1,おはようございます。
それは本当に突然だった。
頭打ってもいない、意識を失うこともなく突然、前世の記憶が舞い降りてきた。
私は、普通の平凡な独り暮らししている社会人だった。
結婚どころか恋人もいない26歳の女性。
ゲーム大好きで仕事終わりにはゲームをやることが日常で、毎日休日もゲームで時間を費やして過ごしていた。
私が死ぬ直前までにやっていたゲームは”セカイの終焉と始まり”という大ヒット作をやりこんでいた。
このゲームは恋愛RPGでいわゆる乙女ゲームも楽しめて本格王道RPGも楽しめてしまう!
光属性の主人公は冒険する内に好感度が高くなっていく攻略対象者と甘々な恋愛を楽しみつつ、魔王を打ち倒すべくクエストやダンジョンで魔物を攻略対象者たちと共にバンバン倒して、レベルをあげていく。
レアドロップアイテムを手に入れるまで何度も何度も同じクエストやりこんで………
魔王倒したあともしっかり裏ボスがいたけど、まぁこれがめちゃくちゃ鬼畜設定で主人公たちがレベルカンストして挑んでもアイテム準備万端、装備万端で挑まないと普通にやられる。
ぶっちゃけ倒せたのも運が良かったと思っている。
ネットの評判は『倒せん』『ここにきて難易度上げすぎじゃないのか』と嘆く口コミがたくさんだった。
私はRPGメインだったけど恋愛要素もとてもよかった。
攻略対象者たちの過去話を聞くとなんとも暗い過去を背負っていて、主人公がとても素晴らしい事を言って立ち直らせて……正直、恋愛要素はあまり興味なかったけど。
ただ、攻略対象の好感度が一定以上高くなると、ストーリーに変化があったり、2人だけのクエスト発生とかもあったからやりこみ勢の私にとっては楽しかったし、恋愛要素を重視しているプレイヤーからも狙いのキャラクターをパーティーに必ず入れて好感度を上げて楽しんでいたらしく、女性だけでなく男性からも支持されていた。
まぁ、つまり私は、それだけやりこんでいた大好きなゲームだ。
いつも通り休日は”セカシュウ”をやっていて5度目の裏ボス挑戦している途中で、
コンビニに行ったことは覚えている。
最後に聞こえたのは人の悲鳴、そして最後に見たのは目の前にトラックが突っ込んでくるところだった。
つまり私は…………………………死んだのだ。
そして今、どこかで目覚めた。
どこ?ここは?
急に前世の記憶が思い出されたことで処理に追いつかない脳がズキズキとし、たったいまこの身体も目覚めたかのようにビクッと1度軽い痙攣を起こした。
改めて冷静に見ると自分がいた部屋はとても広い部屋で、そしてさみしさを感じた。
大きな窓に大きなカーテンは閉め切られていて、隙間からは陽光が差している。
無駄に広い部屋は一体何畳分あるのだろうか………少なくとも前世で過ごした8畳アパートの5倍はあるだろう。
それだけ広い部屋に対し、豪華絢爛なテーブルとおそらく大人3人は余裕で座れるであろうソファーがひとつ、そしてキングサイズのベッド、家具はそれしかないのだ。
これだけ煌びやかな家具たちなのにとても寂しそうにぽつんと置かれている。
そして、私自身もソファーに座ってるわけでも、ベッドで寝ているわけでもなく床に座り込んでいた。
一瞬、死んだのではなく誘拐された?とも過ったがどうも違う。
なぜなら立ち上がってみると明らかに目線が低いからである、前世では160センチほどあったし今の私はソファーの背もたれと変わらない目線だ。
鏡さえないこの部屋で私自身の顔を見ることができないが、子供のような可愛らしい手足。
なんとなく感覚で女の子だなと思ったのと、何よりも驚いたのは自分の髪だった。
真っ白い毛はなんと立っている状態でも、床についてしまうほど長く、正直あまり手入れはしてないのかな?と思うほどごわごわしていた。
…………せっかくきれいな髪色をしているのにもったいない。
正直、ここまでくれば自分が転生したんだなということ、そして都合よく思い出された前世と大好きなゲーム。
この流れでいけばここは”セカシュウ”の世界なのでは?と妙に高揚感が湧き上がってくる。
っっっやったぁぁぁぁあああ!!!!
て、待て待て、まだ決まったわけじゃない!まずはここがどこで、そして私が誰なのかも確認しなくては!!!
この部屋から出てみよう!
やっとその考えに至った私は、これまた無駄に豪華で重たい扉を一生懸命開けて、1歩部屋の外に出てみた。