表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/97

30.純白の紳士




「シレネ、危ないから」


私とイキシアは勉強以外でも一緒に行動することが多い。

休息時間もカルミアは寝てるのに対しイキシアとはおやつ食べながら談話する、その後は王城の図書室に行きここでも一緒に本を読む。

何度か通っている階段で必ずイキシアは私に手を差し出し、支えてくれる。歩幅も私のペースに合わせてくれて…とても紳士だ。


しまいには、本をイキシアが運んでくれて一国の王子にやらせていいものか、と遠回しに言ったが「一国の王子なら尚更だろ」と言い切られてしまった。



今も、本を取ろうとした私に声を掛けてくれ、代わりに取ってくれた。


「あ、ありがとうございます…」


あれ、イキシアて…とんでもない大人になるんじゃないのか?

王子、見目麗しい、紳士、頭脳良し、護身術良し、性格良し…。


確かに、ゲームでも紳士的行動をすることが多く、最初は主人公にとても丁寧な言葉遣いで接するけど仲良くなるにつれて口調が砕けてくる。カルミアの腹黒片鱗に注意しすぎて、イキシアの既に予備紳士に気付けなかった。

いやというよりも、一緒に行動していく内にイキシアの素振りが増えた。



図書室に置いてある1人掛けソファーに腰を掛け、向かいにイキシアも座る。


最近イキシアは医学や薬学の本を読むことが多い、私の専門外なので時々毒草の種類とか、傷を癒す薬草とかを教えてもらうことがある。



その流れで回復薬の存在を知ることが出来た。


裏ボス戦で重宝した回復薬とMP回復薬…私は飲めば傷が治るとかを想像していたのだが違った。セカシュウには回復薬は”小・中・大”の3段階で分けられ回復量が変わる。

3段階に分けられていることは同じだったが、飲めば”傷が治癒”するのではなく”止血”作用がある薬で、効果が出るまでの早さが違うらしい。大回復薬ともなれば止血は即効だと。

MP回復薬は”小・大”の2段階に分けられているまでは同じだったが、大きく違ったのは使う機会だ。魔力血液の暴発時に使う薬らしく飲んだところで魔法力が回復するわけじゃない。魔法力の不足は前世でいう”筋肉痛”みたいなもの。温泉とかマッサージがないこの世界では自然回復を待つしかなさそうだ。



ふむ、私はゲームで主人公達に何度も止血薬を大量に飲ませていた上、魔法力切れによる貧血又は暴発寸前まで戦わせていたのか。

挙句の果てにご飯抜き、無睡眠、ダンジョン入り浸り生活を強いてしまった。その内の1人が今目の前にいる…ごめんなさい。



事実無根の贖罪をイキシアに向け、…あれ?いない。



考え込んでしまい、イキシアが席を離れていたことに全く気付かなかった。こんな状態であればいざという時にダメね、と思いつつイキシアはどこ行ったのだろう。



「授業の合間に読書してるんだ。集中するのは良いけど頭も休ませなよ」


ティーセットを持ち運び、ポットで紅茶を手慣れた手つきで注いでくれる。「はい、どうぞ」と、私の前に淹れたての香りがいい紅茶が置かれる。

ソーサーとカップがカチャカチャと音が鳴らないあたりさすがだ。



「シンプルにダージリンにしたよ、疲労解消する作用があるから」


休養も大事だ、と言葉を付け足すイキシアに前世の母親のように感じることがある。そう、前世の。

お礼を言い、口に含むとホッと一息つく。



イキシアの紳士っぷりが加速しすぎてやばい…。


3次元ではカルミアみたいなのが人気かもしれないが、現実はイキシアの方が絶対にカルミアよりも人気でしょ!!


侍女たちの負担を減らすためにやり始めたのがきっかけと聞いた時は、私も見習わなければっ!と痛感した。あれこれルリ達に任せきりで何もしてないし、きっと何も出来ない。

…足速いから荷物運びいける?いや腕力皆無だった。



「さすがですわ!イキシア様。イキシア様のご婚約相手はお幸せですわね」



ガチャンっ!



注いでくれた時は音を鳴らさなかったのに…もしや婚約という単語に?

貴族社会では、私達の年齢でも婚約を結ぶことは決して珍しくない、カルミアと私が婚約を結んだように、もうそろそろイキシアの婚約も決まるだろう。


「カルミア、とは、最近どうだ?婚約者同士なのに喧嘩ばかりじゃないか」


顔を私から逸らし少しぶっきらぼうになっていた。


「カルミア様と?そうですわね…。もしカルミア様にとって好い人が現れたら身を引くつもりです」


実際主人公が誰を選ぶのか分からない、ただもしゲームの通りになるのであればカルミアかアスターのどちらかになる。

何故なら私がカルミアの婚約者だからだ、もしイキシアの婚約者だった場合は、イキシアかアキレアルートに入る。好感度が1番高い攻略対象者によってどちらの王子と婚約関係か変わるのだが主人公とシレネは基本恋敵になるよう設定されているのだ。

カルミアとアスタールートではシレネとカルミアが婚約を結んでいたのでこの2人の可能性が非常に高い、ただゲーム世界と現実世界では多少違いがあるので絶対とはいえない。



「もし…カルミアに好い人が現れたら…嫁いでこないのか?」

「え?ええ、もちろんですわ。その時は婚約解消しますもの」


なぜ、そんな当たり前のことを…?

あ、そうか。婚約解消した場合、キズがつくのは女性側だ!それをイキシアは心配してくれてるのか!



「シレネが王族に嫁ぐのは絶対だからな!」



久しくイキシアの大声を聞いていなかったので少し驚いた。大声、といっても普段の言い方よりも多少強い程度だが。


「?…そうですわね、婚約解消がないのが1番ですわね」




ふと、休息時間が終了する時間になっていたことに気付き慌てて戻る準備をするのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ