4 遮る
〈すずき林檎園〉に鈴木孫を連れて行く。
その後は病院に行った。
しばらく入院しろと言われたのでキレ散らかして帰宅。
安アパートは壁が薄く、隣のカップルの営みが聞こえてくる。
苛立ちを隠しながら、時折モタモタしているので、最後は耐えきれず「やめちまえヘタクソ」と壁を殴った。
翌日〈すずき林檎園〉に出社すると、そこに警官がいた。
俺に何度も謝ってきた頭のおかしい警官だった。
「なんだ! 貴様!」
「事情を聴取しに来たんだ、君は家に来られるの嫌だろ」
「職場に来られるのも嫌だよ! 何故わかんないんだ貴様! こっちは昨日のケガが痛いっていうのに……!! いつもいつも俺を苛立たせる……!! そんなに俺が嫌いか!?」
「お、落ち着いてくれ、落ち着いてくれ」
「落ち着け? 落ち着いてるさ。ただ嫌いなんだよ、俺のことを好きにならないような奴は……だから、失せろって、何度も何度も、何度も何度も言ったのに……言ったっていうのに……」
「君は病気なんだ!! だから嫌なことばかり考える」
「そうだよ、俺は病気だ。でもお前たちが俺を嫌ってるのは事実だろ。俺の精神を言い訳に自分を取り繕おうとするなよ」
俺は断固としてこの警官との会話をしようとはしなかった。
警官は名乗っていた。広瀬天彦。
知るかそんなもの。お前みたいなクソ野郎の憶えるつもりもないから名前なんか明日には忘れてるだろうさ。
「怪我大丈夫なの?」
昨日あんな事があったので、今日から一週間は休校らしい。
鈴木孫はやたらとそう聞いてきた。
うるさい。
「怪我……」
「鬱陶しい。失せろガキ」
「心配してるのに」
「うるさい。仕事の邪魔だ。失せろ。失せろ失せろ」
「じいちゃん言ってたよ、あんたのこと。『本当は優しい奴だ』って。水都県ってそういう人いるらしいよ。県単位で治安がゴミクズだからどんな善人もクレイジーモンスターになっちゃうって」
「知ったような口を利く。俺は善人なんかじゃない」
「でも昨日助けてくれた」
「彼処で割って入らなきゃ、あの時、あの場で誰かが死んでた。人が死ぬのは……いけないことだ。俺には当てはまらないけれど、人は誰もが『大切な人』っていうのを持つんだ。人が殺されたら、誰かにとっての大切な人がこの世から消える。それはとても切なくて、悔しい事だ。だからやった。善意でやった訳じゃない」
そうだ、俺は善人なんかじゃない。化け物だ。醜い化け物だ。
俺に良い心を抱くような人間は存在しない。俺が化け物だからだ。
しかもただの化け物じゃない。ゴミのような化け物だ。だから俺は善人なんかじゃないんだ。ゴミのような悪い化け物なんだ。
だから敵が多いんだよ。
俺の事を好きにならないような奴らはみんな敵なんだ。
「自分のことそんなに嫌いか?」
「黙れ」




