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1.戦う理由

 アイリー達は朽ちた貴族の屋敷の前で邪教団の幹部と戦っていた。まだ早朝なので薄暗く、日が昇り始めたぐらいだ。


「不死身のボズの相手はわたくしがしますわ。アイさんは捕まってる人の方へ」


「こっちの方が数が多いし、レンちゃんとシンちゃんなら大丈夫だよ」


「アイ、射線上に入らないで。その赤いのはあたしが倒すって言っただろ」


「エルは先にそっちの兵士型を倒す予定だったでしょ」


 しかし、チームワークが取れず、敵に翻弄されている。ここ数日間ずっとこんな感じだった。


「アイちゃんは先に奥の魔術型を倒す。エルちゃんはリムちゃんの援護、リムちゃんは敵のボスを逃がさないように注意して」


「了解」


「分かった」


「了解ですわ」


 そんな中、唯一いつも通りのセリュツが一番頼りになっていた。アイリーは魔術型の魔法を避けつつ一気に切り裂く。エルータはオクシオで不死身のボズと言われる幹部の赤色の巨鎧の足を射抜いて機動力を落とした。リムールはルルトで赤色の巨鎧に斬り込み、その腕を斬り落とす。が、その腕はみるみると生えてきた。


「今ですわ!」


 ルルトは再生が終わらないうちに赤色の巨鎧の胸に剣を突き刺した。が、剣は途中で止まり、徐々に胸から押し出される。


「なんなんですの?」


「マスター、赤色の巨鎧の特殊能力は高速再生です。コアを破壊しないと倒せません」


「リムちゃんコアを狙って!」


 アイリーは周りの騎士型を倒しつつリムールに向かって叫んだ。


「自分が動きを止めるわ」


 セリュツがソシアで蜘蛛の糸のような魔法を飛ばし、それが赤色の巨鎧に絡み付く。


「小癪な!!」


 赤色の巨鎧から男の濁ったような叫びが聞こえる。赤色の巨鎧は絡み付いた糸から何とか抜け出そうとした。


「とどめです!」


 抜け出す前にルルトが背後に回り込み、剣で巨鎧のコアを突き刺した。


「おのれーー!!」


 赤色の巨鎧の再生が止まる。ルルトはそのまま搭乗者である不死身のボズにトドメを刺したのだった。


「皆さん、囚われた人の救出が完了しました」


「みんな無事、嬉しい」


 レイネンのロガンとスーライと同化したシリミンが屋敷から少女達を連れて出てくる。残った敵の巨鎧も全て破壊して、邪教団の企みは何とか阻止出来たのだった。

 超大型機獣を倒してから数日が過ぎ、アイリー達はいくつかの依頼をこなしていた。そんな中、手に入れた情報で邪教団の企みを知り、今回の救出劇が行われたのだ。双子の行方は分からないが、幹部が倒された事で邪教団が痛手を負ったのは確かだった。



「マスターお疲れ様です。このところ調子が良くないようですね」


「うん、まあね……」


 コクピットの中のアイリーにイルナが語り掛ける。捕まっていた少女を機動馬車に乗せて町まで運んでいるので、格納庫にいくつかの巨鎧が収納出来なくなった。なので、イルナとオクシオとルルトの3機は機動馬車に付いて走っていた。歩行自体はイルナがしてくれるので、アイリーはコクピットで座っている形で疲労はしない。

 アイリー達の調子がおかしいのには二つの理由があった。一つは超大型機獣を退治した事で有名になり、各地から救援依頼が来ている為である。勿論全ての依頼は受けられないが、出来るだけの依頼はこなしていた。そのおかげで邪教団の幹部が1人倒せたので、有名になるのが全部悪い訳ではないとアイリーは思っている。

 問題はもう一つの理由、シリミンから告白された事にあった。


「はあーー……」


 アイリーは溜息をしつつ数日前の事を思い出す。


********


「アイお姉ちゃん、ボクのつがいになって欲しい!」


「え?つがい!?」


 アイリーは言葉の意味がすぐには理解出来ない。


「えっと、それって人間で言う夫婦って事でいいの?」


「うん。ボクが奥さんでアイお姉ちゃんが旦那さん!」


「待って下さい、アイさんは男性ではありませんわよ」


 リムールが慌てておかしな点を指摘してくれる。


「アイお姉ちゃんこの前オスになってた。またオスになればいい」


「ああ、男装の事かあ。シンちゃん、あれはフリをしただけで、本当に男の人になった訳じゃないの」


 アイリーはシリミンが勘違いしていたと分かってホッとする。


「オスになれないの?

別にそれでもいい。ボクはアイお姉ちゃんの事大好きだから」


「ちなみに魔法都市では女性同士で子孫を残せる魔法の研究も進んでるわよ」


「ちょっと!セツはややこしくなるから口を挟まないで」


 エルータがセリュツを睨んだ。エルータとリムールは顔が怖くなり、レイネンは動揺している。アイリーはとにかくこのままだとダメだと頭を働かせる。


「そもそもなんでシンちゃんは突然そんな話をしたの?」


「自分より強い者と結ばれるのが獣人の願い。アイお姉ちゃんボクより強い。つがいにしたい」


「アイが強いのはイルナのおかげだよ。私自身が全然強くないのはシンちゃんも知ってるよね」


「そうじゃない。力の強さが本当の強さじゃない。アイお姉ちゃんの心はボクよりずっと強い。他のみんなよりずっと強いニャア」


 シリミンは真剣な目をしている。アイリーは自分にそんな強さがあるとは思っていない。自分だけでは何も出来ないが、イルナや、周りのみんなのおかげでここまでやってこれたと思っているからだ。


「それはわたしもそうだと思います」


「レンちゃんまで?」


「わたしもアイさんの言葉に救われました。アイさんが強いのは確かです」


 レイネンにまで言われて気恥ずかしくなる。だが、これでは更に問題が深まってしまうとアイリーは考える。エルータかリムールが何か言ってくれるかと思ったが、二人は口を閉ざしていた。


「ちょっと待って、じゃあシンちゃんはアイより強い人が出てきたらその人とつがいになるの?」


「アイお姉ちゃんより強い人?そんな人いないと思う。でも、アイお姉ちゃんより強くて、ボクが本気で好きだ、って思える人がいるならつがいになるかもしれないニャア」


「じゃあ、まだ決断は早いよ。この世界にアイより強い人なんて山のようにいるだろうし、その中にシンちゃんの好みの男の人もいると思うよ」


 アイリーは必死になって言葉にする。


「アイお姉ちゃんはボクの事嫌いなの?」


 しかし、すがるようなシリミンの瞳にアイリーは胸が痛くなった。


「ち、違うよ。シンちゃんの事は大好きだよ」


「だったらつがいになろう」


「そ、それも違うの。アイもまだ結婚するには早いと思うし、シンちゃんもその内別の人が好きになるかもしれないよ。

そうだ、コミアスさんみたいにカミサマを持ってる獣人が他にもいるんだよね?」


「うん、他にもいるって聞いてる」


「だったら、その人達の中にシンちゃんより強い人がいるかもしれない。その人達を見てから決めてもいいんじゃないかな」


 アイリーはとにかく結論を先延ばしにする方法を提示した。思い付きだが、シリミンを冷静にさせるのにはいい案だと思った。


「うん……。アイお姉ちゃんがそう言うなら、分かった」


 シリミンは浮かない返事をした。周囲からはホッとした空気が流れる。セリュツだけはニヤニヤと笑っているが。本当ははっきりと告白を断ればいいと分かってはいるのだが、シリミンが傷付くと思うとそれは出来なかった。


「じゃ、じゃあ、マリンゴの町の様子を見に行こう」


 アイリーが切り出してこの話はとりあえず終わったのだった。


********


 今思い返してもあれ以上のいい案は出て来ていない。ただ、それ以降みんなとの関係がどこかギクシャクしているのは確かだった。今のところ致命的なミスは無いが、それも今後どうなるか分からない。ハンターの集団で男女間の恋愛が元で集団を解散する事になった、という話を聞いた事はある。だが、アイリー達は女性だけの集まりなので、こんな事が起こるとは思っていなかった。


「イルナ、どうすればうまく行くのかな?」


「シリミン様との件ですか?ワタシには人間の恋愛感情に関する情報が無い為アドバイス出来ません」


「そうだよねー」


 回答は何となく分かっていたが、どうしてもイルナを頼ってしまう。


「形だけでも夫婦になれば状況は変わるのではないでしょうか?」


「ダメダメ、それはちゃんと好きな人同士でじっくり話し合って決めないと」


「マスターはシリミン様の事が好きだと聞きましたが、何か違うのですか?」


「イルナには分からないかもしれないけど、アイのシンちゃんに対する好きは、恋人に対する好きじゃなくて、妹に対する好き、みたいな感じなんだ」


「確かに分かりませんね。肉体関係を持ちたい、子孫を残したい、性欲的な好きではない、という事でしょうか?」


 アイリーはイルナの言葉を聞いて、シリミンと男女の交わりをしている姿を思い浮かべる。すると顔が一気に熱くなってきた。急いで想像を打ち消す。


「そ、そういう話でも無いの。そもそもシンちゃんにそういうのは早いっていうか。とにかく、あんまり変な話はしないで」


「申し訳ありませんでした、マスター」


「あ、イルナは悪くないからね。アイの相談に乗って貰ってるだけだし。

……アイ自信がまだ好きっていうのがよく分からないんだと思うんだ。本で読んだ恋物語は素敵だなって思うけど、それに自分が当てはまらないっていうか」


 アイリーは頭の中の思いを言葉にしてみる。シリミンの言っている自分より強い人を好きになる、っていうのは何となく理解出来た。アイリー自身も周りの支えてくれるみんなやイルナの事が大好きだからだ。でも、それで結婚する、というところまではどうしても進まない。勿論周りの人が女性だというのもあると思う。


「ワタシは色々な情報を収集し、整理し、理解しようとしています。マスターも同じように今は収拾する段階なのかもしれません」


「そうだね。アイも色々経験していけば、分かるかもしれない」


「ワタシが話を聞く事で少しでもマスターが安らぐのでしたら、いつでも話して下さい」


「ありがとう、イルナ」


 アイリーはイルナに対するこの想いは何なんだろう、と少しだけ思うのだった。



 囚われていた少女達を町まで運ぶと町の人から感謝の言葉を次々とかけられた。が、どこか人々の様子がおかしい。


「何かあったんですか?」


「ガダルザン砦が落ちたって噂が流れててね、城の方も危ないんじゃないかって」


 アイリーが近くに居た婦人に尋ねると、そんな答えが返ってきた。


「ちょっと待って下さい。ガダルザン砦は紅薔薇騎士団が守っていた筈です。落ちるなんてありえませんわ。帝国が流したデマじゃありませんの?」


 それを聞いたリムールが興奮気味に婦人に詰め寄る。


「いや、あたしも詳しくは知らないよ。ただ、町中の噂になってるのは確かさ」


「情報ギルドに金を払えばそういう噂も流せるだろうけど、それをやる意味はあんまりないんじゃないかしら」


 セリュツが冷静に分析する。


「すみません、アイリー・クリアロンさんはどちらでしょうか?」


 そんな中、一人の男がアイリーを探していた。


「私です。何かご用が?」


「クリアロン様宛に電報が届いています。電報局まで来て下さい」


「分かりました。

みんな、ちょっと行ってくる」


 そしてアイリーが手にした電報を送った相手はまさかの人物だった。



「え?国王様から電報が?」


 エルータが驚く。とりあえず他の人に聞かれないように機動馬車の中にみんなを集めていた。


「うん。それで内容も、噂になっている通り、帝国の進攻でガダルザン砦が落ちた事が書いてあった」


「電報局に国王様を騙る事は不可能ですから、それは事実ですね」


「アイさん、他に何が書いてありましたの?紅薔薇騎士団については?」


「姫騎士様が負傷して、紅薔薇騎士団の運用が難しくなっているって。それで、私達に急いで城まで来て欲しいって」


「こんな一介のハンターに援軍要請とはねえ。まあ、超大型機獣を倒したらそうともいえないかしら」


 アイリーもなぜ自分達に、という思いはあった。リムールは青騎士の娘で聖教団の神官騎士なので、リムール宛に電報が届いたのならまだ納得出来た。しかし実際はまだハンターになったばかりのアイリー宛に届いているのである。


「アイさん、行きましょう。急がないと首都まで敵が進攻を開始しているかもしれませんわ」


「そうだね、リムちゃんの両親もいるしね。私達に何をして欲しいのかは書いて無いけど、とにかく行こう」


 アイリーの意見に反対は無く、一行は町からのお礼もそこそこに急いで王都メロガダンへと機動馬車を向かわせた。



「姫騎士様が戦闘で負ける筈がありませんわ。暗殺でしょうか、それとも何か卑怯な罠に……」


 リムールは機動馬車の休憩室でも落ち着かず立ってうろうろしながら喋っていた。


「リム様、まだすぐには王都に着きません。落ち着いて下さい」


「落ち着いてなんていられませんわ。戦力は拮抗しつつも、帝国側が疲弊し始めてた筈でしたのに。まさか黒騎士とかいうのが何か卑劣な手段を取ったのかもしれませんわ」


 黒騎士の名はアイリーも知っていた。帝国側に最近入った傭兵で、漆黒の巨鎧を操り、無敗を誇っているという噂だ。


「戦争は1機の巨鎧で変わるものじゃないのはリムだって知ってるだろ。卑劣な手段を使えば帝国の国としての威信にも関わる。もっと戦局がどうなってるか詳しく聞かないと分からないよ」


 エルータがリムールを落ち着かせるように言い聞かす。正直アイリーに戦争についてのきちんとした知識はそれ程無い。強い巨鎧が沢山いる方が勝つ、ぐらいのイメージだった。セリュツなら戦争についての知識もそれなりにあると思うが、今はシリミンと運転席にいるので話は聞けない。


「紅薔薇騎士団が敗れたとしても他の騎士団がまだ王都には居ます。帝国側にも被害は出ている筈ですし、すぐには攻め込んで来ないと思います」


「もちろん他の騎士団が強い事は分かっていますわ。でも、メルとチナが敗れるなんて」


 メルは姫騎士メレル・メロガダンの事で、チナは紅薔薇騎士団の副団長のチーナ・イラゴイの事だろう。前にリムールから二人が幼馴染と聞いており、心配は猶更なのだろう。


「電報には負傷したとしか書いてなかったし、大した事は無いかもしれないよ」


「簡単な傷なら回復魔法で治って、すぐに戦線復帰している筈ですわ。ですから、その傷は命に係わるほどだったと思います」


「そうだよね、ごめん……」


「いえ、わたくしも心配し過ぎなのは分かっていますわ。ごめんなさい、少し頭を冷やしてきますわ」


 リムールが格納庫の方へ移動し、レイネンもそれに付いて行った。休憩室にはアイリーとエルータの二人になる。


「なあ、アイは戦争に参加するつもりなのか?」


 エルータがいつになく真剣な顔で質問をしてきた。


「戦争に?戦争で人殺しはしたくないな。でも、王都で困っている人がいたら助けたいとは思ってる」


「王様の前に行くって事は、戦争に参加するのと同じ事だ。アイはそれを分かってないよな」


「まだそうと決まった訳じゃ……。

ううん、違うよね。アイだって何となくは分かってたよ。でも、そうじゃ無ければいいな、っていう気持ちがあった」


 アイリーは素直に答える。電報の内容を読んだ時、国の一大事だと思った半面、行ってはいけない、という気持ちがアイリーにはあった。アイリーは人助けはしたいが、国同士の争いには関わりたくなかったからだ。


「今ならまだ間に合う。あたし達は機動馬車から降りよう。リムとレンは王都に戻ろうとするだろうしな。セツは分からないけど、シンは少なくとも戦争とは無関係だし、行きたいとは言わないだろう」


「でも、王様から私宛に電報が来たんだよ。行かなければ国賊扱いされるかもしれないよ」


「国賊って言われて国を追い出されるのと、戦争で死ぬのとどっちがいい?戦争っていうのは誰がいつ死ぬか分からないんだぞ。確かにイルナは強いかもしれない。でも、王国最強と言われた姫騎士様も倒されている。イルナだって長時間戦っていられる訳じゃないだろ?」


 エルータの言う事はよく分かった。自分の事を思って強く言っている事も。そして、何より自分の覚悟が出来ていない事がよく分かった。前の山賊紛いの敵と戦った時と一緒だ。


「ごめん、エル。今の話は誰にも言わないで。王都に着くまでまだ時間があるから、もう少しだけ考えさせて」


「分かった。一つだけ言わせてくれ。あたしはアイがどんな答えを出そうと、それに付いて行くよ。あたしはアイが守りたいんだ」


「ありがとう、エル」


 アイリーは何とか笑顔を作ってエルータに微笑んだ。



「イルナは戦争に参加する事は勿論反対だよね?」


 半日ほどエルータに言われた事を考えてみたが、きちんとした結論は出せず、アイリーはまたイルナに乗って語り掛けていた。


「戦争の規模、両者の戦力差によりますが、避けられる戦いでしたらワタシは参加しない事を望みます」


「そうだよね。じゃあ、ちょっと話を変えると、今のアイとイルナだったらどれ位の巨鎧を相手に戦える?敵はこの間の邪教団の兵士型ぐらいだとして」


「能力の向上を行わない状態で、同時に5機の巨鎧を相手に2時間ほど、60機はほぼ無傷で戦えると考えられます。今のマスターの体力、ワタシのエネルギー量からそこが限界です」


「それってみんなを守りながら出来るかな?」


「状況によって異なる為、それを正確に答える事は難しいです。ワタシが見た今の皆様の戦力ですと、エルータ様のオクシオは精霊力の容量に依存する為、長時間の戦闘は難しく、近接戦も苦手です。、あくまで後方からの援護、精霊力が切れたら撤退、という動きでしたらマスターが守る必要は無いと考えられます。

リムール様のルルトはワタシよりエネルギー容量が少ない為、1時間ほどで一時撤退、光輝石の交換が必要です。また、装甲の強度もワタシより落ちる為、他の巨鎧と協力して戦う事が望ましいです。

レイネン様のロガンはステルス機能をうまく使えば敵の攻撃を受けずに敵を撃破出来ますが、味方にもそれは見えないので同士討ちの恐れがあります。姿を現した状態ですと、装甲も薄く、エネルギー量も限られますので、ルルトと同じく協力して戦う必要があります」


 イルナが過去の記録から戦力を説明してくれる。が、アイリーの頭にはあまり入ってこない。


「セリュツ様のソシアもオクシオ同様、魔力に左右される部分があり、あくまで援護の形になるでしょう。敵の巨鎧を操る特殊能力は戦場をかき乱す方法としてはかなり有効です。

シリミン様のスーライはエネルギーが限界になるまでは単騎で戦っても問題無いでしょう。ただ、エネルギーが切れた時点で無力化する為、そこを注意する必要があります。

今まで話した点を踏まえて、連携を取り、協力し合えば、30機ほどの敵の巨鎧の集団でも6機のこちらの戦力でも大破無しに勝てると考えられます」


「協力かあ」


 アイリーは最近のギクシャクした関係を思い出す。戦争の話が来て、それも大分上書きされた気もするが、シリミンの気持ちは変わらないだろうし、解決した訳ではない。


「マスター以外の方は戦争の参加に賛成なのですか?」


「えーと、まだ聞いてない」


「でしたら、マスターはまず皆さんの意見を聞かれたらどうでしょう。それを踏まえてから決定した方が合理的かと」


「そうだよね。シンちゃんは特に戦争に関係無いんだし。セツさんも別に王国民でも無いんだよね。普通に考えたら戦争には参加しないか」


 アイリーは確かにイルナの言う通りだと納得する。


「ワタシはマスターの決定に従うだけです。その中でもマスターが生き残れる一番の方法を考え、提示いたします。マスター自身がやりたい事を決定して下さい」


「ありがとう、イルナ。みんなに聞いてくる」


 アイリーは少しだけ気持ちが軽くなり、みんなの元へ向かった。


「みんなに確認しておきたい事がある」


 一旦機動馬車を止め、アイリーは休憩室に全員を集めた。


「このまま王都へ入ると、国王様からの命令で戦争に参加する事になる可能性があります。私は戦争には参加したくない、という気持ちがある。でも、私も王国の民だし、戦争で困っている人達を助けたいとも思ってる。私のお父さんは昔戦争に参加して、そこで亡くなりました。だから、戦争は嫌いだし、したくない。まだ私は迷ってる。だから、みんながどう思っているかを聞かせて欲しい」


 アイリーは素直な気持ちで語る。そして周りのみんなの顔を見つめた。


「じゃあ、あたしから。あたしは戦争に参加するのは反対だ。まだ死にたくないからな。でも、アイが戦う事を決めたなら、それに従う。今までの無力なあたしじゃなく、今はオクシオがある。自分の身を守る位なら出来るからな。つまり、結論としては今は保留、と思ってくれていい」


 エルータは前にアイリーに語った通り、嘘偽り無く言ってくれた。本当はエルータを危険な目にあわせたくないが、エルータの気持ちは優先したいと思った。


「では、次はわたくしが。わたくしは元々国を守る騎士を目指していました。戦争をしたいと思う訳ではありません。ですが、紅薔薇騎士団が敗れたのでしたら、誰かがそれを埋める必要があると思っています。聖教団としても戦争には既に参加している者がおります。国王様から直接の命令があるのでしたら、わたくしは喜んでこの身を捧げますわ」


 リムールが国を思う気持ちはこの中で一番なのだと思った。そしてアイリーはその手伝いをしてあげたいとも思ったのだった。


「わたしも自分の考えを述べます。わたしの命はシュワイア家に救って頂きました。その時からシュワイア家の為に生きてきて、その考えは今も変わりません。リム様が戦争に参加するのでしたらそれを手助けしますし、王都が狙われているのでしたら、お屋敷とシュワイア家に関係する皆様を守る為に戦います」


「レン、ありがとう」


 レイネンの言葉を聞いて、リムールは優しくほほ笑む。アイリーも二人の両親や仕えている召使の人達を守ってあげたいと思っている。それは他の町の人達を助ける事と違いが無い事をアイリーは理解した。


「自分は、うーん、死なない程度なら手を貸してもいいと思っているわ。魔術師にはお金で戦争に参加してる人もいるしね。命が危なくなったらもちろん逃げるけど、あなた達を見捨ててどこかに行く事はないと思っていいわよ」


 セリュツの本心は分からない。でも、今まで仲間としてやってきた絆は感じている。セリュツなら出来うる最大限の援護をしてくれるだろう、と。


「ボク?戦争はよく分からない。でも、リムとレンの家襲われるなら、村を守ってもらったお返しをしたい。戦う事なら出来るニャア」


「シンちゃん、危険かもしれないんだよ?」


「アイお姉ちゃんと一緒ならボク、負けない」


 アイリーは正直シリミンが戦争に参加しようとするとは思っていなかった。だが、シリミンの考えは立派だと思う。みんなの意見を聞いて、結論は出ていた。


「みんな、正直に話してくれてありがとう。私は難しい事はやっぱり分からないけど、誰かを助ける為に戦うなら、戦えると思った。今王国が危ないのは確かだし、もし王都が落ちたら他の町や村、カンキ村にまで敵が攻めてくるかもしれない。だから国王様から命令があったら戦争に参加しようと思う。みんないい?」


「「はい!」」


 アイリーはみんなの心が久しぶりに纏まった事を感じた。そして、父親が戦争に参加した理由が少しだけ分かった気がした。

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