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こちら、転売対策所です 7 初めてのお仕事!!!!!

 「この対策所が作られた際、全国の警察署の転売対策課を中心に、対策員は選ばれたんだ。僕も転売対策課から異動になったんだけど、当時は冗談じゃないって思ったよ。折角苦労して警察官になったのに、こんなにも簡単に、よくわからない新しくできた施設に飛ばされるだなんてね。異動になった殆どがそう思っただろうね。だから当時、ここの空気は物凄くピリピリしていた」


 蒼井一士がゆっくりとした口調で話し出した。


「当時の空気はやばかったなぁ。俺なんか、警備課だったのに異動になって、納得がいってなかったし」


 ずっと無言でハンドルを握っていた永井三監が口を開いた。


「正直、最初に会ったときの永井三監、今とは違って怖かったですよ」


「そういう蒼井も、周りから見てわかるくらいに不満そうな顔していたぞ」


「顔には出さないように気をつけていたんですけどね」


 転売対策所ができるまでの成り立ちは知っていたが、内情までは、当然、本にもネットにも書かれていないので、今の今まで知らなかった。


「さて、どこから話しましょうか」


「まずは、あの事件からじゃないか?」


「やはり、あの事件からですよね」


 2人が余りにも重々しくあの事件と口にするため、つい身構える。


「倉原さん、うちの部署とサイバー管理課は仲が悪いんだ」


 何を言い出すのかと思ったら、部署同士の仲が悪いとは。拍子抜けしそうになったが、蒼井一士の目は真剣そのものだった。


「よくわからないって顔をしているね。具体的な例をあげると、他の部署の人とはすれ違ったら挨拶するけれど、サイバー管理課とはすれ違ってもお互い無視」


「お互いですか……」


「挨拶するしないは本人の自由だけど、しないことをお勧めするね。連中は皆、敵だと思うべき」


 そこまで言われると、関わらない方が良さげな気がしてくる。


「なんで、そんなに仲が悪いんですか?」


「それが、あの事件に繋がるんだよ」


 これを開口に、蒼井一士はあの事件について語り出した。


「事件のあった日、僕と加波とサイバー管理課の宰川(さいかわ)って奴とね、飲み会をしたんだ。で、その帰り道、酔っ払った宰川が川に落ちて、加波は宰川を助けた。そしたら、後日加波は査問委員会に呼び出されたんだ」


 待って、意味がわからない。人助けをして、何故査問委員会に呼び出されるのか。


「宰川が持っていたパソコンが行方不明になってね、助けた際に、加波が盗んだのではないかと疑われたんだよ」


「そんなの、加波二士が盗むわけないですよね? 冤罪ですよね?」


「ダイバーによる捜索も行われたけど、見つからなかったんだ。けど、加波が盗んだという証拠もないし、僕は川に流されたと思っているよ。査問委員会を通していくうちに疑いは晴れるだろうって思っていたけど、そんなことはなかった」


 抑えていた感情が露わになるみたいに、蒼井一士の声のボリュームは上がっていった。


「加波の疑いが晴れることはなく、処分は、一階級降格と二週間の停職処分。あんなの、ストレスの捌け口にされた以外の何者でもないよ」


 私は、隣で寝ている加波二士を見た。寝ている姿は、そこまで人相の悪さを感じられない。むしろ、起きているときとのギャップに、可愛いさを感じてしまうくらいだ。


「ということは、既に罪が確立している私は何を論点にされるんですか」


「如何に処分を重くするかなんじゃないかな。あの監査部長なら警備課相手だしやりかねない」


「監査部長は、サイバー管理課の人なんですか?」


「うん、加波の処分を決定した張本人だよ」


「それ、絶対に処分が重くなるやつじゃないですか……」


「そうだね」


「私のせいです、申し訳ありません」


「気にしなくていいよ。それより倉原さんは、停職期間がどれくらいになるかだね」


 私は、三等対策士だから、これ以上降格することはない。


「処分が重くならないようにするには、質問の答えにはできる限り、はいかいいえで答えること。はいかいいえで答えられない場合は、感情を出さずに短く答えるんだよ。そうしないと、言葉尻を取られるからね」


「わかりました」


 こうして、私は査問委員会に掛けられることを待つ身になった。



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