表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/97

13.デュランタ・ヒペリカム



「はあ………」


師匠が師匠になって3日目が経過した。

血だらけの服は、師匠の手によって綺麗に洗い流され屋敷の皆には未だに気付かれていないまま過ごすことが出来た。師匠は風と水、2属性持ちで超有能者。水の生活魔法で衣服についた血を浮かして洗い流し、さらには風で乾かしてしまった。クリーニング屋顔負けの速さできれいに仕上げてくれたのだ。


「体調が優れませんか?ハーブティーをご用意いたしましたので少しお身体を休ませてください」


フランネが入れてくれるお茶はどれもほんっとうに美味しくて、香りが引立ち心が安らぐことが出来た。私の寝不足が続いていることで、ルリからは一時的に勉強会休止をしてくれた。

それはとても助かった。何故なら、師匠はあれから毎日私を例の森へと連れ出し、残虐極まりない光景と無茶ぶりをひたすら見せつけてきていた。


寝不足とあやうくトラウマになりそうな光景に精神が削られている。


「ありがとう。フランネ。そういえば、コルチカとのデートはどうだったの?」

「お、お、おじょう、さま!?い、つからそれをっ」


顔を真っ赤にして戸惑うフランネはとても可愛らしい、ルリの読心術特訓のおかげで皆には失礼だがプライベートのこともわかってきた。

「とっくに気付いていたわよ?コルチカにも同じようなこと聞いたら同じ反応だったわ」


クスッと小さく笑えば察して諦めていた。フランネは私から見てもとても魅力的でコルチカがべた惚れなのも頷ける、そして照れたような仕草をする様子を見ればきっと幸せなデートだったのだろう、と想像がつく。

プライベートのことだし、あまり踏み込むのは良くないわね。

「幸せなデートでよかったわ!」

「もう………お嬢様、からかわないでくださいっ」


「しっかり身体を休めてくださいね!」という言葉を残して、フランネは侍女仕事へと戻っていった。私の癒し………。



今夜も森へと連行されるのかしら。


はぁと溜息が一つでる。ただ、師匠は何も全く教えてくれないわけじゃない。

基本は見て覚えろ方式だが、ステータスの確認方法を教えてくれた、やり方はとてもシンプルで生活魔法を使う感覚で魔力を放出し"個人情報(パーソナリス)"と唱えるだけだった。

実際にやってみれば、案の定レベル1で属性には5属性がしっかりと表示された。ステータス画面は本人にしか見えないので安心だ。



「1位がまさかあんなにも鬼畜だったなんて………」



デュランタ・ヒペリカム、彼はイズダオラ王国1を誇る強さを持っている。ゲームの中での登場回数は僅かだが………彼はセカシュウ人気投票ランキング堂々の第1位。非攻略対象者でありながらあのカルミアを凌ぐ大人気ぶりだった!私もセカシュウのキャラでは1番好きなキャラだ!

何といってもデュランタはとにかく強い!イケメンクール!そして忠実!

ストーリー中盤に負けイベントがある、勝てない強敵に遭遇してさらに、大群の魔物に襲われてしまう。主人公達の絶体絶命の危機!………で初登場したのがデュランタ。


魔物の大群を一掃し、さらには強敵ボス戦で一時的に戦闘に加わるのだが、圧倒的にレベルが高すぎて一瞬でボス戦が終わってしまうのだ………。

主人公達のレベル25程に対しデュランタはレベル65。魔王戦の推奨レベル70をみればこの時点でいかほど強いかわかる。

そして極めつけは、彼は後のストーリーで主人公達を護る為に戦死してしまうのだ。魔物の軍勢にたった1人で立ち向かい、主人公達を逃がし………。

主人公達もデュランタを助けに戻ってくるが、既に虫の息、死に際のセリフで『ずっと前から貴方を、お慕いしておりました』と残して息絶えてしまう。



数々のプレイヤーは『なぜ!非攻略対象者なんだっ』『デュランタの救いストーリーをつくってくれ』と嘆きの声が大多数あがっていた。

登場回数が数少ないキャラにしてプレイヤーの心を鷲掴んでしまった凄まじいキャラなのだ。




な、の、に。

実際はとんでもない鬼畜師匠だった。しかも、ゲームは都合よくパーティー全員に経験値が均等に振り分けられるの対し、この世界では私に経験値は一切入ってこない!

………いや、戦っていないから当たり前だけど。

それにゲームはいくら戦っても主人公達は元気だし、プレイヤーのやる気さえあれば無限にレベル上げが出来た。でもその世界観が現実となると、HPとかMPとは別に疲労が溜まる。




現実は辛い………………。



―そして、その夜も例の如く、連れていかれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ