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15.策略王子はライバル



コンコン

「母上、カルミアです」


一方的にヴィオラの息子自慢とシレネを過剰に褒めてる話を聞いていると、カルミアが戻ってきた。


「あ、もうそんな時間が経っていたなんて。それじゃあ、シレネちゃんいってらっしゃい」


??

満面な笑みで、遠回しに出ていけと言われたが、言葉の意味が分からず困惑した、カルミアも入室してこないのでシレネを待っているのだろう。


「………それじゃあ、行くよ」


扉を出れば、気怠そうにしているカルミアは何も教えてくれぬまま、さっさと歩きだしてしまった。どうやらこの親子には主語というものがないらしい、それとも私が何でも察することができるとでも思っているのだろうか?




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





「ここは………庭園、ですか?」

「………うん」


訳が分からないままついて行けば、城中にある庭園に着いた。西洋の庭園のように赤い花と白い花が並べられ、水の音が聞こえその方向を見れば立派な噴水があった。


「ほあぁ…っ」

感嘆の声を上げれば意外と情けない声が出てしまった。隣には策略王子がいることを思い出した。もしやこれも策略の中の1つ…?

つい、何でもかんでも疑り深くなってしまう。チラッとカルミアに目を向ければ興味なさげにぼんやりしていた。

仮にも婚約者でましてや、これだけ可愛いシレネちゃんがいるというのに。


「…カルミア様はヴィオラ様が大好きなのですか?」

「は?」


苦虫を潰したような顔に歪め、低く唸るような声だった…重力で身体が押し潰されそうになるが気合で踏ん張った。師匠のおかげかもしれない。

「ヴィオラ様のご指示ですよね?私を迎えに来たのも」


不服そうに顔を背け、コクリと極僅かに頷いた。こうみるとただの反抗期の子供だ。


「カルミア様は素直じゃありませんわね。頭撫でてもらって喜んでいたのでしょう?」


ゴホッッ!とあからさまに動揺し、瞼をカッと見開いてこちらを見た。初めて気怠そうな生意気のガキに一矢報いれたと思えばつい、悪態づいてしまう。


「あら、隠さなくてもよろしくてよ?私たちは子供なのですから。王子だからといって母親に甘えてはならないわけじゃありませんわ。()()()恥ずかしいことなどではありません」


楽しくなってしまったあまりにどこの悪役令嬢?みたいな口振りになってしまう。婚約を結びヴィオラはシレネを好ましく思っていると分かった今、多少の無礼発言をしたとこで不敬罪に処されないことは分かった。オホホホと高笑いもしたくなる。


「なっ…ぁがっ!?」


この前の仕返しもまだだったわね、私の腹の虫はまだこんなもんじゃ収まらないわ!意趣返しよ!


「カルミア様…王子である以上、多くの方々から支持してもらわねばなりません。ですから、きっと…カルミア様が堂々と!照れずに!素直にしていれば今よりももっと多くの方から親しまれるのではないでしょうか?」

「…ぅぐ」


フフッと小さく笑いを付けたし、あくまでもアドバイスですよ?と口に出さずとも伝えた。わなわなと身体を震わして悔しそうに歯を食いしばる姿に、やっと7歳の子供らしい姿が見れたなと微笑ましくもなる。

…ゲームではヴィオラはカルミアを突き放し、彼の存在を恐れていた。カルミア自身もそれに気付き、2人の間に深い溝が生まれてしまっていた。

今を見ていると、なぜあんなにも慈愛に満ちたヴィオラ様が可愛い我が子にそんなことをしたか全く見当がつかない。


こんなにも仲良し親子なのに…ゲームのカルミアも深く傷ついたのを隠していたんだろうな、いや…感情を出すのが苦手なのであれば、誰からも気付かれなかったのかもしれない。


「…カルミア様、今しか出来ませんわよ?カルミア様が()()()()()()()()()()必要はありません」


子供の内は子供らしく素直でいる方がいい。今のまま大人になれば自分の気持ちを押し殺すことが癖になってしまう、それはとても辛いことだ。

まぁ、既にその片鱗を見せているカルミアには遠回しの言い方のほうがいいでしょう。



それに少し前の()()()を知っているからこそ、()からの言葉は聞いてくれるはず。


「…君だけには言われたくない」


顔を俯かせて、口を尖らせいじけてる姿を見れば、少しは届いたのだろう。


「…次は、覚悟しておいてよ」



………、捻くれたく〇ガキめ。中身、26歳+1歳をなめるなよ。

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