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0003-01

「おはよう。ユグ、ティン」

「おはよ~」

「おはよう、マスター」

 今日は早く起きた。昨日の夜、いきなり戦闘になったので、宿についたらすぐに寝てしまった。


「温泉、行こうか。昨日は行けなかったし」

「うん! ユグもそう言おうと思ってた!」

「我はここで留守番をしておく。クリーンの魔法で綺麗にしとく」


 クリーンとは、身体の汚れを分解する魔法である。汚れは落ちるが、風呂に入った気分にはなれない。旅の時は重宝する魔法である。




「はいはい、ティン。留守番よろしくね」

「うむ」

 寝間着をそそくさと着替えて、また温泉に向かうことにした。ティンカーリュは部屋で待っておくとのことだったので、そのまま二人を見送った。






※※※






 温泉に辿り着くまでの間に、特には面白いこともなかった。昨日や一昨日と、不気味なぐらいにまったく変わらない。


「エリ~、昨日の何だったんだろうね。あの虚狐って」

「さぁ? ま、襲ってこないなら別に良いんじゃない?」

 呑気にそう言ったところで、温泉に着いた。一昨日と同じように服を脱ぎさって温泉に浸かりに行く。

 一昨日と違うのは貴重品を部屋に居るティンカーリュに預けて行ったことぐらいである。




「あ。エリ見て。昨日、ヴォルフとか言う男の人の隣に居た子が居る~。おーい!」

「えっと……どちら様?」

 少女は戸惑ったように、ユグドラシルを見ている。いきなり見ず知らずの他人に、馴れ馴れしく話しかけられたら普通は警戒する。



「ユグ、走らないの。ごめんね。ヴォルフさんの知り合いかな? 昨日、劇を見てたよね」

 少女と視線を合わせるようにしゃがんでから話した。少女の知っている人(ヴォルフ)の名前が出たからなのか、思い出したカのように言った。



「あぁ! 昨日の旅人ね! 思い出したわ。私はフィーネ。よろしくね」

「ユグはね。ユグドラシルって言うの。よろしく! フィーちゃん」

「私はエリミアナ。よろしくね。フィーネさん」

 ニコニコしながらそう言った。ユグドラシルは基本的に、目上だろうが王族だろうが関係無しに敬わない。どんな王にでも渾名をつけて呼ぶ。



「ねぇねぇ。虚狐って知ってる?」

「どこでそれを聞いたの!」

 ガッ、とユグドラシルの肩を掴んで詰め寄るフィーネ。その顔は興奮しておるのか動揺しているのか分からない複雑な顔だった。


「昨日の夜にね。そう名乗った狐獣人に襲われたのよ。背丈はフィーネさんぐらいだったかな?」

 エリミアナがより詳しく説明した。それを聞いてフィーネがワナワナと震え出した。それを間近で見ているユグドラシルはどう対応すればいいのか分からず、チラチラとエリミアナに視線を飛ばしている。



「あの! 話を聞いてくれませんか。皆さんが襲われたのには理由があるんです。そして、助けてください」

 フィーネの言葉を聞いた後に、ユグドラシルがやんわりと手を外した。これが手を外す絶好のチャンスだと思ったからだろう。




「旅人は基本的に無償で依頼を受けない。助けて欲しいなら、報酬がないと」

「なら、報酬があればどんな依頼も受けてくれるんですか?」


「まぁ、流石に。人道に反した依頼は受けないよ? 例えば、一国の民を全員殺せ~とかね。それに依頼の難易度が高くなれば報酬も高くしないといけないよ?」

 冗談めかしてエリミアナはそう言った。まぁ、国民の皆殺しなんて依頼する頭のおかしい人間はそうそう居ない。


 それに、そのような無茶は依頼の達成報酬は国庫の金貨財宝全てあってギリギリ足りるぐらいだろう。




「なら、無理を承知で依頼を言います」

 そこで一言区切った。そして、次に現れた言葉はエリミアナの予想を超えていた。









「この国を滅ぼしてください」

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