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43.亡霊の除霊



ギィググ…ガアッ!…

「グガア"ア"ア”ッ!」


亡霊の呻き声と共にアスターは私に躊躇いなく斬りかかってくる。

振りかかってくる腕を躱すがアスターを傷付けるわけにはいかない、何度も襲い掛かってくる攻撃を躱す事しか出来ない。


グギィ…!ガ…グゥ…

「ギ…ィ塵土爆(プゥリヴィス)


ドゴオオォォオオ!


ビュオウゥゥウ…


「危なかったわね」


風の生活魔法で速度を上げて避ける。

だが、アスターからの攻撃は止むことはない、このまま攻撃を避けていても平行線のままだ。


…アスターについて来させたのが大きな間違いだった。



屋敷の場所が特定したのであれば日程をずらせば良かった、と強く後悔する。

亡霊の特性を知り、闇属性も知っていたのに…こうなることは予想できることだった。

…ましてや私は闇属性の魔法陣を知らないというのに。



レベルが超過している、という1種の優越感がこのような失態を犯したのだ。



ガガア"…グ…ギィ……

「ア”…ギィ…ギギッ」



ヒュンッ…ガキィッッ!!



亡霊の呻き声に合わせるようにアスターも苦し気に呻き、糸で操られているように走り短剣を向けてくる。刃の金属が交わりギギィィと音を立てるが、いくら私の方がレベルが上だとしても男女の力の競り合いでは純粋に勝てない。

まして元々野盗であり、従者として力仕事を熟しているアスターには腕の力を鍛えていない私は叶わない。


一瞬力を抜き、アスターが自身の力で前のめりによろめく、その隙にクルリと回転し躱すとアスターはそのままの勢いで倒れこむ。


早く解放させてあげないと…っ!


焦りばかりが早まってしまい、冷静に考えなければと思い直す。

ここからアスターを強引に連れだす、そう考えるが躊躇してしまう。亡霊は前にこの屋敷外で魔物を洗脳し操っていた。

奥歯がギリギリッと音をたてる、眉間に皺が寄り今もなお洗脳されて苦しんでいるアスターが目に映り、心臓がナイフで突き刺されたように痛む。


私のせいでアスターをこんな目に合わせてしまった。


その事実の自責の念は1度考えてしまえば”精神”という塊を覆い尽くしてしまう。今はそれどころじゃない、と頭に叩きつける様に何度も何度も言い聞かせる。


グゥッ…ガ…アァ……ッッ

「ガゥ…グ…粘土(ルゥトゥム)


亡霊の呻きに合わせてアスターは動いているの?

その可能性に気付いた時あることが浮かび上がってきた。



―…シレネの過去に少し違和感があった。



魔法学では光属性と闇属性に関しては一切の情報がない。

イキシアからもらった本にも記載はない、当たり前のことだが…それならゲームのシレネはどうやって闇属性魔法を知ったの?


誰かから教わった?

人形で不気味だと拒絶されてたのに?

誰からも教わられないのであれば…自然と使えた?



―生活魔法



”魔法力を理解していない子供でも無意識に発動する。”

”生活魔法は殺傷する威力がない”


そして…呪文がない。



そう考えた時に頭が真っ白になった。



亡霊へと目を向けて捉えた。

生活魔法を使うように魔法力を放出し、糸で縛り付けるように瞼を見開いた。




アスターの動きが止まり、まるで亡霊と繋がったように自分自身の身体から靄が放出されているのが見えた。

その靄はどんどん濃くなりやがて視界は閉ざされた様に暗くなった…。





グィギイィィイ"アア"ァァァア"アッ!


亡霊の断末魔が聞こえてくる。

悶掻き苦しみ、叫び…耳を劈き塞ぐが、頭の中に直接叫ばれてるかのように変わらず聞こえる。


グルジィ…セイ、ジョ…ゴ……ロ…ス



明確に聞こえたその恨み言は頭の中で輪唱するかのように何度も何度も響く。


「なぜ?」

ゴ…ロ…サレ…タ


どうやら会話が出来るようだ。

この亡霊はかつての聖女に殺された人?聖女が人を殺した?

…人、聖女に殺された、闇属性


私と同じ生贄の人間?


「貴方、もしかして聖呪の儀式の生贄の方かしら」


…返事がないということはそうだと思っていいのだろうか。

「私は生贄の人間ですわ」


暗い靄が形を変え始めた。

徐々にそれは人の顔へと変わり、煙のような靄が蠢いていた。

「ニ…エ…」


顔に変貌すると割と流暢に話し始めた。

男性の低い声だ、最初からそれをしてくれたらいいのに、と少しだけ思った。


「ニエ…セイ、ジョ…コロ「殺しません!」

亡霊の言葉を遮り言い放った。


「私はこの世界で生きたいので聖女様を手に掛ける等しません。殺されない為にもさっさと聖女様を強くして魔王封印して頂ければいいのです」


かつての聖呪の儀式の被害者。

長い事それは”恨み”として残り続けていたのだろう、そのまま私は言葉を続けた。

「なので、貴方も恨み等忘れて成仏すれば転生出来ます!!」


…転生先で苦労しないとは言えないけども。

少なくともずっとここにいるよりかは良い、どこかのヒロインかもしれないし、チート能力があるかもしれないし…。


「…ナ…ヲ…クレ」


なおくれ?

…名をくれ。

よく分からず頭を捻るがどうやら名前がないといけないらしい。成仏の条件なのかもしれないと思えば出来るだけ協力してあげよう。



「ディアス、はどうでしょう?」






その瞬間、視界が開けた。

真っ暗な夜を明るく感じ少し眼を瞑った。

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