2 憎む
人間なんか信じていないけれど、人間として生まれたからには生きていく必要がある。
だから仕事を探す。クズどものせいで仕事をクビにさせられたから、もう一度イチから仕事を探す羽目になる。
俺は連日謝りに来る警官にグチグチとストレス発散のために悪態をついて、仕事を探す毎日を送っていた。
警官は「母が喫茶店を営んでいて従業員を募集してる」と言っているのを聞いて、気持ちの悪い感情をおぼえた。
俺にクズの相手をしろと言ってるらしい。
俺のような人間はこのクズの集積地から出て生きていけるとは思えない。だからここでしか生きていかないのに、なんで生きる事を諦めさせるようなクソの提案しかしないんだ?
頭が悪いからか。ああ、ごめん。
「死ね」
顔がクソみたいだから誰も俺を雇わない。
ああじゃあ起業しようかな、ダメだなきっと。
俺みたいな他人をすぐに見下してしまうような人間は起業なんかしてもすぐに潰してしまうに決まっている。
俺のようなクズなんて言うのは人の世界で生きていけない。
それは人の世界の方にも責任があるに決まっている。
仕事を探す。落ちる。クソみたいな気分になる。
そういう時に限って警官がやって来る。
クソみたいな気分になる。クソみたいな気分になる。クソみたいな気分になる。クソみたいな気分になる。クソ。クソクソクソ。
「採用! 君みたいな優しい目をした人は大歓迎!」
ようやく採用された。
だけれど、嫌味を言ってきたから此奴は俺の敵。
〈すずき林檎園〉の社長・鈴木公治とかいうクソみたいな根明は俺に従業員の証であるジャンパーを渡してきた。
俺はそれを目の前で地面に落とし、踏みつけた。
なんでそういう事をしたんだ?
こういうことしかできないから嫌われるのに。
でも俺が悪いか? この世の終わりみたいなジャンパーを渡してきたこいつが悪いだろ。そうだよな。俺は何も悪くない。
それなのに、鈴木公治の孫は俺を敵視する。
俺が視界のなかにいると機嫌が悪いような顔をする。
俺も機嫌が悪いよ。お前みたいなカスが視界に入るのは。
直接行動に移すでもなく、言葉にするでなく、ただ「感じてください、察してください」というように自主性のない露悪性を出してくるクソガキは俺も大嫌い。
「岡くん、ちゃんとご飯食べれてる?」
「なぜそれをお前みたいなのに言わなくちゃならないんだ?」
「痩せすぎだもの! 心配になっちゃうな」
「痩せてていけないか? 俺は飯を食うために生きてんじゃない」
「でも食べないと死んじゃうよ」
「俺が死んで困る人間がこの世界にいないのよ」
「お母さんとかお父さんが……」
「いない。父は母を孕まして直ぐに失踪したし、母は俺を殺そうとして顔にこんなに大きな傷をつけたんだ。行く先々で気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い、そう言われて育ってきた。俺は誰にも愛されない。経験則から来る事実だよ。お前だってそうだろうが、お前だって俺のことを気持ち悪いと思って……」
憤怒。憎悪。




