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最強の最底辺魔導士〜どうやらGは伝説の方だったらしい〜  作者: SSS


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第31話 楽園を前に


「早く戻ってください。あなたが顕現している間も私の魔力は消費されているのですよ」

『ピィ〜♪』


うぅ、まだ目が回ってる。


なんでこの緑の球体はこんなご機嫌なのか分からん。


全く心当たりがないのだが。


「・・・分かりました。そちらがその気ならこちらにも考えがあります」


女性はおもむろに魔導書(グリモワール)を出現させた。


真っ赤な魔導書(グリモワール)の周りを古代文字が螺旋を描くようにゆっくりと回っている。


サモナーの持つグリモワールだからか、普通の魔導士のそれと少し違う。


神秘的というか、どこか不思議なオーラがある。


『ピ?!』


球体は短い悲鳴のような声をあげ、急に俺の肩を離れ女性の方へ真っ直ぐ飛んでいくと、彼女の横に出現した小さな裂け目の中へ消えていった。


「手のかかる子ですね」


女性は何事もなかったかのように俺たちの前に立った。


「き、君は?」

「申し遅れました。私はシルヴァーナ・スタンレー。Bランクの中級魔導士(ソーサラー)です」


女性は機械的な涼しい表情はそのままに、長い髪で顔が隠れるくらい頭を垂れた。


表情こそ乏しいが、透き通った声はしっかりと聞き取れた。


しかし、せっかく自己紹介してくれたのに申し訳ないが目のやり場に困る。


その魅惑的なボディラインはもちろんなのだが、何と言っても胸元が大きく開いたその服装。


男ならガン見不可避だ。


「俺はヴィンセント・ヴェルブレイズ。サラマンド王国の()王子だ」

「サラマンドの」


シルヴァーナは驚くこともなく、表情も変わらない。


「ああ、今は全く関係ない。それよりシルヴァーナ。君は・・・」


話を遮るようにフランとローズが立ち塞がった。


「残念ですがこれ以上わたくしの旦那様を誘惑することは許しませんわよ」

「あんたの旦那にした覚えはないけどその通りよ!」


突然、電撃が走ったように右足に激痛が走った。


「いってぇ?!」


たまらず前屈みになる。


汗が止まらない。


キョトンとするローズと、その横でニヤリと笑い見下すフラン。


こいつワザと俺の足を踏みつけやがった!!


「あんたサモナーよね? どうしてこんなところにいるのよ?」

「愚問です。ノームズは私たちサモナーの故郷ですから」

「へ・・・? そうなの?」


シルヴァーナの淡々と話す様子にフランは困惑し、すがるような目で俺に訴えかけた。


「お嬢様。教養がなさすぎるぞ」

「これは常識ですぅ」

「・・・ですわね」


俺たちの冷たい視線にフランの瞳に涙が滲む。


「うわぁ〜ん! 皆んなが虐めるよぅ〜!」

「よしよし。大丈夫だからね」


ビアンカ、甘やかしちゃいけない。


この子は褒めれば褒めるほど調子に乗ってしまうんだ。


ビアンカの綺麗な服がフランの滝のような鼻水のせいで悲惨なことになっている。


もうやめてあげて。


それはさて置き、さっきからシルヴァーナの言葉がどうも引っかかるんだよなぁ。


「あの緑の球体は君のエイビーズだよな? とてつもない威圧感を感じたんだけど、もしかして神霊なのか?」


シルヴァーナの淡々とした表情がやや和らいだ。


「良い読みですね。族長に聞いていた通りです」

「族長?」

「この子は神霊アテナ。勝利の象徴。戦いの女神。私のエイビーズです」


何と。


まさかここでアテナの名を耳にするとは。


アテナといえば神霊の中でもトップクラスの座に君臨すると名高いエイビーズの一つだ。


どれだけ優秀なサモナーであっても呼び出せるエイビーズは運による要素が大きいと聞く。


Sランクの魔導士でも神霊を呼び出せる確率は五分五分。


狙ったエイビーズをピンポイントで召喚する事は不可能に近い。


普通は一時的に契約を結ぶのであって主従関係にはなり得ない。ましてや相手が神霊クラスなら尚更だ。


しかし、見る限りシルヴァーナと神霊アテナのやり取りは主従関係のそれだ。


いや、むしろ友達のような接し方。まるでお互いに信頼し合っているかのような。


そんな超強力な神霊をBランクのこの子が?


「あの。私の顔に何かついていますか?」

「ご、ごめん。そういうわけじゃないんだ」

「私はあなた方を案内するためにここへ来ました。こちらへ。里で族長がお待ちです」


族長か。一体どんな人なんだろう。


・・・ん?


「どうしました?」


何で俺腕絡められてんの?


「早く参りましょう?」

「いやいや! 意味が分からないからっ!」


そんなさも当然のような顔で言われると俺の感覚がおかしいのかと疑ってしまう。


振り解こうにもギッチリとホールドされている。


い、意外と力が強い。


ってそんなことより早く離れないとヤツがっ!


「と、とにかく離してくれないか? 今はっ・・・」


突如、俺の目の前に大きな影が落ちた。


見上げると、瞳を真っ赤に燃やすフランの姿があった。


影を落とした威圧感のある笑顔。


「落ち着こう。話はそれからだ」

「うっさい!!」

「ぐはっ?!」


落雷のごとく振り下ろされた踵落としが脳天を直撃した。


こいつ・・・


相変わらず手加減てものを・・・


薄れゆく意識のなかではっきりと見た景色を脳に刻み込む。


彼女の情熱を表すような真っ赤なパン・・・


「ヘンリーが落ちるですぅ〜!!」

「危ないですわ!!」


駆け寄ったローズとハンナに激しく揺さぶられる。


力が入らずもはや抵抗できない。


美女たちに埋もれながら思う。


(くそ。こんな絶景を前に・・・)


恐らく男にとって最高のシチュエーションだったであろう至高の楽園を前に、ご馳走をお預けされた犬のような気分を抱いたまま俺の意識は遠のいていった。

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