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※不穏




「どう思う?」


低い声で問いかけてくる、わたしにしか聞こえないように注意しながら。


「わからん、だが」


問いかけてきた男は、顔を向けてきた。

水浅葱色の髪を左側は耳が出てる程短く、右側は顎あたりまで長く、その切り口はナイフで切っているのか真っ直ぐに切られていた。何度見ても奇抜な髪形だと思う。

顔だけ見れば翡翠色の瞳に眼鏡をかけており真面目な方にも見える、が中身は魔法学を極め異常な探求心を持っているだけの変人だ。


「カルミア様がシレネ様の件を箝口令敷いた理由はわかった」


前回の時にカルミア様は我々にシレネ様の属性に関する事項に箝口令を敷かれていった。4属性持ちともなれば安易に漏らしてしまえばシレネ様の身に危険が及ぶ。


念の為、ご報告するが皆にもこの件も箝口令を敷くよう命じておこう…。



『いざというときに、私の身を護れるのは私しかおりません』


わたしと、そして隣にいるコバンにそう言った。

貴族でもない我々は、クレマチス公爵家がどういう家柄かは分からん。だが、つい2年前までシレネ様のただならぬ様子に注意すべきだと感じていた。


今のシレネ様は子供らしい振る舞いをしているが、少し前までのシレネ様は…



属性のことだけではない、あの動きは…公爵令嬢に出来るはずがない。


彼女は…何者だ?目的は?

クレマチス公爵家は、何が目的なのか。


それとも、シレネ様はクレマチス家の思うままに操られていた、可能性もある。


様々な考えが浮かび上がる、貴族社会で邪な考えを持つ者は珍しくない。だが、クレマチス公爵家云々よりもシレネ様が公爵家に利用され、犠牲にはならないでほしい。




もし、王家反逆の意思があると分かれば、我々はあの少女の首を落とさねばならない。



「グロリオ…何を言ってるんだ?俺が言っているのはシレネ様可愛すぎないか、ということを聞いているんだぞ」



…………。


コイツは。


ハアァァァと重く長い溜息が出る。


コバンは、異常の探求心を除けば普段は冷静沈着で、場合によっては冷酷ともとれる態度を他人へかけることもある。

以前、捕虜への尋問をもはやそれは拷問だ、と思わず止めたほどにイズダオラ王国に歯向かう輩には容赦がない。


実力も頭脳も素晴らしいものでこれまでに彼のおかげで命を落とさずに済んだことも何度かある。ただ、1つの問題を除いては完璧だ。

…その1つのせいで彼は台無しなんだが。



「何なんだ、あの御方は!人形のように顔が小さく目がパチリと大きくクリクリしていて、花の蕾のように可愛らしい唇。ああ、きっとあまり身長は高くならないんじゃないかな~。だって手足が小さいし!それなのに属性4つ持ちでそれだけでも麗しいというのに化け物みたいなグロリオに一生懸命立ち向かってとても素晴らしいじゃないか!!」



これだけなければな…。



「誰が化け物だと?」


さりげなくわたしを化け物呼ばわりしたことを聞き逃さなかった。

だが、コイツは「ん?心当たりないな」と平然とした顔で返してくる。


「まぁ…俺らの役目は国と民を護ることじゃないのかい?」



表情は変えないまま、そう言いコバンはシレネ様の元へまるで飛び出すかのように向かった。



あれさえ、なければ…なぁ。


口角が上がり、フッと鼻で笑ってしまう。



我々は騎士。王家に忠誠を誓い、国民を護る存在だ。





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