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砂上の月  作者: saltcandy
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戦闘?それとも作業?

「マジか」


あの衝撃のウサギリンゴ事件から少し経ち、夏休みが近づき、護衛任務も夏休みになろうとしたくらいで、学校周辺の糸が大量に切れる。

それが意味するのはすなわち、侵入者、それも大量の。

この学校は後ろが巨大な森になっており、普段から人が全くいない、そこを中心に次々と糸が切れる。

今は、6時限目、もう授業が終わるくらい。抜けてもバレないだろう。幸いな事、エアコンがあるのにつけないという矛盾を学校が行っている為窓は開いている。


「ふぅ、いくか」


そして、こっそりとしかし速やかに僕は窓の外へと出ていった。古典の先生、すいません。







このクソ暑いなか一応最先端技術の結晶で暑くはないマントを羽織り、森へと向かう。

特務部隊には連絡したから、軍から何人か派遣してくれるだろう。


そうこうする内に森の中に既に入る。まだ切れていない糸を糸電話の容量で振動を聞き分け敵を探す。今回は、二十名、殆どがLv4から5、偵察隊なのだろうがこちらからしたら護衛の少なさにあいまって奪取作戦は成功するだろう。

まぁ、特務部隊がいなかったらね。


そもそも、察知出来なかったのがいけなかった。今回のこの襲撃、おかしな事に見えていなかったのだ。

僕の未来予知はどういう訳か、片方の異能の影響で狂ってしまう事が多々ある。今回はそれが運が悪い方向で起きたのだ。

まぁ、あの特殊部隊の中に未来に関する異能を持っていれば僕の未来予知は使えないが。



「そんな希少な異能がこんな捨て駒用の作戦に使われるないか」


言い訳終了


僕は糸を手繰り(たぐり)慎重に掴む。僕の血統力、それは異能の力を設置する事が出来る。

わかり易くいえば、炎の異能保持者がいたとしよう。通常、一時間程で異能の炎は消える。しかし、この血統力持つ者の炎は何も無ければそのまま留まる。

それだけならば、そこまで凄くない、しかし長時間設置すればする程その異能の力が高まるのだ。

時間が経てば経つほど炎は大きくなる、そんな力だ。


しかし、僕の異能は未来を見る事。設置するなんて不可能である。それを知った時は本当に落ち込んだ。

そのまま、布団で寝ようとした時ふとこんな発想が天から落ちてきた。


エル・ドラードも異能の力だよね?


「中々集まったね」


糸から十五人程の集団を察知する。二ヶ月以上設置した糸だ、これくらい遠くからでも簡単に扱える。


「憎むなら、憎めがいいよ。

こんな卑怯な殺され方されるんだから」


そう言って、僕は糸を操る。蜘蛛の糸よりも細く、コンクリートでさえ容易く切れる強度、しかも操る者は遠くから。

糸が生物を大量に切った感触を伝える。


「残り五人は頼んだよ」







「そこまでだ!雪は絶対に渡さない」

「ちっ、軍の奴か。

安心しろ、任務は大失敗した。それに、今回は偵察だ。

偵察で隊長含め全員死亡若しくは捕獲されたなんて笑えねぇが」


俺の目の前には黒いローブを着た人間達がいた。此奴等は雪を狙ったどこかの国の部隊、もしくは犯罪組織だろう。

しかし、今は俺達が捕らえる事に成功した。五人程度で出来ると思った理由が知りたい。


「あぁ、之で何とか死は逃れられたか」

「どういう事だ?」


ここは悔しい顔をするとこだろう。なのに、彼等全員ほっとしたような顔で倒れていた。

俺は怪訝そうに見る。


「坊主、多くの俺達のような部隊はな失敗したら全員殺されるんだよ。

この国は平和だから捕まっても即殺はされないだろうっている事だ。

全く、上も情報を渡してくれればよかったのによ。護衛にとんでも人間がいる事くらい」

「成程、話は軍の尋問室で聞こう」


俺の肩に手が置かれる。大きくどこか安心させられる手だ。

俺はこの人を知っている。


「さっ、山王飛鳥(さんのうあすか)大将!」

「そう硬くなるな。ここは他に任せてお前に見せたい物がある」


顔に大きな傷を付けて、白髪混じりの髪に巨人と思わせるような巨大さ、しかしその黒色の目は温もりを感じさせる。

日本に三人しかいない大将、その一人だ。俺の憧れでもある。


「何をしているさっさと来い」

「はっ、はい!」







「こっ、之は」


俺達は連れてこられた場所を見て唖然とする。市街地から外れ、森の中に入り、山のなかを通じて通った。

何故こんな所に俺達をと思ったがそれを見せられたら納得した。


「ひっ、酷い」


三葉が声を出す。ひどく純粋な慈悲の声に聞こえた。

詩織は顔を顰めながら周りを見回す。その顔は紛れもない嫌悪感が滲み出ていた。

雪は顔に表情を出ていないがきっといい感情を持っていないだろう。


「全員が即死、生きている者はゼロ。

そして、この有り様」


飛鳥さんが顔を顰めながら呟く。


緑と茶色は赤に侵され、辺り一面に散らばった大量のかつて人だった肉片、濃厚に臭わせ俺の頭を狂わせそうな鉄の臭い。

地獄絵図、人の尊厳を無視したような殺し方。俺は腹の中からこれを起こした犯人に怒りを感じた。


「判明してる数で10人、それ以上は確実だ。

全員がお前を襲った連中と同じLv3~4、強いので5だ。

それを一人で即殺」

「だっ、誰がこんな事をやったんですか!」


俺は真っ直ぐな目で飛鳥さんを見る。恐ろしい程の強さ、あっさりとこんな事をやる精神状態、何者なのか、俺は聞きたかった。


「分かった答えよう。

これをやったのはユキ殿の護衛だ」

「護衛?私の学校での護衛は彼等だけよ」


雪が顔を少し顰めて言う。そう、護衛は俺達だけのはずだ。

しかし、隠れて護衛を付けていても安全策としては間違っていない。だが、こんな事をやる様な人間を飛鳥さんが護衛にするだろうか?


「隠れて付けさせてもらっている。

というよりも、俺もその護衛の事を一切知らない。許せ、知りたくても知れないのだ」

「どういう事ですか?」

「この護衛は特務部隊に上が極秘裏に頼んだ事だ」

「特務部隊ですって!?」


詩織が驚きの声で言う。特務部隊?なんだそれは、軍の最高権力者の一人でも一切知られていないのか?

俺達三人は詩織を見る。


「ただの都市伝説じゃないんですか!?

裏の部隊、最高戦力の部隊、それだけで中小国と渡り合える、そんな噂の部隊ですよね」


なんだその馬鹿みたいな部隊は?流石にそれらは噂を膨張しすぎているのではないか。


「その部隊だ。

俺でも預かり知らない部隊でな。動く時の条件は上に頼むか、特務部隊隊長に頼むしかない。

全員がLv8以上の異能保持者達らしい。

それを何とか俺は近くまで来させる事が出来た。

須藤晶小隊長、香川三葉隊員、鶫汀詩織隊員、君達にユキ殿の護衛に加え特務部隊の隊員の調査を任せる!」

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