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0001-02

 温泉の場所を先程の店員に聞いて、一番有名な温泉へと向かっていた。エリミアナとユグドラシルの足取りは軽く、ティンカーリュは嫌々と言うように歩いていく。


「温泉~。温泉~。暖かいお湯~」

 ユグドラシルが即席の歌をうたいながらクルクル回っている。だが、その姿はひどく周りから浮いている。ユグドラシルも、周りの人も気にしていないようだ。



「ユグ、はしゃがないの。楽しみなのは分かるけど」

 そう言うエリミアナの声も、期待で胸がいっぱいのようだ。そんなルンルン気分で歩いていると、どうやら温泉が見え始めた。




 宿屋から歩くこと、数分。ようやく温泉に着いた。看板を見るに、無料らしい。観光産業に力をいれたらかなり儲けることができるだろうに。まぁ、無料の方がエリミアナ達、旅人としては嬉しいが。


 だが、混浴で何があっても自己責任らしい。一応、鍵付きロッカーはあるようだが盗まれたら大変な物ばかりだ。



「マスター。ロッカーを我の障壁で包んで盗れないようにするか?」

「そうだね。お願い。ティン」

「了解だ」

 そんな会話をしている間にもユグドラシルが服を脱いでいた。


 ユグドラシルの服は、自身の植物を操る能力で服の形にしているだけなので脱ぐというよりも消えた、と言った方が正しいかもしれない。


「エリ~。先に行っとくね~」

「気を付けてね! ほら、ティンも行った、行った!」

 逃げようとしたティンカーリュの首を掴む。ティンカーリュ自体が宙に浮いているので、首を掴まれたところで首が絞まることや骨が折れることはないのだ。


 そのまま、ユグドラシルに向かってティンカーリュを投げた。結構な速さで投げられ、叫び声をあげる前にユグドラシルの胸元に激突した。


「きゃっち~!」

「離せっ! ユグドラシル」

 ジタバタと最後の足掻きのようにユグドラシルの胸元でもがくが逃げられない。そんなティンカーリュを掴んで水をかけていくユグドラシル。水が苦手だと言っていた相手を問答無用で洗っていく。割りと鬼畜である。



 そうこうしている間に、エリミアナもやって来た。もうどうにでもなぁれ~、と動かないティンカーリュを石鹸で洗っているユグドラシルを見つつ、エリミアナも自身の身体を洗い始める。



「ティン~。終わったよ」

「そ、そうか。マスター、先にあが──」


「エリ、ユグはティンと一緒に露天風呂に入っとくね」

 ユグドラシルの言わせない攻撃!


 ティンカーリュは逃げる機会を失って、ユグドラシルに引っ張られながら露天風呂に連行されていった。





※※※





「ったく。風呂ぐらい静かに浸かれよ。ったく。そう思わねぇか?」

 エリミアナの後ろから、そんな声が聞こえた。声の低さから男の声であるだろう。だから振り向きもせずにエリミアナが答える。


「連れのこと? だったら、ごめんなさいね。久々のお風呂にテンションが上がってたみたい。後から注意しとく」

 そう言うと、立ち上がって露天風呂に向かっていった。足音から後ろにいた男もついてきているようだ。


 この温泉は混浴であるから、別に問題はないしエリミアナも気にしていない。そもそもそんなことを気にしていたら旅の道中に死ぬ。




 お湯の中に体をいれると、暖かく気持ちがよい。それに周りの景色もとてもよい。薄桃色の小さな花の咲いた樹木に、ずっと向こうには迷宮都市との境界にある山脈が見える。

 そんな景色をユグドラシルも、ティンカーリュも黙ってみていた。




「ここの国の奴等、全員おかしいと思わねぇか? 嬢ちゃん」

 少し離れた場所で、男が問いかけてきた。ユグドラシルがエリミアナの呼び方に少しムッとしている。




「確かにおかしいと思うわ。それと、私はエリミアナ。嬢ちゃんじゃないわ、坊や」


 エリミアナ、実年齢は221歳のエルフである。生きた時間で言うならエリミアナ方が長いだろう。それと、痛烈な返しにユグドラシルがムッとした顔を止めた。




「そうかい。俺が坊や、か。まぁ良い。俺はヴォルフって言う。またどこかで縁があったら会おうな。旅人のエリミアナ」

 それだけ言うと、脱衣場の方へと戻っていった。男の姿が見えなくなると、二体が寄ってきた。



「さっきの人だれ? エリの知ってる人?」

「違うよ。知らない人。ユグ達がはしゃぎすぎててうるさいって」


 ごめんなさぁい、と言ってそそくさと逃げていった。ティンカーリュはエリミアナの頭に乗っかった。ここがティンカーリュの定位置である。



「マスター、あの男も言ってたな。この国の人間について」

「確かに。何か知ってるのかも知れないね。でも、私たちが勝手に首を突っ込んで良い訳でもないよ」


「わかっている」


 そんなことを言いながら、ゆっくりと温泉に浸かっていた。何かと最近は忙しかったのでこんなゆっくりできていなかったのだ。




「このまま、のんびり観光が終わると良いのになぁ」

「マスター、それはある地域ではフラグと言うらしいぞ?」


「そうだねぇ」

 ゆっくりと目を細めながらエリミアナは言った。

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