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(破棄)火玉  作者: 椿 木春
人魔大戦、初期前夜
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【Û】人魔大戦の始まり。その1

 『2115年10月5日。

 ・・・ウーラン大陸最南部にある小国にて、未確認生物が確認された。それからたった1日で死者数は10万人を超え、翌日には不確定であるものの500万人を超えたと記されていた。


 同年、10月7日。

 ・・・未確認生物の確認から2日後。ネットに上げられた動画が、瞬く間に全世界へと広がった。私が知ったのも、このときだったはず。朝起きてテレビを付けたら、既に映像が流れてた。多分私が寝ている間に広がったのかな?ものすごく怖かった・・・と思う。


 同日、朝。3つの大国が静観を貫く中、7つの国が出動させていた軍隊がウーラン大陸へと現着。これで解決するかに思われたけど、同日、深夜。7ヵ国が派遣した軍隊が壊滅。私はそれを、翌日の朝に知ることとなる。


 同年、10月9日。

 ・・・急遽開かれた国際会議にて、3つの大国を含む50以上の国々が、8つのグループに別れて連合軍隊を編成。同日の内に第一陣がウーラン大陸へと現着。続く第二陣以降も順次現着。これによりようやく、人間対化け物の構図が明確になった。


 戦闘開始1日目。

 ・・・人間側は大陸を分断する防衛線を引き、化け物たちを迎え撃った。

 戦闘が始まって分かった、化け物共の戦闘方法。それは至ってシンプルだった。

 化け物共は、生物として異常な程の、圧倒的な、再生能力。運動能力。身体能力。この3つを有しており、この全てをフルに活かした、特攻。即ち直進。何があろうと、どんな攻撃が飛んでこようと、それを無視した全力疾走。それだけだった。

 まさしく餌に群がる蟻ん子の様に、目印に向かってただ突き進むだけの生命体。それが、化け物共の戦闘方法。

 だからこそ大量の大型爆撃機が、爆弾の雨を作り敵地一帯を焼き払う。大量のミサイルが、降り注ぐ雷の如く広大な大地を削り続ける。人の動かす機械たちが、無慈悲に全てを打ち砕く。

 大量に消費した鉄と火薬により、一時的に化け物共の侵攻が止まった。

 これのおかげで、世界全体が一瞬にして安堵に包まれ、人々は心の平穏を得た。

 戦闘開始2日目。

 ・・・前日の23時台から翌日の4時前までパタリと止んでいた戦闘が、明け方から再び始まった。しかし続く圧倒的な物量と質量の侵攻を前に、一部防衛線が崩壊した。それを皮切りに、全戦線が次々と崩壊していく。残った連合軍隊は、第一、第二の防衛線を捨てざるをえない状況に追い込まれ、第三防衛線まで後退することとなった。ここを突破されれば、ウーラン大陸からシグミア大陸へと化け物が流れ込んでしまう。そうなれば残るは最終防衛線のみ。

 最終防衛線はウーラン大陸からシグミア大陸へと渡った玄関口に敷かれている。ここは二大陸が唯一陸上で繋がっている場所であり、二大陸間に繋がれた橋はすべて壊されたために、海を渡れない化け物共の唯一の通り道となっている。そしてそこには人間総出で作られた大壁がそびえたっていた。

 ・・・死にたくないという、みんなの想いが一つになって作られた、人間の守り手。人々はそれを、『守護壁アムレムス』と名付けた。

 戦闘開始3日目。

 ・・・第三防衛線は、第一、第二と比べて範囲が狭い。故に連合軍隊の火力をより集中できる。それはつまり防御が硬くなるということだ。

 されども、その第三防衛線もすぐに突破されるだろうと誰しもがそう思っていた。現実を知る者たちは人の手に期待を寄せず、守護壁アムレムスの可能性にのみ期待を寄せていた。

 しかし。とある組織が介入したことで、一時的に戦闘状況が好転した。

 組織の名前は『TAIO』。

 正式名称、『"Transcends All Indicators" Organization"』

『 "全ての指標を超越する" 機関』と呼ばれるその組織は、明確な実体があるわけではなく、ありとあらゆる研究に携わる、複数の人間達によって構成された天才達の集団らしい。

 この組織は、かつての存在していたらしい始まりの惑星。地球史時代?から受け継がれている組織だそうで、掲げていた大まかな指標としては、人類の進化や自然法則の利用。宇宙の神秘解明や、果ては非科学分野の研究なんかもあった。

 そんな訳の分からない組織が、秘密裏に世界中の政府高官と世界連合に、「フェアリエ共を倒せるようになる方法がある。」と掛け合い、その内容が認可されていた。

 早速実施されたその内容は、一定数の兵士に強化剤イコルと呼ばれる謎の液体を打ち込み、専用の近接武器アルマティを与えるというだけのもの。一見してもまるで意味のわからない内容であり、更に、聞けば聞くほどに謎が深まっていく内容でもある。

 まず強化剤イコルを打ち込まれた人間は、体力や筋力などが大幅に向上。更に再生能力も人並み外れたものとなり、訓練次第で運動能力すらも圧倒的なものとなる。

 つまりフェアリエが持つ異次元の能力。これに人の身で近づいた状態となり、並の人間では不可能だった対フェアリエとの近接戦闘を可能にするということだ。

 そこに対フェアリエ専用近接武器を持たせることで、この近接武器の持つ効果を最大限利用できる。

 対フェアリエ専用近接武器。この武器でフェアリエを攻撃すると、奴らはそれで欠損、又は抉られた部位を"再生できなくなる"。

 ただしその原理は一切明かされていない。そしてTAI機関がなぜそんな武器を作れたのか、更にTAI機関という組織が存在していたことすら、世界が崩壊する最後の時まで一切、明確化されることはなかった。


 戦闘開始4日目。

 ・・・81839本の対フェアリエ専用近接武器と、人体強化実験の被験者となった50833人の兵士達の活躍もあり、範囲の狭い第三防衛線の守りは堅実なものとなっていた。


 戦闘開始5日目。

 ・・・更に25561人の強化人間が追加され、連合軍隊は前線の押し上げを視野に入れ始めていた。

 

 戦闘開始11日目。同年、10月20日。

 ・・・強化剤を打たれてから7日経った兵士達が、次々と死んでいく。体のいたる部位が膨張し、破裂し。皮膚が爛れて血肉が飛び散り。人の姿とは似ても似つかぬ程の損傷具合と為って、死んでいく。

 しかしそれを正式に報道する国は存在せず、噂の範囲でしか、世界中への広がりを見せなかった。


 戦闘開始19日目。同年、10月28日。

 ・・・20日以降、本末転倒の行為に逃げ出すものが増え続けいる。

 しかしそれでも、と、覚悟を決めて。家族の為、友の為。守るべき命を守る為に、人生という花道を赤く染め続ける者達も多くいた。

 そのかいあってこの8日間はなんとか耐え忍んだが、最早防衛の要である強化人間の全体数が足りず。更に今尚その数を増やし続けるフェアリエの大群を前に、ついぞ虚しく。第三防衛線は崩壊することとなった。


 同年、10月30日。

 ・・・既に撤退の準備を進めていた連合軍隊は、強化人間という殿役の活躍もあり、一人の犠牲者も出すことなく最終防衛線までの後退を完了。

 残ることを選んだ強化人間たちも、ウーラン大陸とシグミア大陸の境界線上に集結したことで、ウーラン大陸からは完全に人が消えた。書類上では。   』

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