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5.地獄の勉強会【魔法編】


ドサドサドサッ!!!


……………目の前に辞書?のような分厚い本が積まれた。

あれ?なんだろうこの本たちは。

”イズダオラ王国歴史”、”日常生活の法律”、”よくわかる!民法入門”など、

表紙を見るだけでわかる、とても面倒な本であることを。


もちろん私の希望通り魔法の本もある。

”子供でも分かる!魔法について”と、とても可愛らしい表紙で読みやすそう。


「あ、ありがとう……フランネ、ルリ。これだけの本、とても重かったでしょう?」

「いいえ、全く問題ありません。コルチカに荷物持ち役として連れて行きましたので」


あはは、と隣で苦笑いしているフランネを横目にその後ろで小刻みに疲労によって痙攣している腕を意識的に抑えながらルリを睨んでいるコルチカ。

ルリはそれに気づき、コルチカとは比べ物にならないほど鋭い眼光で睨み返し、さらには無言の圧をかけていた。

コルチカはビクッと肩が上下するとまるで蛇に睨まれたカエルの如く、痙攣していた腕さえも止まり石化してしまった。


ルリは使用人たちのボス的立場ね………私も逆らわないようにしよう。

怒らすととんでもなく怖そうだ。


「でも、これだけの本………ルリたちは普段こんなに難しい本を読んでるの?」

「いいえ、これは()()()お嬢様の教科書です」


……………ん??聞き間違いかしら。


「えっと、私は確か魔法についての本を…」

「ええ、存じております。しかし、それは学園に入学されて学ばれること。人々の上に立つ貴族として魔法以外の()()()()()をおぼえておかねばなりません。ですのでお嬢様には学園で教えられることはないこの国の法律、民法、地理、そして歴史は貴族社会において必要不可欠です。それに加え、貴族令嬢としての規則、淑女マナー、ダンス………これらすべてを覚えていただきます」


……………………………。

固まるシレネを見てルリは小さく微笑む。


「ご安心ください、お嬢様。わたしたちが全力でサポートいたします」


有無を言わせない、その見えない圧にただ私は頷く事しか出来なかった。

ちらりと横目でフランネに助けを求めるように見つめると、胸に拳を作りまるで”頑張ってください!”と言わんばかりの表情をしてる。

コルチカはとても哀れむ様な目で見つめてきた…あぁ、今ならルリの気持ちがわかる。とても腹が立つ。


「あれ??皆さんお戻りだったんですね!!」


元気な声で部屋に入ってくるガーベラに「ノックをしなさいっ!」というルリの厳しい叱責を受ける。

すみません、と大慌てで謝罪したあと、私の目の前に積み重なっている分厚い本たちに目をやる。


「懐かしいですね~この本たち、日常生活の法律とかよく小さいころ読んでましたよ!イズダオラ王国歴史も寝る前とかに読んでたな~」


!?

へらへらしながらひとり懐かしむガーベラに目を見開いた。

それは私だけじゃなく、フランネとコルチカも同じ反応していた、ルリを除いて。

………最初からその反応がわかっていたかのようだ。


「お、おいガーベラ…冗談だろう?」

「何言ってるんですか、イズダオラ王国歴史なんて寝る前に読むのが鉄板じゃないですか!全く、コルチカさんは読んだことないんですか?」

「いや、あるか!んな分厚い本読んだことねぇわっ!!」


辞書のような本をまるで絵本のようだと言わんばかりの反応をするガーベラに気付いた。

あぁ、この子は少しずれている、と。


「さて、お嬢様。魔法、法律、民法、歴史、地理については無駄に知識がある人物がおりますのでご安心ください」


にっこりと今度は満面の笑みを向けるルリに気が遠くなりそうだった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



最強極悪侍女、ルリの指示によりガーベラは本当に私の家庭教師として教えてくれることになった。

ガーベラ曰く、『ここにある本はとても分かりやすいので楽しいと思います!』とのことだったが正直、魔法の本以外は細かい文字が並び、1枚1枚は薄い紙が何千枚と重なり1つの分厚い本になっていた。開くだけで嫌になるのに、読むなんて億劫だ…。しかも、覚えろだなんて。

…ただ不思議なことに私は文字の読み書きはすんなり出来た。

前世では見たこともない文字であるが、読み書きできることに関してはシレネの記憶のおかげであろう。


「-…以上のように魔法属性には有利、不利があります。ここまでは大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫よ」


ここまでは全部、ゲームの設定どおりだ。

ゲームの設定どおりなら魔法学についてはこれ以上教えてもらえないかしら?


なんて思っていたのは、甘かったとすぐに思い直す。


「じゃあ、基本中の基本を押さえたとこで、生活魔法について説明しますね!」


せいかつ、魔法?

もちろん、ゲームではそんな設定は出てこなかった。


「生活魔法を説明する前に、この世界中だれもがみんな魔法を使えるわけではありません。例え両親が魔法を使えたとしても必ず、子に継がれるものではありません。その逆もあります。以上のことを踏まえた上で生活魔法についてご説明しますね!」


ガーベラの説明はとてもわかりやすかった。


生活魔法には、呪文が存在せずに使える魔法のこと。

昨日、フランネが私の髪を乾かしてくれたのも生活魔法だった。

火属性持ちが手から火を自由に出せ、水属性も土属性もそれぞれの属性に応じて発動することが出来る。

だが、魔物に対しては全く効果はなく、”生活魔法”と”対魔物用魔法”は厳密には別のものになるらしい。

だから例え、火属性の人が火炎放射並みに生活魔法を発動させたところで魔物には効果なし。

ただし、人に対しては普通にケガをするので、その為に生活魔法の法律が規定されている。


「…………ここまでも基本中の基本になります!さて次は~」

「ちょっっと待って!!質問です!」

「はい、なんでしょう?」

「その、生活魔法については私も使用しても大丈夫なの?」

「あー…たぶ、ん??一応、生活魔法は魔法力をあまり理解していない子供が無意識に発動してしまうこともあるので…」


うわ、確かに、それは危ないものだわ。


生活魔法も個人の魔法力が影響するので、基本的には殺傷するほどの威力はない、せいぜいバケツで水をぶっかけられる程度のものらしい。

だが、逆に魔法力が高い人が使えば危険らしいが、そうなる前には、魔法力を自在に制御できるほど成人している。

意外と、この世界の魔法学はゲームよりもとてつもなく複雑なものだ。


ガーベラは呪文の詳細までは教えてくれなかったが、どうやら呪文はただ唱えるだけじゃなく、魔法陣には、組み立て方があり正しく作り上げなければ発動はしないらしい。

それこそゲームでは主人公たちは当たり前のように簡単に使っていたし、なんならレベルが上がったらポンッと習得して即刻使えていたけども、現実ではそうもいかない。



…………現実はとても厳しいことが身に染みてよくわかった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 内容がとても分かりやすくて読みやすいと感じました。 [一言] 自分も小説を書いてますが、なかなかこんなにしっかりした設定を書けないのでとても勉強になります。
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