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番外①〜招集〜

※視点が変わりますのでご注意ください。


サラマンドには数あるギルドを取りまとめるレギオンと呼ばれる組織が存在する。


レギオンは国王の手足となり任務を全うする組織で、その力は強大かつ非情である。


四つのレギオンで構成され、それぞれ東西南北に管轄エリアを分けサラマンド王国の治安を維持している。


円卓の騎士(ラウンド・テーブル)』代理出席・クリストファー・キャンベル。

神の息吹(グレイス・ヴェール)』グレゴリー・ゴードン。

神焔の駒(インフェルノ)』ゼノン・ゼルツァード。

聖火(セイクリッドファイア)』ヴィゴー・ヴェルブレイズ。


リーダーたちが一堂に会していた。


錚々たる顔ぶれに室内の緊張感が高まる。


「オンディーヌの動きはどうなっている?」

「国境付近は静寂を保っている。向こうはあくまで様子を見ているだけのようだ。オンディーヌらしいといえばそうなのだが」


グレゴリーは豪快に笑う。


軍服が破れんばかりの胸板に鍛え上げられた腕の筋肉。それらが他より一回り体が大きいその姿を更に強調している。


堂々とした態度からは自信が溢れ、威圧感を与える。


「こちらが隙を見せるわけにはいかない。国境付近の人員を増やし、いつでも動けるよう準備しておくのだ」

「ということは・・・」

「ふ。そういうことだ」

「承知した」


ヴィゴーの言葉にグレゴリーはニヤリと笑う。


「ワシらも準備を整えた方が良さそうじゃな」


黙していたゼノンは長く伸びた自慢の髭を撫でる。


「ああ。『神焔の駒(インフェルノ)』管轄の南エリアだけでなく、北の『聖火(セイクリッドファイア)』と東の『円卓の騎士(ラウンド・テーブル)』からも兵を送るつもりだ」

「これはこれは。大事になりそうじゃ」


黙って話を聞いていた爽やかな好青年クリストファーが静かに手を上げる。


「話し合いで解決できないのでしょうか。戦争など憎悪と悲しみ以外の何も生まない・・・」

「分かっていないようだなクリストファー。父上は話し合いで解決する気など毛頭ないのだよ」

「なっ?! まさか戦争を起こそうと言うのですか?!」


ヴィゴーの不気味な笑みにクリストファーの額に汗が滲む。


「反対です! どのような形であれ戦争を仕掛けるなど許されない! ウェンディ様も同じことを仰るはずだ!」

「大局が見えていないようだな。目的はオンディーヌを落とすことではない。その先にある」

「その先・・・」

「オンディーヌを落とした暁にはシルフィード、ノームズをも手中に収め、世界をサラマンドの領地とするのだ。この世界は元々一つだったと聞く。であるならば、国を再び一つに統一する事は自然な事だ」

「・・・本気で言っているのですか。国王は世界を敵に回すおつもりか」


ゼノンの乾いた笑い声が響く。


「お主も若いのぅ。そんな平和ボケした考えではとても国は守れん。これは自国の最大にして唯一の防御策とも言えるのだ。もっとも、あの女がリーダーなら下が育たんのも納得だが」


その言葉にクリストファーの表情が一変する。


「ウェンディ様は我ら『円卓の騎士(ラウンド・テーブル)』の誇り。あのお方は誰よりもこの国の未来を憂いておられる。侮辱すると言うのなら見過ごせない」

「儂は事実を言ったまでじゃよ。そもそも命令を無視した勝手な行動や、会議にも出席しない等、リーダーとしての責務も全うできんような女じゃ。『円卓の騎士(ラウンド・テーブル)』の底もしれとる」

「ウェンディ様は常に未来を見据えて行動していらっしゃる。あのお方の考えは我々には到底理解できないでしょう」

「ふん。そもそも話し合いなんぞで解決するなら五百年も睨み合っておらんわ。そんな温い考えでは真っ先にあの世行きじゃよ。まあ、役に立たずとも盾くらいにはなるじゃろうが」

「貴様!」


突如、身動きが取れないほどの重圧が昂る二人にのしかかった。


二人は思わず息を呑む。


「そこまでだ。今は下らない喧嘩をしている場合ではない。ウェンディの身勝手な行動にはいささか腹が立つが、この場にいない人間の話をしても仕方がなかろう。奴にはその分の働きはしてもらう」

「ヴィゴーの言う通りだ。我らはサラマンドが世界を束ねる理想のために存在している国の意志そのもの。理想を実現するためにも先ずは目の前の事に集中すべきだ。いつでも戦闘態勢に入れるようにな。でないとオンディーヌに足元を掬われるぞ」


グレゴリーの言葉でプレッシャーが解かれた二人は安堵の息を漏らす。


「しかし、レギオンを国境に集中させるとは国王も思い切った策を決断したものだな」

「本丸であるサラマンド城にはユリウス様がおられる。後方の憂いはない」

「それもそうだ」


ヴィゴーは静かに席を立つ。


「作戦の詳細は追って知らせる。各自レギオン・ギルドメンバーに通達しいつでも動けるように身支度を整えておけ」


三人が会議室を出ていくのを見送ると、ヴィゴーは窓の外に目をやった。


「リーダーが板についてきたなヴィゴー」


ドアにもたれかかるようにユリウスが立っていた。


「いえ。ユリウス様のようにはいきません。譲っていただいたリーダーの座。『聖火(セイクリッドファイア)』の名に恥じぬ働きを心がけてはいるのですが」

「あまり気負うな。お前はよくやっているさ。世界を統べるという王の悲願を達成するためにもミスは許されない。だが、お前なら貢献できると信じている」

「ヴィンセントではお前のようにはいかなかっただろう」


ヴィゴーの眉がピクリと動く。


「あんな出来損ないとは比べられたくもないですね。兄上は我が一族の恥晒し。やはりあの場で殺しておくべきだったのかもしれません」

「この世界で階級の保証がないということは死んでいるのと同じだ。彼の場合、考えようによってはエレメントよりも価値がない。居てもいなくても変わらない」

「・・・だといいのですが」


ユリウスはヴィゴーの肩を軽く叩いた。


「お前の活躍を期待している」


そう言い残し部屋を出ていくユリウスの背中を真っ直ぐ見つめるヴィゴー。


「必ずや、父上とユリウス様の期待に応えてみせます」


ヴィゴーの思いに反するように外は厚い雲に覆われていた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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