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31.策略王子とお出掛け




驚いたことに私は、レベルが上がっていた。



日々の特訓の成果によるものだろう、レベルはなんと30に到達していたのだ。ゲームだったらもう序盤ステージを抜けて中盤ステージに入りかけである。

ウバガヨイの森レベルまではまだまだ先は長いけども、ピクシーあたりであれば皮膚の皮を切ることぐらいまでは出来るようになってきた。



「…なに考えてんの?」

「現実逃避してます」


もう見慣れた豪奢の馬車に揺られながら窓の景色を見る。

初めて明るい時間に国外に出たな、と思うと平原が続いており遠くに木々が見える。多分あの森が最初のフィールド”ジファストの森”なんだろうな、推奨レベルは5だった。

最初らしいスライム、ゴブリン、グレムリンが生息している。私もあの森から始めてたかったな…スライムはぷにょぷにょしているのだろうか。


私が見た最初の魔物は4つ目のサイクロプスだった…。



「…婚約者に対して失礼じゃない?」


眉間の皺を寄せ、腕を組みながら片方の手は頬杖を突くカルミアはいい気分をしなかった。



「申し訳ございません。例の如く突然でしたので」


そうなのだ。

何でもかんでも私が察せるとでも思っているのかカルミアは朝迎えに来たと持ったら護衛の数がいつもより多い。グロリオ団長もいたほどに。


おかしいと思うのは当然でもしや王城に何かあったのかと思った。


『…行くよ』


そう言われていつものように馬車に乗ったものの王城とは別の方向に進んだ。


そして、今現在。国の門を潜り抜けたあたりで私をどこかに連れて行くのは分かった、でもその肝心のどこかをいつも聞かせてくれない。ジファストの森を通過したということはもっと先のフィールドなのか。



「…前に言ったよね、カエルウムの洞窟は再計測したら違うて」



!!

言っ、た。確かに言ったわ。


「まさか再計測をしに…?」


王子が?公爵令嬢が?護衛を引き連れて?

どうやってするのよ!!


少なくとも私に計測する技術まではない、ちゃんとその専門がいる。


「…見に行こうと思った」


見てわかるか。

師匠の動きを見慣れてきた私でもさすがに地質まではわからない。しかも初めて行く場所だ、いくらゲーム内で散々歩き回ってたとしても実際はもっと複雑かもしれない。

カエルウムの洞窟はちょうど今の私のレベルぐらいで行くフィールドだ。個人特訓をしたいところだが、カルミアや騎士がいる手前出来ない、それに…




私に鋭い眼差しを向け敵意を露わにしているアキレアもいるのだから。


以前の極秘視察以降はカルミアの監視が強まり、タイサン様とヴィオラ様からも許可が下りず会うことはなかった。最後に会った時に彼に何かしてしまったか、考えてもみたが心当たりはない。ただ無意識に嫌なことをしてしまったんだろうな。



「カルミア様、失礼ながら計測の技術はお持ちで?」

「…あるわけない」



現実逃避をしよう。


純粋にカエルウムの洞窟はゲームでも手が込んでいて綺麗なステージだ。

入口から青色でとても綺麗だ、少し奥地に進めば…そうフィールドボスがいるあたりは地下水が流れており水の反射で洞窟内が青く包まれている。

そこまで奥地に進むかわからないが、実際にこの目で見れるのであれば素晴らしい景色なのだろうな、と考えると少しワクワクしてしまう。

いくらあまり前世でゲームばかりの引きこもりとはいえ、ネットで検索すれば綺麗な景色がたくさん出てくるのだから1度は行きたいと思ってしまう。



「…あの従者はどうなの」


カルミアの口から意外な話題が投げられた。



「元気にしてますわ!予定では来年あたりから私の正式な従者になります」

「…そう」


最近はカルミアがわからない。

出会った当初のほうがわかりやすかった、今は気怠そうな顔なんて見かけることの方が少なくなりその分わかりにくくなってしまった。

…このままではいつカルミアに揚げ足がとられるかわからない、謀略王子でもある彼がどんな落とし穴を用意しているのか。



それこそアキレアのようだったらとてもわかりやすいのだけど…。



頭が痛み、ふぅと小さくため息をつきたくもなるが今は出来ない。

こんな状態ではまだあの人には勝てない。


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