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18.イキシア・ダリア・グラジオラス



ぽつりぽつり、とイキシアは少しずつ話始めてくれ、黙って耳を傾けた。


カルミアを尊敬しているが、誰に対しても不愛想だし、勉強の時間には来ないことの方がほとんどだった、らしい。

…ん?勉強は真面目に受けているのかと思っていたけど、そうではないのか。毎朝、きっちりと連行しに来るからてっきり…。


「なんであんなにも父上からも母上からも期待されているのに…兄上は全然改めてくれない」

「ん~…お言葉ですが…無理に改める必要はないのでは?」


イキシアの悩んでいることはわかるし、彼の人間性がどれほど素晴らしいのかも痛感した。

普通であれば嫉妬でカルミアを嫌いになっていてもおかしくない年頃なのに、イキシアはそれどころか心配して気にかけているんだから。

つくづく、この双子は本当に7歳とは思えない程大人びてる。私は今、大人と話しているんだと錯覚してしまいそうになる。



「だが!それでは、兄上はいつまでたっても自覚しないっ!」

「ご自覚されているのでは?」


自分の欠点を、と付け足せばイキシアは目を丸くしていた。


「何度もイキシア様はカルミア様に直接申したのでしょう?」

「そうだが…俺の言葉は届いていなかったということか」


今度は肩を下げシュンと、落ち込んでしまうイキシアの感情も思想も誰が見ても分かりやすくて可愛らしい。それだけ純粋で真っ直ぐな御方で、邪な考えを持つ方々から彼を護りたくなる。

だけども彼が王族である以上、純粋や優しいだけでは国を護ることは出来ない、それこそ彼の優しさを利用する輩も出てくるだろう。



「そうではありませんわ」


1度瞼を瞑り、ゆっくり瞼を開いた。



「…イキシア様、優しさだけでは人は護れません、それどころかご自身も護ることは叶いません」




私の言葉にギョッとして瞼を見開いて驚いていた、あまりにも酷く驚かせてしまったらしい。

そんなにも変なことを言ったかしら?いや、変ではないわね。

イキシアはそのまま目をパチパチしたまま無言で見つめ続けていた、言葉の続きを待っている様だった。


「すべての貴人方が王家に忠実に従っているわけではございません、自身を偽り、嘘で固めて…きっと邪な考えを持つ方々は少なくないでしょう。時には冷淡無常にならなければ、本当に護りたいものは護れません!」


ギュッと手を握り締めながら、イキシアは真剣にシレネの言葉に耳を傾けていた。


イキシア第2王子…


彼はゲームの中でも心優しい王子だが、人間不信だった。



王位継承権争いが本人たちの意思とは関係なく、周囲の貴族たちによって勃発してしまう。そしてカルミアを支持していた者たちから”反カルミア派”が現れ、大きく2つの派閥が出来てしまった。

イキシアの優しさは”反カルミア派”によって無情にも利用され、カルミアが暗殺者に襲われる事態が続発し、そのすべての責任は”反カルミア派”の手によって、イキシアへと押し付けられるのだ。

利用されていたことに気付かず、自身の失態でカルミアを何度も危険な目に合わせてしまった、そしてイキシアの無実もカルミアの手腕により証明されたこともあり、自責の念に苛まれる日々を過ごすことになる。



イキシアの慈愛心は、大きな強みであり、弱点でもある。



「…な~んて、仰いましたが、私はイキシア様にはそのままでいてほしいです」

「……は?」


イキシアがカルミアのような策略王子になってしまうのは、避けたい。何よりもイキシアには純白のままでいてほしい。


「イキシア様はカルミア様が持っていない”他者を想う強さ”があります、ですが反対にカルミア様は”他者への無情”をお持ちなので………」


後半につれて苦々しくなってしまうが、それは仕方ない。





「…誰が無情だと?」



!!

いつから、そこにっ!?

ゴゴゴッと謎の効果音が鳴りそうなほど真っ黒い覇気が放出される。

…カルミアは闇属性、持っていないはずよね……。


「じ、事実ですわ、第3者の意見を聞くことも大切です」

「あ、兄上っ!いつからそこに…!?」


堂々と出てくれば良いものを。

弟が心配で探しに来たのでしょうけど恥ずかしくて出てこれなかったのね。


「……シレネ、今何を考えている?」

「いえ、王子でありながら非社交的で、分相応の身嗜みや振る舞いをせず疎かにしている、なんて微塵にも思っておりません」




「た、たしかに……」


ボソッと小さくイキシアは呟いた。


「……そうだね、まさか燦爛たる公爵家令嬢が、厭わしい思想で婚約者に悪態や厭味で盾突く、なんてないよね」


バチバチッと火花を散らせ笑顔で睨みあう。

「確かに」とまた小さく聞こえた気がしたが、聞こえないふりをして今目の前にいる謀略化した王子へ集中した。





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