3.魔法について
ソファーに腰掛け、ふぅと一息つく。
「さて、どうしようかしら………」
セカシュウの大まかなストーリーを改めて整理する。
まずは、学園から物語ははじまり、元は平民であった主人公は光属性の魔力を覚醒したことにより学園入学時には注目の的となる。
それは攻略対象者たちからも例外ではなく、数々の恋愛イベントと共に近いうちに復活する魔王を倒すために、ダンジョンに行ってレベル上げをする。
ただ、主人公は最初は魔力が弱く、もとが平民であった為、貴族令嬢たちには嫌がらせを受けることになるが、その主犯格に私、シレネがいた。
シレネは、攻略対象者たちと仲良くなる主人公に嫉妬を爆発して、あるパーティーで闇属性の魔力で暴走してしまい、戦闘になるが主人公の光魔力によりあっけなく倒されることになる。
そのことがきっかけで主人公は”聖女”として正式に爵位を受け、魔王を封印するための決意をする。
序盤は恋愛イベント盛りだくさんだが、それ以降はRPG要素が多くなってきて本格的にクエストや戦闘がはじまる。
つまり、シレネはチュートリアルの小ボス、主人公たちに負けるように設定されている。
……せっかくだいっっすきなゲームに転生できたというのに。私はクエストを楽しむ間もなく死んでしまうなんて。
ぜっったいに嫌だ!!私は楽しむんだ、この世界を!!
それに、ゲームで知ることができなかったシレネの過去と辿ることになる運命に心が痛む。
私はこの身体に転生して気付いてしまった、シレネの記憶にはシレネを蔑む両親と周囲からは冷たい目線を。
そして私は知っている、なぜシレネが感情を失ってしまったのかを。
きっとその”出来事”で感情と一緒にその記憶を忘れてしまったのであろう…。
なら、私がやることはただひとつ!!
意地でもこの世界で生き続けてやるっ!!
心に熱い炎を灯して、そう強く決意をした。
ゲームのシレネがどんなだったか改めて思い出してみよう。
シレネは闇属性の魔法で人を洗脳し、貴族令嬢たちを操って主人公に嫌がらせをしていた。
主人公もシレネのことは不審に思っていたし、作中では『シレネ様に見えるあの暗い靄はなに?』と不審がられている。
後に、聖女には闇属性持ちの人間が見破れると判明する。
ただ、見破れるのは主人公と同レベルもしくはそれ以下の人間のみで魔王幹部の変身や裏ボスには最初は気付くことが出来なかった。
シレネ戦での主人公レベルは大体10~13程度、つまり私は学園時にはそれ以上に強くなっていれば気付かれることはない。
そして、シレネ戦では4属性の魔力はあまり効果がなく光属性が有利になる。
セカシュウは魔法属性に有利と不利がある。
火属性は水属性に弱く、水属性は土属性に弱い。
土属性は風属性に弱く、風属性は火属性に弱い。
そして、闇属性は光属性に弱く、光属性も闇属性に弱い。
そのかわり光属性と闇属性は他の属性はあまり効果がない。
ただ例外になる属性が一つある、それは聖属性だ。
一見、光属性と同じ様に見えるが聖属性は一般的に要る属性だが、攻撃魔法がなく、補助魔法のみしか存在しない。
弱点属性がないかわりにどの属性でも通常通り一定の攻撃は効くのであまり危険視していない。
まぁ、戦闘においては聖属性は物理で倒すことが、一番手っ取り早い。
確かシレネ戦では、はじめて闇属性の戦闘になるからチュートリアル画面が表示された。
そこでプレイヤーは、闇属性の弱点と光属性の弱点を知ることになるのだが…………待てよ?
シレネは戦闘では4属性魔法でも攻撃をしてきていた。
火、水、土、風そして、闇。
あれ?そしたらわたしは全部で5属性の魔法を使えるのでは…………?
そういえば裏ボス戦では『今回の聖女がこれだけ魔力を保有してたなら、あの子は優秀な人材になってたかも。もったいないことをした』というセリフがある。
これは間違いなくシレネのことだ。
そうと分かればまずやることは、魔法属性と魔法を鍛えることだ。
今のレベルは1だと思うが、何もまったく魔法が使えないわけじゃない。
にやりっと口角があがり、再び高揚感が湧き上がってくる。
魔法…異世界転生ならでは味わうことが出来る。
あぁ…徹底的に鍛え上げなくては……。
コンコンッ
「シレネ様、使用人たちが戻ってきました」