きる。

 それが、俺たちの未来だ。


 母さん、見守っていてください。

 俺は、幸せになります。この人と。

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