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(破棄)火玉  作者: 椿 木春
人魔大戦、初期前夜
9/67

【SK】敵愾心丸出しクソ野郎は基本的に言って無知

 学校に着いた。日曜日の学校。

 私たちは歩きで校門をくぐり、そして直進で玄関を抜けた。

 運動場には車が沢山並び・・・しかし校舎内に人の気配は無いと言っていい状態だった。

 「わぁ〜・・・・日曜日の学校だぁぁ。」

 楽しそうな雰囲気で、演技混じりに言ってみる。

 「本気で言ってる?」

 「2、3割くらいは。」

 行きしからぶつくさ言っていたショーコちゃんが、楽しくなさそうな真顔で聞き返してきた。だから正直に答えたが・・・。

 これは・・・若干怒ってるな。

 まぁ仕方ないか。

 もとよりこの三連休・・初めは一緒に遠出しようという話だった。しかしそこに適性検査が入り込んだせいで、遠出の計画が頓挫した。

 ショーコちゃんはそれがどうも気に入らなかったらしい。「仕方がない」と、割り切ることができなかったらしい。

 まあ、普通な子どもの・・普通な反応だな。

 私だって楽しみを蔑ろにされた怒りはあるし。ただ違いと言ったら、この事態を素直に受け入れ「られたか」、それとも「られなかったか」なだけで・・・。 

 「こんなの・・何が楽しいの。」

 ショーコちゃんの言う「こんなの」とは、つまり日曜日の学校のこと。もっと言うなら人の居ない校舎内のことか。運動場は明らかに非日常の光景だし。

 今の運動場の光景は、参観日くらいでしか見ない状況だ。いや、参観日で見ることのできる状況と言うべきか。車が沢山並んでいる状況。だからこそあまりワクワクはしない。そう・・ワクワク。

 私は、人の居ない校舎内を知らない。見たことがない。だからこそ、今、私の心は、ワクワクを孕んでいる最中なのだ。

 これが夜であったなら、さらにワクワクしたに違いない。ただし特別感で言うと、昼の方が高い気がする。土日であれど、昼であれば部活動者たちが蔓延っているのだから。

 うん。やはり・・素晴らしい!

 空気が・・・美味しい!・・わけではないけど、でも学校特有の匂いというやつが・・・普段は人が多いせいで気づけない匂いが、鼻の奥に充満する。

 「ショーコちゃんは女の子なんだな。もっと男の子みたいに冒険心を持たないと。」

 「クソ偏見。関係あるか。ジェンダーレスしっかりしろぉ?」

 「多様性とはみんな違ってみんな良いという他者尊敬の心ですぅ〜。平等主義者なんて差別主義者と同義ですぅ〜。」

 「思想強いですねぇ〜。これは初期化しないと治らない病ですかぁぁ??」

 「それは真っ赤っ赤に染まった人たちだけですぅ〜。後、環境活動家とヴィーガンとフェミニストの中にいる過激思想の人たちだけですぅ〜。」

 「コトミちゃんやっぱり思想つお〜い。あ、もしかして選民思想がおありで?ああ!!だとしたらもしかして!!コトミちゃんってオルマラ教の信者?!通じてる?!?!」

 「なわけ。あれは流石に極まりすぎてるから。」

 「いやいや。過激思想の枠組みは一緒だよ。」

 「つまり過激な活動化たちはみんなオルマラ教についちゃうぅぅぅぅ・・・ってことで?」

 「あるんじゃない。似通った精神性は持ってるんだし。」

 「・・・我々は正義!何も間違っていない!我々は正しい行いをしている!これが悪だと言うなら、我々にこの行いをさせているお前たちの方が悪だ!我々がお前たちの悪を正す為に悪に準じているのだ!故に正義!故に我々は正しい!故に!変わらなければならないのはお前たちだ!ってね。」

 「親和性あるじゃん。やっぱコトミちゃん思想つ〜お〜い〜。」

 「まだやるかい?」

 「あ、結構です。」

 「で、どう?楽しくなってきた?」

 「う・・いや・・・っていうか男の子みたいな冒険心を持とうって言われても、私たち女の子じゃん。」

 「ノープロブレム。性別なんて関係ないよ。」

 「ジェンダーレス否定してた人が何言ってんだか。」

 「いやいや。ジェンダーレスそのものは否定してないよ。私が嫌いなのはあくまで認め合いとか平等ってやつだから。」

 「そっすか。」

 「わかってない?説いてやろうか?」

 「うっす。暇つぶしにどうぞ。時間なら・・・まだ30分あるっすからね。あなたが「早く来たい」とか言ったせいで。ね?」

 「ごめんごめんって。でもちょっとワクワクが溢れちゃって。」

 「だとしても30分前って・・・。」

 「まぁ冒険も兼ねてね。それくらいは必要だと思ったから。」

 「そうですか。で、説明は?私に説くんでしょ。」

 「そうだね、つまりね、私的に認め合いと平等は矛盾しるじゃんって話。互いを認め合いましょうっていうのは、嫌いな人間だったり生理的に受け入れがたい人間もその在り方を認めましょうってことでしょ?でもだとしたら、例えばの話だけど生理的に無理な臭いのする生徒が席替えで隣の座席に来たとして。ならどうする?その人の在り方を認めて我慢する?それとも席を変えてもらう?でもそれって隣に来た人を傷つけてしまう行為になるじゃん。でも変えなかったら変えなかったで、今度は自分が不幸を被ることになる。どう転んだって平等にはならない。どちらかが傷つくしかない。そしてネットを通してこの問題を直視した時、認め合いを唱える人間は「例え受け入れがたくてもそれがその子の匂いなんだから受け入れましょう。その子の在り方を認めましょう。」って口にする。挙句それを平等だー・・・なんて言う始末よ。まったくもって不愉快。それだけじゃない。当時ジェンダーレスが掲げられてた時、体は男性だけど心は女性な人の女子トイレ使用が認められたことがあったらしい。けどそれ、どう考えても認め合いじゃないじゃんって。平等ですら無いじゃんって。心が女性で体も女性の意見はどうした。って、まあそういうこと。

    ーーーー略ーーーー

 まだまだ言い足りないけど、まあ今はこれくらいにして・・・語りだしたら30分なんてあっという間だろうし。で、つまりね。基本的に認め合いと平等が成り立つことはない。嫌いな人間は嫌いだし、受け容れられない人間は受け容れられない。そう言った人間に認め合いを求めたら、それはそういった人間に対して我慢しろって言ってることにほかならない。自分の思想なり欲望なりと可哀想な人を優先して、それ以外の人間に自制を求める。まったくもって平等の欠片もない。互いに認め合う心はどうした。自分の思想なり欲望なりと可哀想な人間を優先する奴には、それ以外の人間の声が聞こえないか?・・・ま、そういうこと。わかった?」

 「うん。まあ9割方、右耳から左耳に抜けてったかな。」

 「そっか。・・・意味なかったね!ここでやめて正解だった!無駄話なんて楽しくないもんね!」

 笑ってない笑顔でハキハキと喋ってやった。そしたら同じようにしてショーコちゃんも喋る。

 「そうだね!じゃあせっかくだし遊ぼう!」

 「そうだね!何して遊ぶ?」

 「走ろう!先生もいないし!」

 「そうだね!レッツゴー!」

 「ゴー!」

 「こら!君たち!」

 「わほぉい?!」「おっふ。」

 走り出した途端、教室から先生が飛び出してきた。

 「話し声がしたから誰かと思えば・・・・・。君たち学年と名前は?」

 「2年3組!藤依ふじえ 昇子しょうこ!」

 「同じく2年3組!寸生子すなす 言身ことみであります!」

 ビシッ・・と、二人して敬礼しながら叫んだ。

 大きな声で返事。これ大事ね。敬礼は・・まあフィリデイになるかもしれないから。うん。

 「3組・・ってことは・・・11時からか。・・・なんだ20分近くあるじゃないか。君たち・・・集合時間は厳守するようにと書いてあったろ・・・。」

 「すいません・・・。」「え?」

 「ん?どうした寸生子。」

 「あ、いや・・・・へ〜ソンナコトカイテアッタンダァ〜・・・てへ。」

 「や〜い。コトミちゃんちゃんと読んでないや〜い。」

 「知ってたんなら教えてよ・・・。そしたらちゃんと我慢したのに・・・。」

 「いや無理だよ。私も知らなかったし。」

 「は?」

 「ふぇ?」

 「ピキるよ?」

 「こわぁーい・・・青筋立てないでぇ〜。」

 「いいから君たち・・・・・はぁ・・・。その、あれだ。こういったことは気をつけるように。」

 「「すいません・・・。」」

 「それじゃあ時間まで、そこの教室で自習だな。」

 「え、嫌です。」

 「コトミちゃん(何言っての)?!」

 「でも冒険・・・。」

 「コトミちゃん(諦めろ)・・・。」

 「・・・・わかりました。」

 「はぁ・・・その・・まぁお茶とお菓子持ってきてやるから。」

 「「やたぁ!」」

 「静かに・・はしなくていいな。ただ絶対に3年生校舎の方には行くな。」

 「何かあるんですか?」

 興味なさげにショーコちゃんが聞く。

 いや、無いんなら聞く必要なくない?

 「大事な話し合いの途中なんだ。」

 「話し合い?」

 またしても・・・。

 「・・・適性検査後の対応とか今後の対応方法についてとかのな。」

 ん?あれ?

 「だとしたら陸奥むつ先生はなんで此処に?」

 先生も受ける必要がありありのありだと思うんだけど・・・。

 「説明を受けているのは親だよ。」

 「あ、な〜る。」

 「下ネタ?!」

 「うるさい。」

 「ごめん・・ちゃい?」

 手の平を頭の上に立てウサギのポーズをするショーコちゃん。

 「・・・(冷たい視線)。」

 「あ、無視しないで・・・。」

 「まぁとにかく、静かにする必要は無いがこの教室からは出るな。わかったな。もし俺が帰ってきた時に居なかったらお菓子は無しだ。」

 「わかりました善処します。」

 「バカ、厳守しろ。」

 「てへ。」

 そして陸奥先生は出ていった。

 「残念。結局2年生校舎から出れないね。別校舎行ってみたかったんだけど・・・。」

 「いいじゃんいいじゃん。お菓子だよお菓子。ちょー得した気分。」

 到着時とは打って変わって楽しそうなショーコちゃん。結果的にお菓子に釣られたとは言え、良い気分転換になってくれて本当によかった。

 あのまま家に居たら、適性検査中もぶつくさ言い続けてただろうし。・・・いや、ショーコちゃんに限ってそれは無いか。うん。ないない。だってショーコちゃんだし。私と二人にならない限りそれは無い・・・とは言い切れないか。

 まあ、これで少しは大丈夫だろうと思われる。多分、仲良しな揉め事は起きないと思う。

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