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シュヴェンターナ

 陽介はミフユに手伝ってもらいつつ、持ち込んだPCパーツを即席のボードに組み込みながらサザンクロスへと接続していく。


陽介自身、何をしているか理解できてはいないものの、完成図というかビジョンが繰り返し頭に浮かぶのでそれに近づけるよう作業していたが、取り掛かってから2時間ほどでとうとうサザンクロスのシステム再起動に成功してしまったのだ。


ミフユが興奮して抱きつき無邪気に喜んでいる姿は、反則的にかわいかった。


「すごいすごい、陽介すごい!」


起動したコンソールを操作し始めるミフユは次々とエアモニターを起動し、陽介にこれを見てとうれしそうにツインテールを揺らしていた。


「待ってよミフユさん」


SF映画やアニメで出てくる空中に映像を投影するシステムが機能している。


見たこともない文字列だが、なんとなく意味が分かる。


赤い文字が点滅しておりエラー表示のようだ。どうやら推進システム異常や気密が確保されていない、あとはファルベリオスたちが最重要課題と位置付けていたトランスポンダーの起動と通信システムやレーダー機能の回復にはまだほど遠いようだ。


 だがこれは大きな前進だった。


さっそくロッドとイクスがバリアボックスという施錠された隔壁を開くと、中にはスーツケースほどの大きさの金属製ケースや複数の武器が収納されたボックスや弾倉ケースが出てきたのだ。


「これでエネルギー不足から解放されるわ! もうほんっとぎりぎりだったのよ」


「よかったね」


「よかったねじゃないわよ。陽介のおかげなんだからね」


ミフユの笑顔が眩しかった。戦闘モードのときは鋭く凛々しい表情なのに子供たちと遊んでるときは幼い女の子のようなはしゃぎようだった。


トランプで負けると本気で悔しがって、子供たちが接待プレーを持ちかけるような気づかいをされたりと、アンバランスさがまたおもしろい。


本気で遊んでくれるミフユが気にいったようで、地下の水シャワーに一緒に入って頭を洗ってもらたったりしているようだ。


 バリアボックスから回収されたケース類が運ばれたのは、校舎二階に用意された海賊チームのための教室だった。


2年A組のため、瑞萌先生からはA組生徒などと呼ばれることが多々ある。


「一族の宝だったもんだからな、今更使い物になるかは怪しいところだがどんな塩梅だ?」


「マスター……シュヴェンターナのシステムはまだ生きています。むしろ活性化していると言って良いでしょう。システムログによれば、ダナラベルラ内に保管されていた数値がこの台間高校に到着後から爆発的な伸びを示しています」


ロッドの頭に?が浮かび、いったいどういうことですぜ? とファルベリオスに視線を送っていた。


 そこには大型の自動販売機のような真っ黒なボディーをした機械? 金属ケースのようなものが奇妙な光の明滅を繰り返していた。


陽介はモノリスみたいだと思ったが口に出さないことにする。


「キャプテン、いつか聞こうと思ってたんですがね、こいつはいったい何なんですかね?」


「お前らには言ってなかったのか、そうだな説明めんどくせえ、イクス」


イクスはその流れを予測していたのであろう。


すっと立ち上がると?マークを頭に浮かべていたロッドとミフユ、それにほぼマネージャー扱いになってきた陽介に向けて説明を始めていた。


シュヴェンターナとはキャプテン・ファルベリオスがある人から託された古代遺物ということになっています。


主な特徴は、人の感情から生み出された強い【意志】をナノクリスタルというサイキックマテリアルに変換する超常的なシステムを有しています。


驚くのはまだ早いですよ陽介様。


シュヴェンターナの最大の特徴は、この変換システムではありません。


生み出されたナノクリスタルを使用し、設定した物質や部品、生命体でなければサザンクロスの損傷した武装なども精製できる驚異のメカニズムなのです


「なんとなくは分かったんだけど、僕はその【意志】の種類が気になるなぁ。もし苦痛や憎しみとかだったら破壊したほうがいいと思う」


「さすがは陽介様です。このシステムを我らがヴェンディダールの宿敵、超銀河帝国がうまく扱えなかった最大の理由とも重なります。シュヴェンターナが求める人の【意志】とは、【感謝】の思念であるとの分析結果が出ています」


「感謝か……それは素敵ですね」


「実は密かにシュヴェンターナが起動していまして、この避難所の人たちから発せられた感謝エネルギーとでもいいましょうか、それらが変換されたナノクリスタルが既に24万ユニットも貯まっていたのです」


「す、すごいの?」


「す、すごいんじゃないかしら?」


「きっとすげえんだよ」


「お前らなぁ、まあ海賊はそれぐらいアバウトでいい」



◆ シュヴェンターナ


 周辺に溢れる強い意志、主に「感謝」の念をナノクリスタルに変換し蓄積することができる。


サイキックマテリアルであるナノクリスタルは仮想上の物質とされてきたが、シュヴェンターナはナノクリスタルから端末上で設定した機械や無機物を精製することが可能。


大きすぎる場合はパーツごとの精製になるが、生物を含む物は不可能。


 植物の種は不可能であるが、弾丸は可能ということになる。


そのため医薬品の合成は可能。


 これにより宇宙海賊たち2年A組はサザンクロスのトランスポンダーと通信、レーダーシステムの修理に必要なパーツを精製することが可能になったのだが一つ大きな問題ができた。


「ポイントが足りない」


「つまり避難民にまた感謝されるようなことをしないとだめってことよね? なんか恩着せがましくて私嫌いよ」


ミフユがばっさりと切り捨てたが、キャプテン・ファルベリオスも同様の意見であったようだ。


「ミフユの言う通りだ。感謝してもらうためのご機嫌とりなんぞ俺たちの稼業には必要ねえ」


「俺も賛成だ。本来なら海賊は奪ってなんぼですぜ?」


物騒なことになりそうな気配がする。陽介は居心地が悪くなり、どうしようかと思っていた時であった。


「陽介様、何か良い案がございますか? このようにこいつらは融通の利かないバカばかり」


「ちょっとイクスひどいじゃないのよ」


イクスは陽介の隣にぴたっと張り付くと、腕を組んで甘えるように答えた。


「ようはメンツの問題でありましょう? これだから海賊は……ペッ!」


「むむ~、それはそうとなんで陽介にくっついてるのよ! ちょっと陽介もにやけないでよ」


なぜか反対側にミフユが抱きついてあまり豊かでない胸が腕に当たる。


「えっと、そのつまり防衛機能を充実させるってのはどうでしょう? ポイントの低い防衛部品を精製して設置すればお互いのメリットになりますから。皆さんはサザンクロスの修理が円滑に行える環境整備をしただけ、みんなは安全に……そうだ後は食糧事情の改善なら双方にメリットありますよね?」


「さすが陽介! その案を良しとする! イクスは防衛装備品の選定をミフユやロッドと進めろ。俺は陽介や瑞萌先生たちと相談してこよう」


「ああ、私もそっちが……っていってらっしゃい。ほらやるわよイクス!」

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