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17.私を呼ぶ八百万の声

 【テルラミア大陸】・・・それは【命星エルダ】において、最も広大な陸地を有する大陸だ。だがその大陸の半分に及ぶ陸地を、人間は失ってしまった。

 かつて、【デトメスタ大陸】南東部に溢れた【フェアリエ】という名の化け物は、たった4ヶ月という短い期間でこの大陸から人間を消し去った。そしてデトメスタ大陸からテルラミア大陸へと流れ込んだフェアリエと対峙する為、人々は【カスピ海】を挟み、【テルラマグナ戦線】と【サミア戦線】と呼ばれる二つの戦線を構築。デトメスタ大陸とテルラミア大陸を陸地で繋ぐ【パストポロスディベル】と呼ばれる地点から扇状に広がりながら侵攻してくるフェアリエを、この二つの戦線にて迎え撃っていた。

 『フェアリエ戦争の戦況は、順調。”このまま何事もなければ”、あと4、5年で、フェアリエの殲滅も完了されるだろう。』・・・それが、人間たちの見解だった。しかしとはいえ、事態はいつだって急変するもの。起こる可能性がある最悪はいつ起きてもおかしくはなく、そしてまだ4、5年という猶予が残されている。・・・これを受け、複数の国が【世界連合】にて、「サミア戦線、又は、テルラマグナ戦線が、フェアリエに突破された際の次なる防波堤として、『絶対に突破されない強固で堅牢な防壁』の建築」を提案。そしてこれが全会一致で承認。加え、【フェアリエ専門機関】が開発した【守護壁クストース】の使用も決定。【世界連合臨時政府機関『WUPG』】と【フェアリエ専門機関】主導の下、人間の守り手たる【大陸横断防壁基地】が、二箇所に作られていた。

 大陸横断防壁基地・・・・それは、『”泳げない”とされるフェアリエの侵攻を阻止、あるいは遅延させる為の巨大な人工河川』と、『人工河川によるフェアリエ侵攻の阻止に失敗した際に余力を持って迎え撃てるだけの平地』と、『守護壁クストースと呼ばれる”特別な材質”の壁によって作られた防壁』と、『フェアリエに対応する為のあらゆる施設が建てられた基地』からなっている。それが大陸の分断するかのように、大陸の端から端までを繋いでいる。

 これは、サミア及びテルラマグナ戦線が突破された際に、次なる主戦場としてフェアリエの迎え撃つに適していた場所を利用し建てられた防壁基地であり、フィリデイや兵士がサミア及びテルラマグナ戦線にて奮闘している最中に完成された防壁基地でもある。

 そして今は、この防壁基地戦闘区域の正面玄関口・・・即ち人工河川が流れている箇所が最前線となっており、今後一切、これを越えての”生身の人間による進行”は、原則として完全に禁止された。

 要は、【フィリデイ】を用いた、あるいは現在開発途中にある【対フェアリエ用の新兵器】を用いた作戦以外では、戦線の押し上げは行わないということだ。


 ーーーーーーー


 言身と昇子は、許可をもらって防壁の上に昇ってきた。

 「ふぃ〜・・楽ちん楽ちん。エレベーターあって良かったぁ。階段ならコトミちゃん背負わないとだったしぃ〜。」

 ・・・おいおい。私の介護をしてくれるんじゃなかったのかい?

 ーーー風が吹いて髪がなびく。

 「けっこー伸びた?・・・切る?」

 「ん〜・・・いっかな、別に。くくればいいし・・・。」

 「私、別に苦じゃないよ?」

 「ん?・・・うん。」

 「・・・まあいいや。それじゃ、必要になったら言って。また切ってあげるから。」

 「・・・うん。お願い。」

 ーーーまた、風が吹いた。

 ・・・やっぱ高いとこは風がよく通るな〜。

 今は昼前。ちょっとでも気持ちのよい場所でお弁当を食べようと、私たちはここにやってきたーーーー。

 「・・・静かだね。」

 西側の景色を眺めながら口を開く。

 いつもならフェアリエをバッタバッタと薙ぎ倒している最中だけど、今は何もしていない。それで少しソワソワとする。落ち着かない。だけどそれ以上に・・・・。

 「なんか、悲しいね。」

 より戦いやすい戦場とする為に均された大地には、所々に小さく緑が見えるが、それらは全て最近生えてきたもの。草木と呼べる緑なんて一つもなくて、だから風が吹いても深呼吸したくなる程の匂いはしない。むしろ少し臭くて鼻につく。

 一度でも戦場になった場所は、人工物であれ自然物であれ壊され均される。かつての面影なんて一切残らない。それがとても・・・・。

 「寂しい、でしょ?」

 「うん。寂しくて悲しい。」

 「わかんないな〜。別にここに有る必要は無いじゃん。」

 「わかってる。けど・・・・・」

 確かに・・そう。例え破壊しようと、水と太陽の光がある限り、自然は再生する力を持っている。だから別にいくら破壊したって、別の場所で生い茂るなら何も気にする必要はない。

 きっとデトメス大陸も、今や動植物が跋扈ばっこする自然の宝庫になっているに違いない。・・・・例えば、そう。昔テレビで見た、放射能によって人の立ち入りが禁じられた土地のように・・・・。

 それに星は命を必要としていない。・・・命を必要としてるのは命ある生き物だけ。

 環境保護を・・命の大切さを謳う人がこの世には多くいるけど、その大抵は、醜い自分を否定する為、あるいは欲求を満たす為の建前としてしか、それを謳っていない。

 実際に「自然の存在が不必要である」という価値観が当たり前になった時、きっと9割以上の人が環境についてを語らなくなる。本当に自然が好きな人・・あるいは博愛主義の人だけが環境保護を謳う、その程度のさじと成り下がってしまう。

 結局のところ人間はみんな醜い。どれだけ美しく着飾っても、その大抵はエゴしかない。

 「あれを守ろう。これを守ろう。だってみんな命ある生き物なんだから。」・・・そう言って、誰しもが命に線引きを行う。

 「何かを守る」は「何かを犠牲にする」同義。なのに人は、何故か平等を謳う。

 ・・・自然を守ろう?・・・じゃあ自然を切り裂いて今日を生きてる人はどうすればいい?

 ・・・食べられる動物が可哀想?・・・じゃあ遊牧民はどう生きればいい?

 何かを変えたいなら、まず変えられた先で苦労する人を救うのが先じゃないの?「変えよう!」って息巻くのは自由だけど、それを実行に移す前にやらなくちゃいけないことがあるでしょ?

 なんでみんな「命は大切だ。平等だ。」って言いながら命に線引きを行うの?

 ・・・私たち、頑張る意味あった?・・・そんな人たちを守る為に、ミトちゃんは死んじゃったの?

 結局ところこの世界はそうなってしまったのだ。・・・人類の存続を守る為、不必要なモノに人は声を上げなくなったのだ。・・・きっとこの均された大地を見ても、人々はただ俯いて、静かに背をけるだけ。

 それに堪らなく苛立ちを覚える。

 ・・・本当に悲しい。・・・憎い。・・・悔しい。

 「・・・・いや、なんで?」

 「・・・ん?なにが?」

 私から湧き出た感情の筈なのに、何故かとても違和感があった。

 「・・・どしたの?」

 「いや・・・なんて言えばいいんだろ。」・・・まるで自分が自分じゃないみたいな・・・・。

 「・・・・ん?」

 「・・・なんかわかんないけど変な感じで・・・。」

 「病院戻る?」

 「んや・・いい。」・・・なんか戻りたくない。

 「いっそのこと逃げちゃう?」

 「どこに?」

 「どっか?」

 「なんで疑問符ついてるの?わからなくても確信持って答えてよ。」

 「あれ、怒ってる?なんで?」

 「いや怒ってないよ?」

 「でも口調強い・・・・。」

 「・・・そう?」

 「・・・うん。・・・なんていうか・・コトミちゃんなのはわかるんだけど・・・お前誰?って言いたくもなるような感じ・・・。」

 「別人に見える?」

 「んや・・・・いや、どうだろ。なんか変・・な感じ。」

 「・・・そっか。」

 「やっぱ病院戻らない?」

 「意外。ショーコちゃんがそれ言うんだ。」

 「うん。私も驚いてる。でも、これは診てもらった方が絶対いい。お願い。」

 ・・・・怯えてる。・・・混乱して、困惑して・・・・「何処にも行かないで。」「私のコトミちゃんを返して。」・・って叫んでる。・・・なんでわかるんだろ。

 「うん。わかった。戻ろう。」

 「・・・うん。」

 

 ーーーー昔、誰かに言われたことがある。・・・「命は平等に無価値だよ。」って。

 私はそれを聞いて、ものすごく納得感を抱いた。

 人それぞれに、感じる命の重みが違う理由を知った。

 命の価値なんてのは後付けでしかなくて、だから人はこうも残酷になれるんだと知った。

 そして始めて、私は博愛の心を捨てる事が出来た。

 誰かを愛せば、誰かを愛さないことになる。その矛盾を捨て去ることができた。

 私はみんなが好きだ。命が大切であると知っている。だから私は、全て捨てることにした・・・筈なんだけどな・・・・。

 結局は私も、そこらにいるただの人間でしか無かった。

 心が回復するにつれてそれを知ってしまい、だから壊れたままでいいと思った。壊れたまま、ただ君に縋り付いて生きようと決めたーーーー。

 

 「・・・無価値って・・なら私・・生きてる意味ないの?」

 「そうじゃない。無価値とは、即ち自由だ。・・・例えば君に野球の才能があったとしよう。・・・それを知った周囲は当然、君に野球選手という付加価値をつける。そしたら君は、野球選手しか道がなくなる。多くの人にとって、価値は生きる意味そのものだからね。・・・もちろん、君が心の底から野球を楽しめるなら、その道を進めばいい。だがパティシエになりたいと願った場合、他者に付けられた付加価値が君の選択の邪魔をする。・・・君はパティシエになりたいが、野球をしない君に周囲は価値を見出さない。あげくパティシエで失敗すれば、散々に君の人生を否定するだろう。誰かはそんな未来を恐れて、パティシエという夢を捨てざるを得なくなる。・・・とはいえさっきも言ったが、価値とは多くの人にとっての生きる意味だ。例え夢を捨てようと、『私は何のために生きているんだろう』・・って迷った時に、周囲からの評価という価値が君の存在を肯定してくれ。・・・野球選手であれば、君は、『周囲から認められている。誰かの役に立てている。こんな私を見てくれている人がいるんだ。』・・って、自己肯定感がさぞ高まることだろう。そしたら生きている実感が湧くはずだ。それに大きな価値を得て役目を終えてしまえば、その後は自由にできる。・・・夢を捨てたとは言え、周囲の期待に答え、多くの人に認められ、最後には自由気ままに生きられる。・・・きっと順風満帆に生きれることだろう。・・・だが実際、他者から、自分が納得できるだけの付加価値を得られる人間なんて言うのは、全体の1パーセントにも満たない。・・・大抵の人間は、そこらにいる一般人と大して変わらない。そのくせ何故か順風満帆な人間を見て、あの人のようにみんなに認められたいと価値を求め、他者の評価ばかり気にして、あげく価値を求め過ぎるあまり『自らがどうあるべきか』ばかりを気にする。・・・この時代、学生自分が悩むのも仕方のないことだ。・・・大人は子に、『人はそれぞれに価値がある』と教え、そのくせ論理的な答えは出さず本人の感覚だより。結果、子は価値を求め、答えを得られぬままに自らを束縛し続ける。『自分はどう生きるべきか。』『自分はどう在るべきか。』『自分は何を成せばいいのか。』・・とな。・・・『束縛なんてされたくない。俺は自由だ。』という者でさえ、結局は束縛されていない自分というレッテルにしがみついているだけ。『自分がどうあるべきか。こうあるべきじゃないのか?』なんて考えた瞬間、人は不自由にしか生きれなくなる。・・・すまない。少し話が逸れだしたな。」

 「いい。」

 「そうか。まあ、戻そう。・・・本当の自由は、無価値であること。無価値な君に人は期待しない。だがそれは、生きる価値がないというわけではない。生きるも死ぬも自由というだけだ。・・・生きたきゃ生きればいい。死にたくなったら死ねばいい。目玉焼きにソースをかけて、次の日は塩をかけて・・・そうやって全てを好きにすればいい。『価値』とは即ち、『こうあるべき』という束縛だ。とてもナンセンスだとは思わないか?」

 「でも・・・それじゃ迷惑かけるかも・・・。」

 「君は優しいな。・・・そして賢い。その年とあの家庭環境でここまで成長したのは、ハッキリ言って異常だよ。」

 「・・・異常・・・・。」

 「悪い意味ではない。仮に『世界を良くしたい』と願う神がいれば、かの者は君を選ぶことだろう。君にはそれだけの価値がある。」

 「・・・価値・・・・。」

 「ああ、価値だ。・・・だが今、神はいない。君もまだ、選ばれていない。そして価値に沿って生きられるだけの力もない。とはいえ君がそのままであれば、いずれ人は、君を『優しい子』と決めつけるだろう。君に『優しい人間』という付加価値をつけるだろう。・・・その上で言わせてもらう。・・・人は、罪悪感があるから人に優しくなれる。・・・・だが、罪悪感は心を蝕んでしまう。だから優しい人間は誰も彼もが死を望む。・・・本当に、残酷なまでに過酷な運命だ。・・・さて、君はどうする?」

 「・・・・・私は・・・・ーーーーー」

 

 ーーーーー結局、答えは決まっていた筈なのに、あの人に対しては何も答えが出せなかった。

 ・・・なんでだろう。

 懐かしい夢から覚めて、ゆっくりと目を開く。

 こういった事があると、どうしても、何か意味があるんじゃないかと考えてしまう。けれどいつも、何事も無い時間だけが過ぎていく。

 夢はただの夢。夢枕に立つなんて言葉があるけど、それがもたらす幸運だったり特別な何かだったりは、占いと同じ。バーナム効果とかプラシーボ効果とか・・要は心理的な暗示で勝手に思い込んでそうなっただけで、実際にオカルト現象が起きたわけじゃない。

 まあでも思い込みで幸福になれるのなら、それはそれで気楽だ。だって馬鹿みたいに悩む必要も無くなる。・・・ま、だから私には程遠い人生だーーーー。

 「・・・あ、起きてる。おはよぉ〜。」

 「・・・ん、はよ。」

 「・・・大丈夫そ?」

 「まあ。・・・違和感は無くなったかな。ショーコちゃん的には?」

 「いつもの感じに戻った!」

 「というか凄いね私たち。言葉がなくても雰囲気で分かっちゃうなんて。」

 「ヒヨクレンリってやつだよ。私たちは繋がってるの。心も、体も。」

 「心はそうかもだけど体は・・・・あぁ・・そういう。」

 「そうそう。繋がってる。」

 「まあ確かにそうとも言えるけど・・・・・」

 「言えるけど?」

 「比翼の鳥みたいに物理的にではないなって。」

 「ヒヨクの・・鳥?」

 「え?」

 「ん?」

 「えぇ・・。」

 「ん?」

 「・・・まあいっか。」

 「ん?」

 「それで?検査結果の方は?」

 「まだ聞いてないよ?」

 「・・・そうなんだ。意外。」

 「意外じゃないでしょ。一緒に、ね?」

 「てっきり私より私のこと知ってるムーブかますのかと思ってた。」

 「・・・確かに。それもいいね!」

 「残念だけど、次はないね。」

 「いや、いつか絶対やる。だってコトミちゃんだもん。」

 「そんな・・・まるで私が鈍臭い馬鹿みたいに・・・。」

 「・・・・それ、あながち間違って無くない?」

 「・・・え゛っ?」

 「いやだってコトミちゃんって、そこそこ賢いくせによく迷ってばっかだし、決めたと思えば馬鹿とおんなじ方向にしか進まないし。」

 「・・・え゛ッ?!」

 「ほら、第八での最後の日だって、ちょっと考えれば別の方法もあったかもしれないのに、時間がないからって勝手に殿役買ったじゃん。」

 「それは・・・」

 「あげく自分が決めたんだからって誰よりも頑張ろうって奮闘して、でも結局やられてさ。・・・やっぱ鈍臭くて馬鹿だよ。大して強くもないくせに誰かを助けようって頑張って、人のこと普段はどうでもいいって感じなのに、困ってる人がいたら無視できなくて気になってばっかでさ。・・・器用で賢いんなら、もっと私の為に生きてよ。私だけ見て、私に縛られて生きてよ。他の誰かなんて簡単に無視して私を優先して守ってよ・・・・。そしたらこんな事ならずに済んだのに・・・・。」

 「・・・ごめん。」

 「私嫌だよ。・・・もっと一緒に歩きたいのに・・・これじゃ手もつなげないよ・・・・・。」

 「それは・・私が回せばなんとか・・・」

 「顔だって見れない。」

 「フクロウになれば・・・」

 「・・・ねぇ、真面目に聞いて?」

 「・・・・あ、ごめん。」

 「一度死ねば治るのかな。」

 「へ?」

 久しぶりに見た。これ、ガチのやつだ。表情見えないせいでやっちゃった。

 「フィリデイって特別だしさ。死んで生き返るんじゃない?そしたら全部直ってるかも。」

 言って首に手が添えられる。

 「・・・あの・・ぅく゛ッ・・・かぁッ・・・・」

 「抵抗しないの?」

 まぁ、ショーコちゃんの手で終われるのなら・・・。

 「なんでそんな顔してるの?」

 どんな顔の事だろ・・・。わかんないや・・・。

 「なんかもう・・いいかな・・・・。」

 酷く冷たく平坦とした声を最後に、意識が浮遊感を覚え始めた。そして身体が勝手に藻掻き始める。

 ・・・いつもなら終わるのに・・・まだ・・・・・・・あれ、これ・・・・ヤバい・・・。・・・・ホントに・・・・・・・。

 「死にたくない」と感じて、気づいたら昇子ちゃんの手首を掴んでいた。

 「あれ、今さら抵抗するの?でも力、全然入ってないよ?」

 助゛け゛て゛・・・苦゛し゛い゛・・・・し゛ぬ゛・・・・ほ゛ん゛と゛に゛・・・・・・・。

 「辛い?苦しい?これで私の気持ち分かった?」

 ・・・わ゛か゛っ゛た゛か゛ら゛!!

 「・・・もしかして気持ちぃ?腰で必死に私を持ち上げようとしてさぁ?・・・あれ?っていかもう意識・・・ああそっか。私フィリデイになって力強くなったから・・・完全に絞まってるね。ケイドウミャク?だっけ。あと気道も。・・・私の指、しっかりと食い込んでるよ。・・・・そういえばだいぶ肉ついたよね、コトミちゃん。昔はあんなに細かったのに・・・。フフ、思い出したら・・・ホントに気持ち悪い体だったな・・・・。・・・私たち、なんで仲良くなったんだっけ・・・・・。まあいっか。今幸せだし。・・・・あっ、人工呼吸しないと。・・・・なんかエッチィね。」

 意識が飛びかけたところで食い込んだ指が離れ、全力で息を吸い込む。けど押さえ込まれ潰された気道は少ししか開かず、苦しさから解放されることはない。

 とはいえようやく呼吸ができて、チカチカフワフワゾクゾクとしていた真っ白な頭の中が、少しずつ色を取り戻していく。

 「まだ起きてたんだ。・・・まあいっか。人工呼吸してあげる。」

 ぼやけたままで霞む視界の中、昇子ちゃんの顔が迫り、鼻をつままれ接吻せっぷんを受ける。

 さっきの息苦しさはまだ残っているし、痙攣を起こしているのか・・手足に上手く力が入らない。・・・そんな中で彼女の息が肺に充満して、今度は私の息が彼女の肺に充満して・・・・そうやってお互いが持つ空気だけで呼吸をした。

 ーーーー数分経つと耳鳴りが始まって、頭痛と目まいに襲われて、そして息苦しくなる。さらにいくら息を吸っても息苦しさから解放されなくて、頭が混乱し始める。

 彼女の顔に手を当て「離れて。」と懇願するが、力の入らない手では彼女を押しのける事ができなかった。

 チカチカと視界が飛び始めて、フワフワと身体が浮き始める。とても苦しくて痛くて辛いのに、お腹がジンと熱くなって、ゾクゾクとした悪寒が背筋を昇る。・・・そして気づく間もなく、スッ・・っと意識が飛んだ。

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