もぐもぐタイム
食欲の秋である。もぐもぐ公園は、優しい色の夕空に包まれていて、ベンチでは澄ちゃんとバルタンが影を並べている。空にはまるで羊の群れのように鱗雲がこまかい雲の斑を敷きならべている。
「空には音階があるね」とバルタン。
「空に音階?」澄ちゃんは、はてなのブーメランを空に三角投げした。
「ドレミファ空だね」バルタンの答えで、ブーメランは空から「ラ」の字を取りさって、澄ちゃんの手にラ・ラ・ランド。
空からラが取れて、バルタンがまた言った。
「ドレミファそだね」
すると澄ちゃんは壮大な幻を見るのだった。ミステリーサークル目掛けてストーンヘンジが辷ってくるのである。地球儀上のカーリングである。
「さぁ、もぐもぐタイムだ」
バルタンがどこからともなくホットドッグを澄ちゃんにシザーハンズした。
パクつき―――それは回避され、雨ざらしにされ、野ざらしにされなければならない。しかし、事実は小説よりも奇なり、である。人前では含羞の色を浮かべても、エビかザリガニのような者の前では、それは打ち消された。澄ちゃんは口の倉庫の扉をガラガラと十分に大きく押し開いて、それにパクついた。
「パクつくに限る。それはホットドッグに対する礼儀なんだ。ナイフとフォークで一口サイズに・・・、なんてありえない」
バルタンは星人らしく、目を瞬きながら言った。
『バルタンのハサミは使いようでしょ。そのハサミでサイコロ大にしてくれてもいいのにね』
と澄ちゃんは内心、業腹であったのだが、北海道はでっかいどうと、おおどかな気持ちで、食べ終わるとこういった。
「そだねー」
開けっ放しの、高い声が空に吸われると、今度はバルタンが幻を見るのだった。夕日が隈無く夕空を動いて、パックマンのように、夕雲を食べていくのである。