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12.鬼畜師匠は鬼畜



「師匠、私のレベルは1です」


初めて、魔物というものを見て恐ろしい!と思ったのも束の間、一瞬で魔物は切り倒され、あたりは魔物の死骸が山のように転がっていた。

それは全て私の師匠となったこの人、デュランタ・ヒペリカムの手によって。


「わたしは倒せる」


いや、関係ないでしょっっ!!

私はムリっっ!!だってここは、ストーリー中盤でくる森なんだからっ!



♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢




「タイサン………いかがいたしましょう………」


困惑するヴィオラに俺も考えを倦ねていた。

シレネがすべてを思い出したと聞いた時は、心臓が止まるかと思うぐらいに驚愕した。

小さな少女から”生きたい”なんて言葉を聞いてしまえば、今度は胸が酷く痛む。

この子には、協力してあげたい、けれどもそれは、我が国に甚大な被害を脅かす可能性がある。協力をすることは即ち、加担しているようなものだ。

紺碧色の可愛らしい瞳を見れば、抱き締めたくなる。


「それとも………私を不敬罪に処して捕虜にいたしますか?」


お人形のようにかわいいお顔で残酷なことを哀しそうに笑い言う。ギュッと胸が締め付けられ儀式のことも相まって罪悪感で押し潰されそうになる。


「そんなことはしないよ………っ」


ホッと胸を撫でおろしている姿に、俺は最初の思考に戻りまた、考え出した。元から儀式をすることには反対だった、ましてやそれが幼子だなんて。

本当であれば、ホーセに任せるのではなくて王宮に住んでもらいたいくらいだ。


はぁ、シレネの事になると我が息子以上に過保護になってしまうな。


「あ!こうはいかがですか?」


何か思いついたようにニコニコと可愛らしい顔でヴィオラは、人差し指を立てていた。

「デュラに任せましょう!」


!!

天才だ………俺の妻はなんという名案を浮かんだのだろうか。


「それだ!!」


突然のタイサンの大声にシレネはビクッと身体が上下していた、笑顔を保っていた表情は、さすがに目をぱちぱちとさせて驚いていた。

タイサンは窓を僅かに開けて、呟くように彼の名を呼んだ。


「デュラ、ここへ」

「お呼びでしょうか、国王陛下」


デュラと呼ばれた男は、ビュオウゥゥ!と風切り音と共に一瞬で窓に姿を現した。あまり顔を晒したくないのか口にスカーフ巻いていた姿は一見すると盗賊にしか見えない。


「デュラ、シレネが強くなりたいらしい、協力してやってくれ」

「仰せのままに」


デュラこと、デュランタ・ヒペリカムは我が国1の腕を持っており、俺が1番信頼できる側近だ。この男が傍にいれば、万一の事でも対処出来るだろう。

「さて、シレネ。強くなるには先生が必要だろう?彼が君の先生だ!」




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





タイサン国王にデュランタが師匠任命された時はめちゃくちゃ喜んだ。『時間があるときにでもシレネを鍛えてやってくれ』と命令をしていて、本気で毎日城に通い詰めようと思っていた。


屋敷に帰ってからもどうすれば、城へと通えるかしら………なんて考えながらいつもの就寝時間にベッドへ潜った。



「起きてください。時間です」


!!???

目玉が抜けるんじゃないかと思うくらい瞼を限界まで見開いて驚いたわ。

本当に驚いた時って声が出ないと言うけど、本当だった。おかげでルリ達には気付かれなかったけども。………因みにルリ達にカルミアと婚約したことを伝えたらとても驚いていたけど祝福してくれた。



とまぁ、デュラいえ、師匠の”時間があるとき”というのは夜のことだったらしく、国王の命令通りに私を迎えに来てくれたらしい。

こんな小さいうちから夜更かしをして大丈夫かしら?なんて思ったが彼が迎えに来てくれたのととうとう特訓が出来ることに舞い上がった。


………だけどまさか、そのまま森に連れ去られるとは思わなかった。


ここは”ウバガヨイの森”、ゲームでも登場するフィールドでストーリーの中盤あたりに主人公達が通る森だ。

そう、中盤に。決してレベル1でましてや7歳の女の子が来るところじゃない。この森のレベルは45程度。いるのはスライムとかゴブリンとか可愛らしい魔物じゃない!!

状態異常を仕掛けてくるハーピー、攻撃力がやたら高いサイクロプス、多種多様な魔法攻撃をしてくるピクシー、極めつけはこの森のボス、リントヴルムという巨大なドラゴンがいる。


てっきり魔法呪文を教えてくれたり、剣や銃とか扱えるための素振りとかをするもんだと思っていたが、まさかの即実践、魔物の群れの中に放り込まれるとは思わなかった。

………まさか、私を消そうとしている?と思ったが、私が攻撃される前に全ての魔物を薙ぎ倒してくれた。さすがです、師匠。



「師匠、私は残念ながら魔法呪文を使えません。ナイフ以上に重たいものを持ったこともありません」

「ならば、覚えて持てばいいのではないでしょうか」


仰る通り!!ですが、物事には順序というものが………。

「師匠、とは」


抑揚をつけないし、顔は無表情だから訳わからないが、多分問いかけなのだろう。


「先生の事です、師匠。そして師匠、まず戦い方を教えてください。あと私に敬語は不要です」


そういうと目線だけ私に向けて、こくりと頷いた。

多分了解したということ、なのだろう。


「属性」

「4属性すべて使えます」


ルリに隠れて部屋の中でひっそりと生活魔法を実践していたおかげで、手からはライターぐらいの火を出せるし、水鉄砲や扇風機弱ぐらいの風、あとは土を少し盛り上げる程度の事は出来た。なのでそのまま実践して見せた。

特に驚く様子はなく「見ろ」と一言。


そういうと、師匠の手から緑色の光が浮かびだし、正に魔法陣が浮かび上がってきた。

夢に見ていた魔法らしい魔法を目の当たりにして気分が舞い上がる。


光速射貫(シェレリセスクーパム)


ザシュ!グシュグチャ……………………


師匠が呪文を唱えた瞬間、魔法陣は消え確かに地面にいた魔物の群れは一瞬にして消え、グギャア"ア"ァァと悲鳴が聞こえたと思えば内臓がボトボトと落ちてくる。

魔物の形だったものはもうどの肉片がどの魔物のものだったかなんて判別つかない。少し遅れて血飛沫がゲリラ豪雨かと思う程ビシャアアァアとあたり一面に降り注いだ。


勿論、その血の雨は私にも充分に降り注ぎ、血腥いにおいが鼻について気分が悪くなった。



「わかったか」

「師匠、私のレベルは1です」


その魔法はレベル40程度で習得できる魔法だ。


惨殺、では足りないほど凄惨な現場を見て、そう答えるのが一生懸命だった。

師匠の魔法で軽く10匹は肉片と化したが、それでも魔物はそこらじゅうにいるし、これだけ死骸の山があるにも関わらず向かってくる。


師匠はそんな魔物どもを今度は剣で一瞬にしてバラバラにしてしまった。


「わたしは倒せる」





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