表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/97

51.元人形の苦悩





私の城通い勤めは解禁されようとしていた。


「はぁ~…」


師匠との特訓も同時に再開されるのはとても嬉しいことだ。

ただ、やはり長い休息が終わりを告げられるとなると億劫にもなってしまう。

王位継承権争いに終止符が打たれようとしていた、カルミアの暗殺計画が発覚された今、王家が黙って見過ごす訳にはいかない案件だ。



『…王位継承権の支援に関する法律案の一部が改正される法義会が急遽開かれることになった。

そして魔王封印戦争の終戦までは王位継承に関する事項の休止が特別措置として用意される事になる』



と、小難しい事をカルミアから聞かされた。

その事は私に話してもいいのか?と思ったが同時に貴族間での蟠りが一時的とはいえ解消されるとなると私も城通いが再開されるのではないかと危惧している。



コンコン

「アスターです、コデマリ様がご到着されました」



また大きく溜息が漏れ出てしまう。




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「シレネ様はいつになればわたくしと王子方との仲を取り持ってくださるのです?」

「そうですわね…コデマリ様が淑女としての教養を身につけて頂ければ、ですわ」


既に半日常化しているコデマリの教育に進捗の兆しは未だ見られていない。

コデマリ自身が真剣に取り組んでくれないというのもあるのだが。

「いつもそればかりではありませんか!」


コデマリの教育が半日常化してる中で彼女の甲高い声にも大分慣れ始めていた。


「コデマリ様は何故そこまでしてイズダオラ王国の王子と接点を望まれるのですか?」


そう、コデマリは隣国の貴族令嬢。

確かに大国であり王族との婚姻はどの貴族令嬢でも望まれることは確かだ、ただコデマリを見ていると固執しているようにも感じた。

攻略対象者ではなく主人公の友人、だったコデマリに恋愛イベントがないから過去の”苦悩”話がほとんどないに等しい。


「わたくしは父上に言われたからですわ!」


グーロ伯爵が?

ヴィスカリア家はゲームで登場はしない。というよりも”セカシュウ”はイズダオラ王国を中心としているから他国は会話ぐらいでしか出てこなかった。

正直、これまでもゲーム知識が活かしているかと疑問を感じるがコデマリに関しては情報がほしかった…。


「それであれば、しっかりと淑女マナーを身に着ければコデマリ様の魅力が更に!引立ちますわ」

「ならば早くしてほしいわ、エリカよりも」


エリカ。

名前だけは彼女の数少ない過去話に登場していた。

…ただ彼女もまたゲーム開始時にはグロリオ団長と同様に既に命を落としていたのだ。『妹は病弱で素晴らしい令嬢だった』と主人公に語っていた。不仲ではない筈だが王子誕生会の様子を見ているととてもではないが、良好とは言い難いものだ。




―『父上っ!!何故私を置いていくのですっ!?』


ふと、王子誕生会でのコデマリの言葉が過った。


「コデマリ様、失礼でお聞きしますがエリカ様はお身体が弱いということはありますか?」



「?何を仰ってますの、エリカは健康ですわよ」


…まだゲームのシナリオの時期ではないのかしら。

確かにエリカ様とお会いした時は健康そうだった、病弱ではなかったと思う。

「ここまで来てエリカの話を聞きたくてありませんわ、さっさとわたくしに教えてください」


心の中で深い溜息をつき、痛む頭を我慢するのだった。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「お嬢、お疲れ様です。今日は帰りませんでしたね」

「シレネ様のお相手の令嬢はすっげぇ元気ですね」


コデマリを見送った後は紅茶とお菓子を持って来てくれる。

口を含めばやすりで削られた精神にはとても染みる、ありがたい。


「そうね…」

いつものように来ているアキレアはさすがに私の様子を見てなのか稽古の依頼をすることはなくなった。むしろ今はアスターと一緒に私の景気付けの為なのか愚痴を聞いてくれる。

「そういえば…最近はタツナミとの稽古はどうかしら?」


タツナミの腕がどこまでなのかは知らないがダンスの腕は確かだったタツナミはきっと確かな実力なのだろう、それにアドバイスはいつも的確だ。変貌する姿には身震いするし節々に毒を入れて来るけど。


「い…つも丁寧に教えてくれますよ!自分の悪い癖がつかないように容赦…なくッ!」

どことなく歯切れが悪いのは私と同じ事を思っているのだと察する。さすがは無慈悲な鬼教官だ。

アスターも共感するところがあるのだろう、うんうんと頷いていた。


「あ、そうだ!アスターは学園の入学はどうするんすか?」



!!


「いや、オレはお嬢の従者ですから、行きませんよ」

「でも学園の入学は絶対だろ?」


確かにアキレアの言う通り、この国で学園は絶対だ。

セカシュウの始まりでもある学園は魔法学をはじめとする様々な分野の基本を学ぶ場所、主人公はシレネの1件があり卒業する前に中退して打倒魔王に向けて特訓を開始する。

アスターはクエストで出会うし学園入学する機会もなかったが今のアスターはイズダオラ王国の民として例外なく学園に入学する義務はある。入学の年齢は15歳、アスターは13歳。


すっかり最近の騒がしい出来事とゲームの事も相まってアスターの学園入学は気にしていなかったわ。



考えることが山積みで苦労している子供人生だわ…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ