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40.黒と白の苦悩



今の城は安全とは言い難い。

カルミア達の襲撃以降、徐々に貴族達に不穏な空気が流れていた。カルミアと俺に線引きを掛けているのか俺に好意に接する者もいれば反対に悪意のような接し方をする者もいた。


”優しさでは人を護れない”


つい最近までは仲良く接していた者は襲撃以降、以前のような関係を築けなくなっている、昔父上とシレネに言われたことが何度も頭の中で輪唱している。

だがいま目のあたりにする現実から背けるにはいかず、このまま争いにならない様注視する。


「…イキシア」


シレネが城通いしなくなってからカルミアは以前のような気怠い顔をすることが増えた。

かくいう俺もシレネが来ないと正直楽しくない、休息時間でもカルミアは昼寝するし本を一緒に読む相手もいない。医学や薬学の話をするととても真剣に話を聞いてくれてシレネの知らない知識に役立てているようで嬉しかった。

「今のとこホーセ公は動いていない。だがトン男爵とオフマ子爵は最近はさらに王位継承の話を持ってくる、耳が痛いほどにな」


様々な貴族からその話題が上がってくる、それこそしつこいので煩わしいと思えるほどに。

だが…俺も少し前までカルミアに同じことをしていたのかと思うと申し訳が立たない。謝罪をすればカルミアの事だ、無視をするだろう。

カルミアは俺のそんな姿を望んでいないのだ、今俺に出来る事は”他者へ冷淡無情”になること。


「…今は、僕らに王位継承争いは必要ないと思っている、だが”いつか”はその時が来る」


その言葉は俺への宣戦布告に取れた。

俺は勉学や剣術ではカルミアに叶わない、だが俺はどうやら銃や弓の方が相性が良いらしくそっちではカルミアを上回る成績を収めた。


”他者への想い”

”時に他者への冷淡無情”


この2つが俺にとって大きな要になっていた。


「その時は俺も受けて立つ!だが今は…」



護りたい人を護る為に無情にでも何でもなる。



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢



城の中が退屈でうんざりする。

だが、それ以上に気に入らないことが増えた。


シレネと僕が婚約者だ。

それなのにある時期から使用人の間ではある噂が立った。



イキシア王子とシレネ公爵令嬢の婚約。


…8歳の誕生会の時に父上から僕らの婚約の件は発表された。

ザクロ野郎の通り人物の特定はせずに。だがシレネが城通いをするようになってからは必然的にその噂が立つのは仕方がない、それはわかっている。それでも気に入らないものは気に入らない。

確かにイキシアとシレネは仲が良い、誰から見てもそれはわかるほどに。城の中では僕以上に行動を共にしているのではないかと思う。


「…そういえばイキシアはシレネと一緒にい過ぎじゃない?」


パチパチと目を丸くするイキシアは「そう?話し合うからじゃないか」と特に戸惑うこともなく平然としていた。最近はイキシアに負けている気がして悔しい。

僕が何かするわけもなくとんとん拍子に成長していくイキシアに全力で王位継承争いに挑んだとしても叶わないのではないだろうか。


今はイキシアと協力出来ているからこそ大きな問題にはなっていない。

ただイキシアとシレネの噂が思いがけない方へと足枷になった、ホーセ公はイキシア派の頭首とも言えるほど王位継承権の事を唱えている。

それだけならまだいい、だが僕らが表立って動けないのには大きな問題がある。



1つは僕とシレネの婚約関係の事実を秘匿。

1つはイキシアとシレネの事実無根な噂。


全て…シレネが関与している。

ましてやホーセ公とザクロ野郎はシレネに対して只ならぬ感情を持っている。僕らや父上母上がシレネとは仲が良いのは紛れもない事実だ。それならば…



この状況を利用してザクロが何かしないわけない。



そして…イキシア派にいる貴族は”過激”だ。

イキシアの人柄のおかげで今それを抑えられていてもそれは時間の問題…。どこまでイキシアが気付いているのか、自分を援護している貴族共がどれほど過激なのかを。




「…婚約者は僕なんだけどな」


「何か言った?」と聞き返してくるイキシアに何も言っていない、と返す。

例えイキシアの人柄を利用しても阻止する自身はある、だけど気に入らないものは気に入らない。


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