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1829-##

 あれから、どのくらいが経ったのだろうか。だけど、最後に語らないといけないだろう。最後の結果を。






 虚狐とフィーネは話し合い、日替わりで主導権を握るようだ。虚狐は虚狐で、渋々頷いたようだったが。虚狐という名前は味気ないので、これからはキョウコと呼ぶらしい。



 また、フィーネと精霊化したヴォルフは契約を果たした。フィーネ自体にも、虚狐という精霊が憑依しているので寿命は関係ないので安心だ。







 あの後、エリミアナとユグドラシルは魔力の枯渇で倒れて今もなお目が覚めていない。それほどの膨大な魔力を使い果たしたのだ。


 その間はティンカーリュが、二人の世話をしている。





 エルドライド王国は、建国から数百年の歴史に終止符を打った。国民は全て灰のようになって消えてしまい、建物しか残っていない。

 それに建国当時からの歴史書などは、フィーネの記憶の中に大切にしまってある。要するに、全て焼いたのだ。





 全ての処理が終わってから、フィーネとヴォルフは旅に出た。その見送りはティンカーリュだけしか見送れなかった。

 まぁ、毎年、毎年、元エルドライド王国には帰ってきているようだが。







※※※







「よぉ。ティンカーリュの旦那。帰って来たぜ」

「なんだ。ヴォルフ殿か。どうしたんだ?」

「私達も居るわよ!」

 エリミアナ達が眠り続けて、五年が過ぎていた。エリミアナとユグドラシルは、元エルドライド王国の王宮でずっと眠っている。



「あぁ。今日で五年目か」

「そうじゃ。妾とフィーがこの身体を使うようになって五年目じゃ。なにかと不便じゃが、楽しいぞ」


 今では虚狐(キョウコ)も丸くなった。フィーネとも窮地を体験し、何かと仲良くなったようだ。



「ったく。眠りすぎだろ。二人とも。未だに祝勝会ができねぇなんてな」

「あぁ、まったくだ。生きてはいるのだがな」

 ヴォルフとティンカーリュが、仲良さげに話している。ここ五年で毎年、会って話していたら仲良くもなるというものだ。





「フィーネ殿も強くなったようだな。キョウコ殿も、だが」

「えぇ、そうよ。今ならティンカーリュ達にも負けないんだから!」


 ふんすっ! と胸を張って答えた。少女のような体型だったフィーネは今やもう大人な体型である。ユグドラシルと同じぐらいだった背丈は、急成長してエリミアナと同じぐらいになった。


 ヴォルフはまったく姿も変わらないが。





「また明日もくるぜ。ティンカーリュの旦那」

「あぁ。明日こそは目が覚めるかもな」

 温泉にでも行くのだろう。ティンカーリュは暇なのでこの王国の主要な場所は綺麗にしているのだ。


 なので、設備などを余裕で使える。不埒者達には容赦ないが。





「早く目を覚ましてくれ。マスター、ユグドラシル」

 ティンカーリュの寂しそうな声が王宮の一室に響いた。









※※※









次の日。


「おぅ。また来たぜ。ティンカーリュの旦那」

「あぁ、ヴォルフ殿か。また今年も四日間滞在するのか? それとも、もう出るのか?」


「今年も同じだよ。いつも通り、四日間だけここに居て、また旅をする。今度は、テルテドール迷宮都市の先を目指してみようかと思ってな」

 ヴォルフがそう言いながら、迷宮都市のある方向を向いた。そこは昔、エリミアナが強くなろうと決めた場所でもある。




「なぁ、ヴォルフ殿。ここに縛られる理由は無いのだぞ? 一年間で回れる場所は少ない。構わずに」

「いや、これでいいんだよ。俺たちが最後の生存者なんだ。祖国に顔合わせぐらいさせてくれよ、な? それに、これは俺たちのわがままだ」


「また懐かしいものを」


 ティンカーリュは、あのときのユグドラシルの言葉を思い出した。あの騒がしいユグドラシルが、今は嘘のように静かに寝ている。





「なぁ、起きてくれよ。マスター、ユグドラシル。我も、さすがに寂しくなってくるぞ?」

「そうだねぇ。ユグも、もうそろそろ暇になってきたよ」


 目を開けて、ティンカーリュを見るユグドラシル。にまっ、と笑って勢いよく起き上がった。




「おはよう、ティン。ユグ、復活!」

「あぁ、おはよう。ユグドラシル。五年間も寝ていたんだぞ?」


「ありゃ、もう少し経っていると思ったけど、そうでもなかったか。あ、それと。多分、エリももうそろそろ目を覚ますよ」


「本当か?」

「ユグは嘘つかないもん!」

 ユグドラシルがそう言って、エリミアナと自分の身体を見回した。そして、ヴォルフを見て驚いた。



「あれ、どうして。ヴォルフのおじさんがいるの? 旅はしなかったの?」

「ちげぇよ。一度、帰ってきたんだよ。毎年、この時期に帰るようにしているんだ。


 それと、ありがとうな。俺を姫さんに会わせてくれて」


「いいよ。あれ? フィーちゃんは?」

 キョロキョロと見回すが、フィーネの姿はなかった。だが、ヴォルフが少しだけ笑っている。きっと、近くに居るのだろう。




「ユグドラシルさんっ!」

「フィーちゃん!」

 走って、ユグドラシルに抱きついた。ユグドラシルが、いきなり抱きつかれてアワアワしている。



「そっか。成長したんだ。こんなに小さかったのに~。ユグ、身長負けちゃった~」

「もう五年間も前の話よ。成長するに決まっているでしょ?」


 変わらず昔のように笑いかけてくれる。その姿は昔のユグドラシルの記憶にある笑顔と同じ顔であった。



「ちぇっ!」

「あぁ、もう。うるさいなぁ」

 エリミアナも目が覚めたようで、眠たそうな顔でそういった。だが、周りには昔と同じような顔が揃っているのを見て首を捻っている。



「ユグ、ティン。おはよう。えっと、どんくらい寝てた?」

「五年だぞ、マスター」

 へぇ、五年かぁ。五年っ? と驚いたような顔をしている。数日しか経っていないと思っていたからだろう。





「それじゃぁ、全員が揃ったところで祝勝会、しようぜっ!」

「まだ、マスター達が回復していないだろう。もう少し、安静にしてからだな」


 ヴォルフが威勢の良い声で宣言した。だが、ティンカーリュが直ぐに突っ込む。そんな変わらない日常を過ごしている全員を見ながらエリミアナは呟いた。



















大団円(ハッピーエンド)かな?」
















「私と精霊と亡国の姫君」は、これにて終了です。


 お読みいただき、ありがとうございました。


 一話でも面白いと、思っていただけたら幸いです。感想など、ありましたらじゃんじゃん書いてほしいです。全力でお返事、書きますよ。感想返しは、暁月夜、ユグドラシル、ティンカーリュ、エリミアナの四人の誰かで書きます。

(あ、これ。感想来なかったら恥ずかしいヤツだ)


 さぁ、ここで終わりです。もしかしたら、短編がちょこちょこ入るかも知れません。チャンネルはそのまま、ならぬ。ブックマークはそのままで!



 では、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。これにて、後書きを終わらせましょう。ありがとうございました。






暁月夜 詩音

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