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シレネは夕刻になれば屋敷へ帰る。最後まで兄上と嫌味合戦を繰り広げ、喧嘩になる前には必ず俺が窘めていた。


つい先程までは、婚約者であり、王子でもある兄上に不躾な態度で気に食わなかったが…―



「兄上は、最近楽しそうだ」


不愛想で退屈そうにしていた兄が、楽しそうにしているのを見ればそんなことどうでもいいか、と思ってしまう。勉強、護身術を怠り、王家としての振る舞いをすることもない。そんな兄上がきっちり毎朝シレネを迎えに行っているとこを見れば退屈ではないんだろう。

ただ、そう思えば思う程、あんなにも尊敬していた兄のダメな箇所が目についてしまい、本当に王位継承権はカルミアで大丈夫なのか、と心配になる。



「…楽しくはない、心底むかつく」


口ではそんなことを言ってても、いつもの気怠そうな顔は悔しそうな顔になっていた。楽しいんじゃん、そんな顔をする程に。


「全く、そんなんじゃ次期国王になれないよ」



()()()、兄上ほどじゃないにしろ優秀で素晴らしいって褒められる。ただ、いつも最後に兄上と比べられてしまう。

『カルミア様に引けをお取りしていませんね』と、兄上との差を突き付けられているように思えた。


「兄上がちゃんとしないと、俺が国王に選ばれるよ?」


いつもいつも不愛想で、不真面目で身嗜みもキチンとしない。城の使用人たちにも感謝の言葉は言わないむしろ、気怠そうにしている。皆、兄上の為に頑張っているというのに。

沸々と怒りが沸いてくる、何度言っても改めないし年々酷くなっていくカルミアは何故こうなのだと。



「…だったら、勝負しよう」

「へ?」


いつもだったら一言二言で会話が終わってしまい、イキシアが話続けても無視するカルミアからまさかそんな返答があるなんて思わなかった。無視されるんだろうなと思っていたからこそ驚きのあまり気の抜けた声が喉から漏れてしまった。



「競い合ってきたじゃん、僕ら」


その言葉に昔のことが頭に過った。

確かに4年前までは何事にも競い合い次こそは負けない、と意気込んでいた。兄が覚醒してからは負けっぱなしだったなと考えれば、余計にその前までの思い出が楽しくて懐かしくもある、たったの4年前の事なのに。



「…イキシアと僕は兄弟でしょ」



いつからだっけ。俺がカルミアを兄として見なくなったのは。



「なら、負けられないな、カルミア」




そうだ俺らは双子の兄弟だ。





♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




僕の期待以上の結果だった。


あとは、イキシアが自分の価値がどれほどなのか気付かせれば僕の希望通りになる。

表舞台に立つのはイキシアで、僕には裏側の方がいい。



”今の内から根を下ろす必要ない”


そうじゃない、弁えてるだけだ。誰にだって向き不向きがあるのだから僕には僕の得意な方へ進んでいるだけだ。


イキシアは他人へ心を傾けて笑顔にすることが得意だ、一見簡単そうにも見えるが相手の心情を察せる事が出来るからこそ”イキシア”という人間が慕われている。

頭脳や魔法力などの目に見えるものではなく、見えない内側で多くの人々を引き付けることが出来るのは紛れもなくイキシアの人柄だった。

だが、そんな彼の人柄さえも利用する一味は少なくない、それを牽制し時には処分する事の方が僕にとっては得意の事である、言わば、適材適所なのだ。



…シレネは、僕の期待以上に働いてくれた、

もう少し彼女の人柄を利用させてもらおうかな。




「明日から俺もシレネの屋敷に連れてってよ!」





「…だめ」



…譲りたくないものは、ある。

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