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24.鬼畜師匠との成果



「し、師匠!!ここは?」


いつものウバガヨイの森でなく、別の場所に連れてこられた。

そこは森ではなく見晴らしのいい平原だった。明るい時間帯に来ていればきっといい景色だっただろうけど残念ながら暗いこの時間には見れなかった。


「チャインカフスの丘」

「なるほど。何故ここへ?」



チャインカフスの丘、もちろん知っている。

既に世界地理を熟読し始めている私にとってはイズダオラ王国から比較的近い場所なんて知らないはずがない。

それにゲームでもこの丘は出てきた、推奨レベル20のこの場所は今の私のレベルには打ってつけの場所だ。


「野盗狩り」


……え??

つい、この間8歳になったか弱い女の子にやれてこと?


さすがに人は…無理だ。

正直魔物でも見た目は前世でいう動物だったから最初こそは抵抗があった。でも、魔法は使うし、大きな牙と爪、熊5匹分くらいの大きい魔物がうようよして襲い掛かってくれば抵抗するしさすがに慣れた。

ただ人は別だ。野盗ともなればそれなりに悪事を働いている者達だろうがまだ前世の倫理感が強く残っており、刃は向けられない。



「護る、とはそういうことだ」


まるで今の私の考えを読み取ったかのように師匠は私に言い放った。


真っ暗な夜なのに師匠の翠色の目が光ったように感じた、緑青色の髪に昼間は顔に巻いているスカーフを頭に巻き夜間のみ顔全体を晒している。

何度見ても師匠の端正な顔立ちに目を奪われてしまう、無表情で抑揚がない口調で謎の塊のような人だけど。


でも私に向けるその強い目は、まるで私を試しているかのように感じた。


『カルミア王子の傍につき必ずお護りします』



カルミアと婚約をしたあの日、確かに私は言った。

王子の命を狙うものは魔物よりも人であり、時には私が直接手を下さねばならないときもある。そこで躊躇いでもしたらカルミアの命の方が危ない。

騎士や衛兵という強固な護りがあるとはいえ、貴族社会において内側から襲撃されることもあるだろう。

…その危険は私も十分に理解している。



「師匠、よろしくお願いしますっ!」


ぐっと腕に力を入れて、そう強く返事をした。

無表情の顔だけど満足したように思えた、コクリと小さく頷く師匠は了解した、という意味だと今はすぐわかる。


「これ使え」


短剣と鞭の2つだった。長剣だけでなく様々な武器の扱い方を教えてくれるようになってからは短剣も鞭もそれなりに扱っていた、ただ師匠から指定されたということはこれからはこの2つに注力しろ、という意思表示だ。

確かに短剣と鞭はとても扱いやすい。それはこの2つには腕力を特別必要としないからだ。


短剣は長剣よりもさらに軽く、子供の中でもそれなりに鍛えられている私では軽々持つことが出来る。

それに加えて私の素早さと身軽さは以前、騎士団で盗んだ相手の攻撃を躱して隙をつく戦法は、刃のリーチが長い長剣よりも短剣の方が相性が良い。


そして銃や弓はそれなりに腕力が必要だ、特に銃は腕はもちろんだが体の軸も鍛えなければ撃った反動でよろけてしまった。それに対し鞭は、特別腕力を必要としない。師匠のように一刀両断ともなれば必要になるが…。

それでも今の私でも振れば遠心力で力が増し、肉を裂くぐらいの威力は出せる、短剣では届かない空を飛んでいる魔物には鞭の方がいいだろう。


師匠はああ見えて私のことを見てくれてる、と思えば嬉しくなる。相変わらず魔法の方は無茶ぶりがすごいけど…でも!それこそ魔法士団のおかげで私も見様見真似で初期レベルの魔法は扱えるもの!時々発動しないけど…。



「行くぞ」

「はいっ!師匠!」



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




海豹(シギリゥム)!」


ブシュッビシャッ!!


「はあぁっっ!!」


ザシュ!グシュ!


炎舞(クルスフランマ)!」


ボワアアアァァァ…


グギャア"ァと魔物の断末魔が耳に響く、ウバガヨイの森にいる魔物とは違い、肉質が柔らかく毛を刈るしか出来なかった私でも充分にその刃が通る。

推奨レベルが合っているからだとは思うけどそれでも師匠の特訓成果を実感することが出来た。特訓前の私だったら今のこの魔物にも歯が立たなかっただろう。


…因みに師匠はいつものように血飛沫の雨を降らしていた。あの人にはバラバラに切断する以外は出来ないのだろうか。





「わああぁぁあああぁあっっっ!!!」




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