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(破棄)火玉  作者: 椿 木春
人魔大戦、初期前夜
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【SK】兵器として活用するための検査

 今日は日曜日!

 学校はお休み!

 いったいどこに出かけようか?・・・なんて、言ってる場合じゃない。

 フェアリエという謎の生命体が命星エルダに現れてから、約ニヶ月の時間が経った。

 この間にウーラン大陸(地球史で言うとこのアフリカ大陸に似ている大陸。ただしジブラルタル海峡に位置する海洋部分が、地球史よりもだいぶ広い模様。)は壊滅し、そしてウーラン大陸とシグミア大陸を繋ぐ唯一の陸地であるパストポロスディベル・・・そこに建てられた守護壁アムレムスと呼ばれる超分厚くて超高い防壁が突破された。

 そして現在。一番でかい大陸であるシグミア大陸(地球史で言うところのにユーラシア大陸と似ている大陸。ただしユーラシア大陸よりは陸地部分が横に小さめの模様。)の中央部にまで、フェアリエが進出してきていた。

 これのせいで全体陸地面積の三割ほどが失われた。

 さらに失われた土地ってのが結構人口多めの土地だったせいで、難民が凄い溢れた。世界が荒れた。

 まあ世界が荒れた要因はそれだけじゃないけど。

 化け物がその生息範囲を拡げているって・・・終末がすぐそこまで来てるって・・・そういった恐怖とか不安とか焦りとかもありありのあり。

 というかそっちのほうが要因としては・・・どうだろ。難民も難民で、文化の違いから溜まりこけたストレス爆発して結構荒れてたし・・・。

 そんな感じで世界が荒れたけど、それも結局は一時的な話。今じゃすさんでるのは最前線付近くらい?なのかな?そこら辺は知らない。

 さて、そしてだけど、フェアリエが現れてから変わった点は他にもいくつかある。

 そのうちの一つ。徴兵制度。

 今までは戦争なんて一種の外交手段ではあれど、非合理的で非生産的な蛇足的行為として考えられてたから、一応他国に攻められても大丈夫なようにくらいの兵力しか用意してなかった。

 そこに今回の人魔大戦。当然、兵力が必要になる。何せフェアリエは物量でしか押し返せないのだから。

 しかし現状における最大限の物量ですら拮抗状態・・・いや、少し足りてない状態にある。

 さらに最前線では、毎日のようにたくさんの死者が出ているらしい。となれば当然、次々に兵力が必要になるわけで・・・。

 また兵器の生産スピードをさらに上げているらしいから、そのためのプラス分の兵力も欲しい。

 今や世界中で、兵士の育成が進められている。

 ま、徴兵は18歳以上だから、14歳である私には関係ないね!

 そう思っていたところに、世界連合から新たな発表がなされた。

 『決戦兵器フィリデイ』。これの戦線投入。

 現状、戦場に展開できるリソース全てを展開し切ったとしても、戦線維持はギリギリのものとなるらしい。

 さらに犠牲者の増加、資源の枯渇が合わされば、最終的に人類は敗北する。

 それが連合軍隊から上がってきた未来図。世界連合が発表した内容の初め部分。前置き。

 その敗北濃厚な事態を好転させる為に用意された新兵器こそが、『決戦兵器フィリデイ』。

 人間に『強化剤イコル』を打ち込み強化人間化するという代物。つまりは人間兵器になってくれという内容。今回のメイン発表内容。

 そしてこの『決戦兵器フィリデイ』がいかに優れ、いかに安全で、いかに有用かを説くための説明が、この2ヶ月の間で新たに発足された"フェアリエ専門機関"からなされた。

 その内容を私なりに解釈してまとめる。

 現状、人がどれだけ集ろうともフェアリエが優位であることに変わりはない。その理由として、フェアリエの圧倒的な3つの能力が上げられる。

 まず1つ目。身体能力。

 筋力や持久力、柔軟性や耐久性などの、肉体に備わっている能力。すなわち生物の基礎的な能力。

 人間の成人男性、その平均的な身体能力数値を10とした場合フェアリエは70程度に該当する。つまり人間の7倍強い。

 例えをあげれるならば、フェアリエは100メートル走を最速4秒で走り抜ける。また跳躍すれば縦に最大4メートル、横に最大15メートル。握力は370キロ。シャトルランだと上限回数までを苦も無く余裕で突破する。

 それが人とフェアリエとの、身体能力"のみ"の差。

 次に2つ目。運動能力。運動神経と言った方が良いかも。

 いかにして体を動かすか。身体能力をいかに活用できるか。また平衡感覚であったり反応速度であったり。そういった、謂わば肉体の応用技術みたいなもの?かな。

 これも当然の如く人間の上をいく。

 そして3つ目。再生能力。

 これがフェアリエ戦において最も厄介な代物となるそうで。

 なんでも、無から肉体を再構築するようで・・・。ただし限界はある模様。ゲームとかの体力ゲージで考えるのが一番分かりやすいのかな。

 ちゃんと規定値削ってね!それまでは死なないから!つって。

 現実世界だと厄介極まりないな・・・。

 そしてフェアリエは外生命体として・・・さらにその異常な再生能力を元に、"超越生命体"として"超越種"という新たに生み出された種族に分類された。

 詳細は不明。まあ、とにかく凄い種族に分類されたってこと。

 というかそこにはフェアリエしかいないけど。

 当然祖先とかも無しだから、既存の系統樹には当てはまらない。って外生命体だから当然か。

 まったく。宇宙人の系統樹とかあってたまるか!

 いやまて、それはそれで興味が唆る・・・な!

 もしかしてこれから造られてく?!

 フェアリエはその第一号!?

 はっ・・ならばこんなところで終わるわけには!

 頑張れ人類!負けるな人類!

 ・・・と、人任せに言えない立場に立たされている今日このごろ。

 それは今から説明するけど、その前にフィリデイについて。

 強化剤イコルを打ち込むことで為ることができるこの『フィリデイ』は、超越者として、人間の先、超越生命体同様、超越種系列(フェアリエと線で繋がることはない)部分に分類されることになった。

 つまりは人間の進化種。学習と経験による進化ではなく、文字通り肉体そのものの進化。不完全種のまま完成された人間の、その完成版という存在になるということ!

 ・・・正確には『完成版に近づく』、だった。

 そういった存在になるらしいです。はい。

 ロマン溢れるね。ワクワク。

 で、このフィリデイ。フェアリエと同じ超越種として分類されているように、フェアリエに近い能力値を有することができるようになるらしい。

 さらにこのフィリデイは、専用近接武器を持たせることでその真価を発揮する。

 フィリデイ専用近接武器・・・『アルマティ』。フィリデイがこれを用いてフェアリエを攻撃すると、傷口が開きっぱになり、切断面が再生しなくなり、無から肉体を再生できなくなり・・・という現実離れ・・・いや現実として成立した戦闘を行えるようになるらしい。

 ゲーム内だとバランスブレイカー・・・しかし現実であれぱ至極当たり前の、超便利スキル。

 というわけでフェアリエ専門機関様様の発表により、人類に転機が差した。

 眩しいくらいに空が晴れた気分。

 これであれば勝つると、連合軍隊の指揮も上がったのだとか。

 けど最後に、厄介な爆弾が投下される。

 どうもこの強化剤イコル。18歳越えた当たりから唐突に、急激に、順応できない体に成り代わっていくそう。つまり死。圧倒的、死。

 アレルギー疾患の患者がアナフィラキシーショックを起こすように・・・いや、それよりも厄介。一切の対処法がなく、また治療法もなく、7日から10日かけて、順応に失敗したものから次々に死んでいくのだそうで。

 ならば一体、誰がフィリデイと為るんだ!

 ということ向けられました矛先。

 13歳から19歳までの男女の内、適性検査を突破したものに"任意"で、なってもらうそうです。

 ただ保証はされました。仮に君たちが戦場に出ても、一般兵士の様に簡単に殺されることはあり得ないと。

 なにせフィリデイ、フェアリエに近しい能力値を有していますから。

 刃物を持った人間が、それ用に対策した人間を殺すのが難しいように。フェアリエはフィリデイをそう簡単には殺せない。

 また、仮に殺されそうになっても、強化された耐久性と再生能力により問題なく切り抜けられる。

 フィリデイは弱くない。フィリデイは生物として、人間のように外付けの武器ありきではなく、その身ひとつで生態系の頂点に立てるだけの力がある。

 そんな感じで励まされ・・・

 「フィリデイは強い!フィリデイさえいれば我々は負けない!フィリデイは人間に勝利をもたらす、勝利の女神である!」

 私たち子どもはその未熟で幼くひずみだらけの心を、しかしどこまでも真っ直ぐで強さを求め続けるその純粋な精神を、崇高な叫びによって奮い立たされた。

 ま、だからといって勇気を出して踏み出せる者がどれくらいいるのか。

 いや、逆に多いかもしれない。

 何せ現代は平和が主流。

 戦争なんていう蛮族的行為は、現代っ子にとって忘れ去られた遺物的存在。

 どれだけ教育を受けようとも、それを覆すことは難しい。

 ならば、プロパガンダに乗せられ意気揚々と戦場へ出向くことだって無きにしもあらず。

 それが十分にあり得そう。

 平和の代償はそれ程までに、人の精神を侵し尽くしてしまった。

 まあでも人魔大戦の戦場は、既存のどの戦争にも当てはまることがない代物だから。その先にあるのが悲惨な結末か、それとも英雄的な凱旋かは預かり知らぬところ。

 それにまずは適性検査をクリアしないといけない。

 どうも戦場に立てるだけの適正を持つ人間は、そう多くないらしいから。

 そんなわけで、今日は日曜日。

 特別な三連休の真ん中。

 学校は休みだけど、しかし私たちは学校にいる。

 適正検査を受けるために、わざわざやってきた。

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